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2025年9月4日

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令和6年 医療福祉業界で35件、全体の46%を占めた労働争議の実態とは

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令和6年労働争議統計調査の概況(厚労省)


この記事の概要

令和6年に実施された「労働争議統計調査」の結果が公表され、総争議件数は278件で、前年から14件減少したことが明らかになりました。一方で、争議行為を伴う争議は76件とわずかに増加しました。主要な要求事項としては「賃金」が最も多く、医療・福祉業界での争議件数が特に顕著でした。解決方法としては労使の直接交渉に加え、第三者の関与や「解決扱い」とされるものも多く、争議の解決には多様な対応が求められていることがうかがえます。


労働争議は企業経営や雇用環境にとって重要な関心事であり、厚生労働省が公表した令和6年(2024年)の「労働争議統計調査」は、働く人々と企業の間でどのような問題が起こり、どのように解決されているのかを把握するための貴重な資料です。今回の調査によると、「総争議」の件数は278件で、前年の292件から14件減少しました。長期的には争議件数は減少傾向にありますが、令和元年以降はほぼ横ばいで推移しており、労使間の交渉が安定化しているともいえます。

このうち、実際にストライキなどの行動があった「争議行為を伴う争議」は76件で、前年の75件から1件増加しました。争議行為への参加人数は8,982人で、前年より568人(約6.8%)増加しています。とりわけ注目すべきは、「医療・福祉」分野での争議行為が35件に上り、業界別で最も多かった点です。この分野の争議行為参加者は6,459人と全体の約72%を占めており、現場で働く人々の不満や要求が強く反映されていることが分かります。

また、争議によって発生した労働損失日数は全体で2,501日に及び、特に「運輸業・郵便業」での損失が1,277日と最も多く、次いで「製造業」が558日、「医療・福祉」が411日となっています。これは、労働者による行動が企業活動に大きな影響を与える実態を示しており、企業側としても早期の合意形成が求められる状況です。

争議が発生した企業の規模を見ると、300~999人規模の企業が最も多く52社で、次いで100~299人規模の企業が40社、1,000人以上の企業が42社となっています。特に大企業では労働損失日数が長期化する傾向があり、経営陣の対応の遅れが深刻な影響を及ぼす可能性も否定できません。

次に、争議の主な要求事項について見てみましょう。最も多かったのは「賃金」に関するもので、全体の55.4%にあたる154件がこれに該当しました。ベースアップや初任給の増額、賞与など金銭面の要求が目立ちました。続いて多かったのが「組合保障及び労働協約」に関する94件で33.8%、そして「経営・雇用・人事」に関する90件で32.4%でした。これらの数値は、職場における待遇や制度に対する関心が高まっていることを示しています。

さらに細かく見ると、基本給や諸手当の改定を求める争議が72件と最も多く、全体の25.9%を占めています。一方、退職金に関する要求はわずか5件にとどまりました。また、職場環境や安全衛生の改善を求める争議も24件あり、労働者の健康管理への意識の高まりも見受けられます。これに加え、所定外や休日労働への対応、休暇制度の整備といった働き方に関する要求も複数確認されており、柔軟な労働環境の構築が求められていることが伺えます。

労働争議がどのように解決されたのかという点も重要です。令和6年中に解決した件数は218件で、全体の78.4%に達しました。このうち、労使の直接交渉による解決は55件、第三者の関与(あっせん・調停など)による解決は54件で、それぞれが解決事例の約4分の1を占めています。一方で、「解決扱い」とされるものが109件と全体の半数に上っており、これは支援ストや政治スト、不当労働行為の救済申立てを含むため、争議が複雑化している現状を示しています。

争議の解決までにかかる期間を見てみると、「91日以上」かかる長期化した争議が79件と最も多く、全体の36.2%を占めました。これに対して「30日以内」で解決したものは50件、「61日~90日」は46件、「31日~60日」は43件でした。このように、多くの争議が長期化する傾向にあり、企業側も労使関係をより丁寧に構築し、早期解決を図る必要性が高まっています。

最後に、主要な労働団体別の争議の件数を見てみると、「全労連」によるものが51件で最も多く、参加者は7,956人に達しています。次いで「連合」が8件、「全労協」が3件でした。中でも全労連が関与した争議の多くが医療・福祉業界で行われており、団体ごとの特徴も色濃く表れています。

以上のように、令和6年の労働争議の動向からは、依然として賃金や職場環境への不満が強く、特に医療・福祉業界においてその傾向が顕著であることが明らかになりました。また、争議の解決においては労使交渉だけでなく、第三者の関与や法的措置も重要な役割を果たしており、複雑化する労使関係に対して、企業の管理能力や対応力が一層問われる状況にあるといえるでしょう。

この記事の要点

  • 令和6年の総争議件数は278件で前年より14件減少
  • 争議行為を伴う争議は76件で微増、参加者は8,982人
  • 医療・福祉業界の争議が全体の約46%を占め最多
  • 賃金に関する要求が154件で全体の55.4%を占める
  • 解決方法では「解決扱い」が109件と全体の半数に及ぶ
  • 争議の36.2%が91日以上の長期化傾向を示す
  • 全労連が関与した争議が最多で、特に医療・福祉分野に集中

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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