2025年7月9日
労務・人事ニュース
令和7年5月時点で正社員の人手不足D.I.が44ポイント、建設業は58ポイントと過去最高水準に
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看護師/福岡県/福岡市南区
最終更新: 2025年7月8日 07:36
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介護職員/JR筑肥線/九大学研都市駅/福岡県福岡市西区
最終更新: 2025年7月8日 07:36
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看護師/福岡県/呉服町駅/福岡市博多区/通勤手当/他 再雇用
最終更新: 2025年7月8日 07:36
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栄養士/福岡市中央区/常勤/介護施設/唐人町 福岡市営地下鉄空港線
最終更新: 2025年7月8日 06:30
労働経済動向調査(令和7年5月)の概況(厚労省)
令和7年5月1日現在の全国の雇用情勢に関する最新の調査結果によれば、多くの産業分野で深刻な人手不足が続いており、特に正社員およびパートタイム労働者の確保に苦慮する企業が増加している実態が明らかとなっています。今回の調査では、正社員等の労働者について、全体として「不足」と回答した事業所が47%に達し、「過剰」とした3%との差を取った過不足判断D.I.は+44ポイントという高水準を記録しました。とりわけ人手不足が顕著であるのは、「学術研究,専門・技術サービス業」でD.I.が+59ポイント、「建設業」で+58ポイント、「情報通信業」も+57ポイントと非常に高い数値を示しています。これらの業種では、高度な専門性や技術力を求められる職種が多いため、即戦力となる人材の確保が一層困難になっていることが背景にあると考えられます。
また、パートタイム労働者に関しても全体としての過不足判断D.I.は+28ポイントとなり、全業種にわたって不足感が広がっていることがうかがえます。特に「宿泊業,飲食サービス業」は+48ポイント、「サービス業(他に分類されないもの)」も+48ポイント、「生活関連サービス業,娯楽業」では+38ポイントと、接客業やサービス業におけるパートタイム人材の確保が急務となっています。これらの業種では人と直接接する機会が多く、コロナ禍以降に敬遠された職種の一つでもあるため、従業員確保に向けた施策が強く求められています。
さらに、未充足求人の実態について見てみると、全体で58%の事業所が「未充足求人がある」と回答しており、このうち「サービス業(他に分類されないもの)」では実に68%の事業所が人材確保に難航している現状を訴えています。「医療,福祉」分野でも67%、「運輸業,郵便業」では62%の事業所が同様の課題を抱えており、特に慢性的な人材不足に直面している状況が浮き彫りになりました。これに連動して、業種別の欠員率を見ると、全体平均は3.1%であるのに対し、「サービス業(他に分類されないもの)」は5.2%、「運輸業,郵便業」では4.8%と高い水準を維持しています。
一方で、令和7年4〜6月期および7〜9月期にかけての雇用動向の見通しについても注目すべきポイントがあります。正社員等の雇用判断D.I.は両期ともに+7ポイントと横ばいを示していますが、「不動産業,物品賃貸業」が+19ポイント、「情報通信業」と「学術研究,専門・技術サービス業」がいずれも+17ポイントと前向きな雇用姿勢を示しています。これはデジタル化や都市開発などに関連する需要の高まりが影響しているとみられます。一方で、「医療,福祉」や「金融業,保険業」ではマイナス傾向も見られ、それぞれ△5ポイントおよび△3ポイントと慎重な動きが目立ちました。
また、パートタイム雇用の見通しについてはやや控えめであり、令和7年4〜6月期の雇用判断D.I.は+4ポイント、7〜9月期では+2ポイントと低調でした。それでも「宿泊業,飲食サービス業」が+13ポイント、「運輸業,郵便業」が+10ポイントなど、現場対応の必要性が高い業種においては引き続き積極的な採用姿勢が見られます。一方で「製造業」や「建設業」などでは採用抑制傾向がみられ、業種によって採用方針に大きな差が生じていることがうかがえます。
さらに雇用調整の動向について見てみると、令和7年1〜3月期において全体で27%の事業所が何らかの雇用調整を実施しており、その内訳として最も多かったのは「配置転換」が13%、「残業規制」が11%、「休日の振替・夏期休暇等の増加」が8%という結果となっています。事業活動縮小による雇用調整を実施した割合は2%と少ないものの、業種によってはかなりの柔軟な人事対応が行われていることがわかります。
中途採用の動向にも注目です。令和7年1〜3月期の中途採用実績がある事業所の割合は全体で65%に上り、前年同期と比較して2ポイント減少していますが、依然として高水準を保っています。「医療,福祉」では75%、「情報通信業」69%、「学術研究,専門・技術サービス業」69%、「宿泊業,飲食サービス業」66%など、多くの業種で中途採用の需要が根強く、即戦力人材の重要性が強く意識されていることがうかがえます。
さらに令和8年卒業予定の新規学卒者に関する採用計画に関しては、高校卒では23%、高専・短大卒では18%、大学卒(文科系)では21%、大学卒(理科系)では20%、大学院卒では12%、専修学校卒では14%の事業所が「増加」と回答しています。いずれの学歴区分でも「減少」とした割合を上回っており、企業側は一定の採用意欲を維持していることが確認できます。
その理由については、学歴ごとに若干の違いが見られますが、「長期的に育成することが必要な基幹的業務を担う者の確保」が多くの学歴で最も多く選ばれています。とりわけ大学卒や大学院卒においては、これを理由に採用を増やすという傾向が顕著です。また、「前年は新規学卒者の確保が十分できなかった」という理由も専修学校卒や高専・短大卒では大きな割合を占めており、企業が新卒採用の確保に対して強い関心を寄せていることがうかがえます。
以上の結果を総合すると、日本の労働市場は業種によって人材需給のバランスに大きな差がありながらも、全体としては依然として高い人手不足感に直面していることが明らかになっています。企業の採用担当者にとっては、自社が属する業界の特性を踏まえた柔軟な採用戦略と、即戦力人材の確保、そして将来を見据えた新卒採用の強化が、今後の安定した人材確保に向けた鍵となるといえるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ