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2025年6月16日

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令和7年4月の岩手県有効求人倍率1.16倍が示す人材確保の現状と採用戦略の行方

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令和7年4月の岩手県雇用統計から読み解く求人倍率1.16倍時代の人材確保のポイント

令和7年4月、岩手労働局が発表した最新の雇用統計によれば、岩手県の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍となり、前月から0.02ポイント上昇しました。この数値は、求職者1人に対して1.16件の求人が存在していることを意味しており、引き続き雇用市場では企業側の人材確保が容易ではない、いわゆる「売り手市場」の様相を呈しています。全国平均の1.26倍には届かないとはいえ、岩手県における人材不足の傾向は確実に進行しており、特に地方都市や中山間地域の企業では採用活動に対する創意工夫が強く求められています。

まず注目すべきは、新規求人倍率が2.11倍という非常に高い数値を記録している点です。これは、月内に新たに求職登録をした人よりも新たに出された求人の方が倍以上あるという状況を示しており、求職者が豊富な選択肢を持っている一方で、企業は採用活動の競争が激化していることを意味します。企業の採用担当者にとって、このような求人倍率の高さは単なるデータではなく、「人材が簡単には確保できない」という現場感覚を裏付ける現実として受け止める必要があります。

また、岩手県全体での有効求人数は29,875人で、前年同月比では2.3%の減少となりました。新規求人についても減少傾向にあり、前年同月比で2.8%の減という結果が出ています。この傾向は一見すると、経済活動の停滞や企業の求人意欲の後退を示すものにも見えますが、実態としては少子高齢化や地域人口の流出が主な要因とされています。特に若年層の都市部流出は深刻で、29歳以下の新規求職者数が前年同月比で3.7%減少していることは、企業にとって将来的な人材基盤の維持が難しくなりつつあることを示唆しています。

一方で、55歳以上の中高年層の求職者数は前年より1.5%増加しており、シニア層の再就職意欲の高さが顕著に現れています。このような世代別の求職傾向を踏まえると、企業の採用活動も一律の手法では限界があり、年齢層やライフスタイルに応じた柔軟な雇用制度の導入が鍵となります。たとえば、シニア人材に対しては短時間勤務や限定職種での登用、また若年層にはキャリア形成支援や柔軟な勤務体制を整えることで、それぞれのニーズに合った雇用提案が可能となります。

業種別の求人動向に目を向けると、医療・福祉分野や建設業、製造業では引き続き求人が多い一方、教育・学習支援業や宿泊業、飲食サービス業では前年同月比で減少しています。とりわけ医療・福祉分野においては、地域によっては慢性的な人手不足が続いており、求人票の内容だけでは応募が集まらないことも多く見られます。このような業種においては、企業文化や働きやすさ、やりがいといった定性的な情報を積極的に発信する姿勢が必要です。採用担当者は、職場見学や職場体験といった施策を通じて、求職者にリアルな職場環境を伝える工夫を検討すべきです。

正社員の有効求人倍率に関しては、岩手県では0.98倍となっており、これは正社員を希望する求職者が、正社員としての求人件数よりも多い状態を意味しています。この状況は、企業にとって正社員人材を比較的採用しやすい好機であるともいえます。しかしながら、応募者の数が多いからといって油断は禁物であり、求職者側の条件や希望に合致しなければ、採用に至らないという事例も少なくありません。したがって、正社員求人においても仕事内容や評価制度、キャリアステップの明示が極めて重要となります。

また、採用活動におけるスピード感も企業の差別化要素の一つとなっています。岩手県の雇用市場では、特に新卒者や転職希望者が複数の企業に同時に応募するケースが増えており、選考に時間がかかりすぎると内定辞退や他社への流出につながるリスクが高まります。採用担当者は、応募受付から一次選考、面接、内定までのフローを明確かつ迅速に設計し、求職者が安心して選考を受けられる環境を整えることが求められます。

地域別の求人倍率にも注目すると、盛岡、花巻、奥州、一関といった都市部では求人倍率が高めに推移している一方で、久慈、遠野、二戸などの地方地域では人材の確保がより困難な状況にあります。この地域格差を乗り越えるには、通勤支援やリモートワーク導入、転居支援制度の導入などによって、求職者の地理的な制約を軽減することが効果的です。また、地方での生活の魅力や企業の社会的意義を訴求することにより、Uターン・Iターン層の掘り起こしにもつなげることができます。

採用活動は単に人材を「集める」ことではなく、「育てて定着させる」プロセスも含まれています。岩手県のように人口減少が進行する地域では、採用のたびにコストをかけて一から人材を探すのではなく、長期的な視点で人材を育て、働き続けてもらう仕組みを築くことが、企業の成長戦略として不可欠です。研修制度の整備、メンター制度の導入、ワークライフバランスの推進など、定着支援に向けた社内体制の強化が求められます。

令和7年4月の岩手県における有効求人倍率1.16倍という数値は、採用の難易度が高まっていることを象徴するものです。数字の裏側には、地域ごとの人口動態や業種ごとの需要、そして求職者の価値観の多様化といった、複雑な背景が広がっています。企業の採用担当者には、これらのデータをただ読み取るだけでなく、自社の採用活動にどう活かしていくかを真摯に考え、実行に移す行動力が求められています。今後の岩手県における人材確保の鍵は、データに基づいた柔軟な戦略と、人材を大切にする企業文化の醸成にあると言えるでしょう。

⇒ 詳しくは岩手労働局のWEBサイトへ

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