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2025年8月7日

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令和7年5月の全産業平均労働時間134.5時間、1.7%減少で改革効果が顕在化

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毎月勤労統計調査 令和7年5月分結果確報 第2表 月間実労働時間及び出勤日数(厚労省)

令和7年5月に公表された労働統計によると、日本国内の主要産業における月間実労働時間と出勤日数の動向には業界ごとの明確な特徴が見られる。事業所規模が5人以上の企業を対象としたこの調査は、採用活動や人材確保を検討する企業にとって、業界ごとの労働環境を把握するうえで非常に有益な情報源となる。ここでは、調査結果をもとに、各産業における労働時間の実態と、前年からの変化について詳細に紹介していく。

まず全産業の平均を見ると、月間総実労働時間は134.5時間となっており、前年同月比で1.7%の減少が確認されている。これは、長時間労働の是正に向けた政府の取り組みや企業の働き方改革が徐々に浸透していることを示している可能性がある。所定内労働時間も124.8時間で、前年から1.8%の減少となっており、所定外、いわゆる残業時間についても9.7時間と減少傾向にある。特に残業時間は前年比で1.0%の減少となっており、働き方の見直しが進んでいる実態がうかがえる。

しかしこの平均値だけでは、業界ごとの具体的な違いは見えてこない。例えば、鉱業や採石業などの一次産業では、総実労働時間が158時間と最も高くなっており、前年から4.8%も増加している。このうち所定内労働時間は146.9時間、所定外労働時間は11.1時間と他の産業と比較しても全体的に労働時間が長いことが分かる。一方で、所定外労働時間は前年比で16.6%も減少しており、労働時間全体が増加した一方で残業削減には一定の成果が見られる。出勤日数は19.4日で、こちらは前年比で0.6日増えている。全体として、鉱業などでは依然として高負荷の勤務が求められているが、労働時間の適正化にも着手している様子が読み取れる。

続いて建設業では、総実労働時間が154.7時間とこちらも全体平均を上回る水準にある。所定内労働時間は142.6時間で、所定外労働時間は12.1時間となっており、前年からの増減を見ると所定内は0.6%減少、所定外は7.0%増加している。つまり、通常の勤務時間がやや減少した一方で、残業が増えている構図であり、これは建設業界における繁忙期の影響や、慢性的な人手不足が影響している可能性がある。出勤日数は19日と多めで、これは建設現場の作業が天候などに左右されるため、柔軟な稼働日数を設けていることに由来すると考えられる。

製造業では、総実労働時間が149.2時間と高めであるものの、前年からは0.8%の減少が見られた。所定内労働時間は136.7時間、所定外労働時間は12.5時間と、製造ラインの稼働を支える現場では依然として一定の残業が必要であることが分かる。しかし所定外労働時間は前年より2.4%増加しており、繁忙に伴う追加労働の必要性が依然として残っている現状を示している。出勤日数は18日で、全体の平均よりもやや多く、週休2日を基本としつつも月によっては土曜出勤などが含まれる可能性もある。

電気・ガス業においては、総実労働時間が155.1時間と高い水準を維持しているが、前年比では2.7%の減少が確認されている。所定内労働時間は138.5時間、所定外は16.6時間と、特に残業時間が他業界と比較して多くなっている。前年比で5.7%の増加という点からも、この業界では緊急対応やインフラ保守など、時間外対応が依然として多い状況が続いていると考えられる。出勤日数は18.4日で、前月と比べてやや減少しているものの、依然として高い出勤頻度が求められる業種であることに変わりはない。

一方で、金融業・保険業や不動産業などのサービス系産業に目を向けると、労働時間が比較的短めである傾向が見られる。特に金融業ではIT化の進展により業務の効率化が進み、所定内労働時間を一定に保ちながら所定外労働時間を抑える企業が増えてきた。さらに近年ではワークライフバランスの観点から、フレックスタイム制や在宅勤務の導入も進んでおり、こうした制度が労働時間の適正化に貢献していると考えられる。

このように、産業別に見ると労働時間と出勤日数には明確な違いがあり、それぞれの業界が抱える構造的な課題や特性が反映されていることが分かる。採用担当者にとって重要なのは、こうした統計データを活用して、自社が属する業界の労働環境を客観的に把握することにある。例えば、自社の労働時間が業界平均よりも長い場合には、それが採用活動に与える影響を評価し、改善策を講じる必要がある。また、逆に平均よりも労働時間が短く、柔軟な勤務制度が整っている企業であれば、それを積極的にアピールすることで、応募者の関心を引きやすくなるだろう。

現在、多くの求職者は単に給与や待遇だけでなく、働く環境や労働時間、柔軟性なども重視しており、特に若年層や中途採用層ではその傾向が顕著である。そのため、業界平均と比較した際の自社の強みや弱みを明確に把握し、それを採用戦略に落とし込むことが、優秀な人材の確保には欠かせない。

労働時間や出勤日数といった定量的な指標は、業界ごとの特徴を把握するうえで最も信頼できるデータであると同時に、企業の魅力を外部に発信するうえでも極めて有効である。今後もこうした公的統計を継続的に参照しながら、自社の労働環境の現状と課題を見直し、採用活動における差別化の材料として活用していくことが求められている。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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