2025年5月19日
労務・人事ニュース
九州の食品企業の24.4%が農業に参入、地域別ではトップの高水準を記録
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最終更新: 2025年6月13日 23:03
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調査先全体の約3割が、農業への参入を検討または関心あり ~既に農業に参入している食品関係事業者は、徐々に増加~ <食品産業動向調査(令和7年1月調査)特別調査>(日本公庫)
株式会社日本政策金融公庫が令和7年1月に実施した「食品産業動向調査」によると、食品関係事業者の川上事業への関心が着実に高まりを見せていることが明らかとなりました。本調査では、食品製造業や卸売業、小売業、飲食業など全国6,518社を対象に、農業および漁業への参入実態について詳細な分析が行われました。2,147社からの有効回答を基に、農業参入の現状、検討状況、地域差、業種別動向、そして漁業への関心や取り組みなどが網羅的に報告されています。
農業参入については、食品関係事業者全体の17.0%がすでに農業に参入していると回答し、26.6%が参入を検討中または関心があるとしています。つまり、全体の約4割近くの企業が、食品産業の川上である農業に対し、何らかの形での関与を持っている、もしくは検討しているという状況です。この傾向は、前回調査である令和3年7月の時点と比べて明確に上昇しており、食品業界全体のバリューチェーンに対する意識の変化が読み取れます。
地域別にみると、農業への参入割合が最も高かったのは九州地域で、全体の24.4%が既に参入していると回答しました。東北地域では、29.8%の企業が参入を検討または関心があると答え、地域ごとの農業資源や市場特性が企業の判断に強く影響していることが伺えます。また、北陸や中国地域でも関心度は高く、それぞれ29.2%、28.1%が関心ありと回答しており、地方における食料自給体制の強化や地域産業の再構築といった文脈とも整合しています。
業種別では、小売業が18.0%と最も高い農業参入率を示し、卸売業は29.1%が参入を検討または関心があるとしています。これは、食品流通に関わる企業が原材料供給の安定確保を目的として、川上事業への進出を図っている現状を反映しています。詳細業種別では、製造業の中では酒類業界が33.1%と最も高く、続いて農産保存食品が32.7%、牛乳・乳製品が21.8%と続きます。特に冷凍食品や精穀・製粉業種においては、前回調査と比較して農業参入率が顕著に上昇しており、食の安全や供給リスクへの対応として農業との垂直統合が進んでいることがわかります。
また、参入先の営農類型を見ると、「畑作」が34.8%と最多であり、次いで「果樹」(23.4%)、「稲作」(19.4%)、「露地野菜」(19.4%)、「施設野菜」(13.2%)が続きます。注目すべきは、これらの作目がすべて国内需要が高く、加工食品や外食産業との親和性が高いという点です。自社ブランドでの野菜や米の供給を目指す取り組みが増えており、サプライチェーンの一体化を図る企業の戦略が反映されています。
一方、漁業への参入状況に目を移すと、全体の2.7%がすでに参入しており、10.1%が参入を検討または関心があると回答しています。農業に比べるとその割合は低いものの、注目すべき動きが見られます。特に「養殖漁業」への関心が高く、漁業参入企業の51.4%が養殖を選択しており、「漁船漁業」の40.5%を上回っています。これは、水産資源の持続的な利用や安定供給という観点から、養殖が食品企業にとってより制御しやすい生産手段であることを意味しています。
業種別では、製造業において養殖漁業と漁船漁業の関心度がほぼ拮抗しており、それぞれ48.8%と46.3%となっています。一方で卸売業では養殖漁業への関心が58.3%と高く、漁船漁業の29.2%を大きく上回っている点が特徴です。製造や流通の現場において、海産物の安定調達が重要なテーマとなっている中、養殖による原料確保の優位性が再認識されていることが背景にあると考えられます。
詳細業種で見ると、既に漁業参入を行っている割合が最も高いのは「生鮮魚介」で16.5%、次いで「水産食品」が8.1%、「冷凍食品」が4.5%でした。一方、参入検討または関心ありとした割合では、「水産食品」が35.7%と突出しており、次いで「生鮮魚介」(20.9%)、「各種商品」(19.3%)と続きます。加工用魚介類の安定供給を求める傾向が強まっていることが、食品製造の現場からの反映といえます。
このように、食品関係企業の川上事業への関心は、調達リスクの回避、価格の安定化、ブランド価値の向上といった目的のもと、年々高まっています。特にコロナ禍以降、供給網の混乱や輸入依存からの脱却を目指す動きが強まっており、自社による原材料生産の必要性が企業戦略の一環として取り入れられています。企業の採用担当者にとっても、こうした参入の動きは人材戦略と密接に関わっており、農業・漁業分野における専門人材の確保、地方拠点の人材育成、職種の多様化などに波及しています。
今後、川上事業への本格的な参入を視野に入れる企業が増える中で、事業計画や採用戦略においても、地域特性や参入分野の選定、人材の確保・定着に向けた環境整備が求められるようになります。特に、営農や養殖など専門知識を要する分野では、外部人材の登用や教育制度の整備が重要な課題となり、採用担当者には、従来とは異なる視点での人材戦略が求められています。この調査結果は、そうした流れを裏付けるものであり、今後の食品産業と人材戦略の方向性を考えるうえで、非常に有益な資料といえるでしょう。
⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ