2025年6月16日
労務・人事ニュース
令和7年4月の大分県有効求人倍率1.41倍が示す採用環境と人材確保の最前線
- 介護職員/実務者研修/有料老人ホーム/デイサービス/日勤のみ
最終更新: 2025年6月16日 03:00
- 看護師/下曽根駅/北九州市小倉南区/福岡県
最終更新: 2025年6月15日 11:01
- 看護師/通勤手当/他 再雇用/昇給/福岡市中央区/六本松駅
最終更新: 2025年6月15日 11:01
- 介護職員/初任者研修/有料老人ホーム/デイサービス/日勤のみ
最終更新: 2025年6月16日 03:00
若年層の減少と求人増加が交錯する令和7年4月、大分の採用戦略の焦点
令和7年4月の大分県における有効求人倍率は1.41倍で、前月の1.45倍からやや低下しましたが、依然として全国平均の1.26倍や九州・沖縄の平均である1.17倍を大きく上回っています。この数字は、求職者1人に対して1.41件の求人が存在していることを意味しており、企業側が人材を確保するには依然として厳しい環境が続いているという現実を物語っています。有効求人倍率が1.0を超えているということは、人材不足の状態が続いていることを示しており、特に中小企業や専門性の高い職種では、優秀な人材の確保に向けた戦略の再構築が求められています。
新規求人倍率については2.44倍と、前月の2.54倍からわずかに低下しましたが、それでも非常に高い水準を維持しています。新規求人数は前年同月比で0.8%の減少、新規求職者数は同0.3%の減少と、求職者と求人の双方で微減傾向が見られました。このようなバランスの変化は、労働市場における競争のあり方に微妙な変化が生じつつあることを示しており、企業としてはその兆候をいち早く察知して採用戦略に反映させる必要があります。
大分県内において、業種別の新規求人動向を見ると、製造業、卸売・小売業、医療・福祉、運輸業・郵便業などの分野では求人が増加傾向にあります。特に運輸業・郵便業は前年同月比で20%近くの増加が見られ、物流や配送の需要の高まりが背景にあると考えられます。一方で、宿泊業・飲食サービス業や教育・学習支援業では求人が減少しており、業界間での人材確保の難易度に差が生じていることが明らかです。企業の採用担当者は、自社の属する業界の求人動向を冷静に分析し、競合他社との比較優位性を打ち出すことが求められます。
地域別に見ると、大分労働局が所管する各ハローワーク(大分、別府、中津、日田、佐伯、臼杵、豊後高田など)で、求人倍率に若干のばらつきが見られます。例えば、中津地区では製造業が強い影響力を持っており、工場勤務の求人が多くなっています。別府や大分市内ではサービス業や医療福祉分野が求人の中心を占めています。地域ごとの特性を踏まえたうえで、どの層にアプローチするか、どのエリアから通勤可能な人材を対象にするかなど、地理的な採用戦略も重要な視点になります。
正社員に限った有効求人倍率は1.18倍と、こちらも全国水準より高めに推移しています。このことは、正社員求人に対する求職者の数が相対的に少なくなっていることを意味しており、企業にとっては正社員採用がより困難な課題となっている現状が浮き彫りになります。特に若年層の正社員志向が減少傾向にある中で、柔軟な働き方やキャリアアップ支援制度、リスキリング機会の提供などを通じて、将来を見据えた雇用環境を整備することが人材確保の鍵を握るといえるでしょう。
注目すべきは、求職者側の構成変化です。29歳以下の若年層の求職者数が減少する一方で、55歳以上の中高年層では微増傾向が見られます。これは、企業にとって年齢層を問わない柔軟な採用方針を検討する必要性を意味しています。経験豊富な中高年層の活用は、即戦力の確保だけでなく、若手社員の育成にもつながる可能性があります。一方で、若年層を採用するためには、企業文化や成長環境、福利厚生の透明性といった、定性的な魅力を強く打ち出す工夫が必要です。
また、大分県全体としての雇用のミスマッチも浮き彫りになっています。求人が多い職種と求職者が多い職種にズレが生じており、この乖離をどのように埋めていくかが企業にとっての大きな課題です。そのためには、自社が必要とする職種の人材に対して的確にアプローチするための媒体選定や表現力、採用広報の設計が重要です。具体的には、従来の求人票に加えて、動画を活用した職場紹介、現場社員によるリアルな声の掲載、SNSやオンラインイベントの活用などが効果的と考えられます。
さらに、選考プロセスの迅速化も今後の採用成功を左右する要因です。有効求人倍率が高止まりしている今の市場では、優秀な人材ほど複数の内定を保持している可能性が高く、企業がいかにスピード感を持って対応するかが競争力に直結します。一次面接を即日で設定したり、オンライン選考を柔軟に活用したりといった工夫を取り入れることで、採用の機会を逃さない体制づくりが求められます。
採用は単なる人材の充足にとどまらず、企業の将来を担う人材との出会いを創出する戦略的な取り組みです。令和7年4月時点の大分県の雇用情勢は、数値上は堅調である一方で、業界別・地域別・年齢層別に見ると、多くの課題とチャンスが混在していることが明らかです。採用担当者には、これらの情報を基にした冷静な分析と、柔軟でスピーディな対応力、そして自社の魅力を適切に伝える工夫が求められています。
今後の採用市場は、単なる数の戦いから、質とマッチング精度が問われる時代へと移行していきます。その変化を見据え、早い段階から体制を整えておくことが、企業の持続的成長を支える鍵となるのです。
⇒ 詳しくは大分労働局のWEBサイトへ