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2025年6月16日

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令和7年4月の熊本県雇用統計にみる有効求人倍率1.22倍と人材確保の戦略的視点

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熊本県の労働市場の今―令和7年4月時点での有効求人倍率1.22倍が意味するもの

令和7年4月、熊本県内における有効求人倍率(季節調整値)は1.22倍となり、前月の1.23倍からわずかに減少したものの、依然として高水準を保っています。この1.22倍という数字は、求職者1人に対して1.22件の求人があるという状況を示しており、雇用市場全体としては売り手優位の構図が継続していることを意味します。全国平均の1.26倍には届かないとはいえ、熊本県の労働市場は企業側にとって人材の確保が依然として難しい状況にあるといえます。こうした背景を踏まえ、企業の採用担当者は求人倍率という一つの指標から得られる情報を読み解きながら、採用戦略を再構築する必要に迫られています。

まず、有効求人倍率のわずかな低下が意味するのは、求人総数と求職者数のバランスが変化しているということです。令和7年4月時点での有効求人数は35,509人で、前月に比べると減少しています。一方、有効求職者数は29,187人と、こちらも減少しており、労働市場においては求人と求職の双方が縮小傾向にあることが読み取れます。つまり、採用を強化したいと考えている企業があっても、求職者の絶対数が減っているため、競争が激化していることに変わりはありません。このような状況では、求人情報の出し方、内容の工夫、そして企業の魅力の打ち出し方が、採用成功の鍵となるのです。

さらに、新規求人倍率は2.05倍と依然として高い値を示しています。これは、企業が新たに募集をかけたにもかかわらず、応募者がなかなか集まらないという現実を反映しています。実際、熊本県内の新規求人数は前年同月比で4.6%減少しており、経済活動の活発化に対して人材供給が追いついていない状態が続いています。こうした中で企業の採用担当者に求められるのは、単なる募集要項の提示ではなく、ターゲット層を的確に見極め、彼らの価値観に寄り添った情報発信を行うことです。たとえば、働き方の柔軟性やキャリア支援の体制、福利厚生の充実などは、若年層を中心に高い関心を集める要素です。求人票には書ききれない企業の「本質的な魅力」を伝える工夫が、求職者の応募意欲を引き出すきっかけになります。

業種別に見ると、製造業、建設業、卸売・小売業、医療・福祉などが引き続き高い求人件数を記録しています。特に医療・福祉業界では、慢性的な人手不足が続いており、今後も安定した求人需要が見込まれます。一方で、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業では求人が減少傾向にあり、需要と供給の不均衡が生じています。企業の採用担当者は、自社が属する業種の求人動向を把握し、他社と比較して自社の強みを際立たせるポイントを明確にすることが大切です。単に給与や労働時間だけでなく、働きやすさ、やりがい、成長機会といった質的な要素に着目することが、採用の質を高めることに繋がります。

また、正社員の有効求人倍率は1.03倍と、こちらも前月から微減しているものの、全国平均と同程度の水準にあります。この数字は、正社員としての求人に対して、ほぼ同数の求職者が存在することを示しており、正社員雇用に関しては供給と需要が釣り合っている状態にあるといえます。ただし、職種やスキルレベルによっては依然として人手不足が顕著であり、特に専門性の高い分野では競争が激化しています。こうした環境では、単なる「条件提示」ではなく、「企業文化」や「成長の場」としての企業の姿をいかに伝えるかが重要となってきます。

年齢層別の動向に目を向けると、29歳以下の若年層の新規求職申込者数が前月比で減少しており、若手人材の確保がより困難になってきていることがわかります。一方で、55歳以上の中高年層の求職者は増加傾向にあり、定年後再雇用やシニア人材の活用といった方策が企業の人事戦略において現実的な選択肢となりつつあります。年齢層にとらわれない柔軟な人材活用方針を掲げることで、企業は安定的な人員の確保と経験豊富な人材による現場支援を両立させることが可能となります。

さらに、熊本県内の各地域においても求人倍率にはばらつきがあり、熊本市や八代市といった都市部では倍率が高く、地方部では求人数が限られている傾向が見受けられます。こうした地域間の格差は、企業の採用計画において重要なファクターです。勤務地の柔軟な設定や交通費支給の強化、在宅勤務やテレワークの導入などにより、広域からの人材確保を図ることが可能になります。また、都市部に人材が集中する傾向を逆手に取り、地方の企業が「地元密着型」や「地域貢献型」の仕事をアピールすることで、Uターン・Iターン層の獲得につなげることも有効です。

最終的に、求人倍率の数値が語るのは単なる人材の需給バランスだけではなく、社会全体の働き方の変化や求職者の価値観の変容を映し出す鏡でもあります。企業の採用担当者は、こうした多層的な背景を踏まえたうえで、自社の採用戦略をアップデートしていく必要があります。採用活動とは、単に人員を補充する作業ではなく、企業の未来を共に創る仲間を見つける重要な経営活動です。令和7年4月というタイミングで公表された1.22倍という有効求人倍率の意味を、表面的な数字だけでなく、その裏にある雇用市場の変動や求職者の動向まで読み取る姿勢こそが、採用成功への第一歩となるのです。

⇒ 詳しくは熊本労働局のWEBサイトへ

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