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2025年11月26日

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令和7年9月 秋田県の求人倍率1.21倍 建設業と製造業が採用を牽引

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秋田県内の雇用情勢(令和7年9月)(秋田労働局)

この記事の概要

令和7年9月の秋田県における有効求人倍率は1.21倍となり、前月からわずかに0.01ポイント低下しました。求人総数は1万9,417人で前年同月比2.2%減、新規求人は7,036人で2.4%増とわずかに回復の兆しが見られます。求職者数は1万5,078人で前年より増加し、雇用情勢は「持ち直しの動きに弱さが広がっており、物価上昇等の影響により一部に厳しさがみられる」と総括されました。県内では建設業や製造業など一部業種で求人が増加した一方、小売業や福祉分野では減少傾向が続いており、地域や業種ごとに温度差のある雇用環境が明らかになっています。


令和7年9月に秋田労働局が公表したデータによると、秋田県の有効求人倍率(受理地・季節調整値)は1.21倍と全国平均の1.20倍をやや上回り、全国順位は21位でした。前年同月比では0.01ポイントの微減で、持ち直しの動きに弱さが見られました。就業地別の有効求人倍率は1.34倍で、こちらも前月比で0.01ポイント低下し、全国18位と中位に位置しています。地域別では、県北地域の常用有効求人倍率が1.37倍、中央地域が1.19倍、県南地域が1.08倍と地域格差が見られ、特に能代ハローワーク管内では1.64倍と県内最高水準を維持しています。

新規求人動向を見ると、前年同月比で建設業が0.6%増、製造業が9.7%増、運輸業・郵便業が14.4%増と好調でした。これらの業種では景気の底堅さや需要の回復が一定程度見られる一方で、卸売・小売業は1.0%減と14か月連続の減少となり、消費動向の鈍さが依然として続いている状況です。医療・福祉分野も0.3%減で2か月連続の減少、生活関連サービス業や娯楽業も減少が目立ちました。特に小売業では、物価上昇や人件費高騰による採算悪化が影響しており、企業側の求人意欲を抑制していると考えられます。

事業主の声をみると、現場の実情が如実に表れています。建設業では「仕事量はあるものの人手不足のため受注に追いつかない」「技能職の高齢化が進み後継者確保が困難」といった声が多く、人材不足が深刻化していることが分かります。また、製造業では「取引先の在庫過多で受注が減少」「最低賃金引き上げを見据え賃金改定を検討」といった発言が目立ち、賃金や労働条件の改善を進めながらも厳しい採算の中での採用活動を余儀なくされています。観光業や飲食業ではインバウンド需要や県外観光客による回復が見られる一方で、「宴会や宿泊客の戻りが遅い」「燃料費・光熱費の上昇が経営を圧迫している」との声があり、景気回復の恩恵がすべての事業者に行き渡っていないことも明らかです。

求職者の動向をみると、新規求職者数は3,225人で前年同月比0.9%増となり、2か月連続で増加しました。離職者数が前年よりも増加し、特に事業主都合による離職が18.7%増と大きく伸びています。これは、業績悪化や物価上昇、人件費増加などによる経営圧迫を受けた企業が一部で雇用調整を進めている影響と考えられます。65歳以上の求職者も22.0%増と増加傾向が続いており、高齢者の再就職ニーズの高まりがうかがえます。

一方、就職件数は1,362件で前年同月比2.6%減となり、3か月連続の減少でした。年齢層別では45歳以上の中高年層が全体の約6割を占め、65歳以上の就職件数が16.3%増と増加傾向にあります。これは、定年後の再雇用やシニア人材の活用を進める企業が増えている一方で、若年層の就職件数は減少しており、若手人材の県外流出や地元企業への就職意欲の低下が懸念されます。

職業別の求人動向では、建設・採掘従事者が5.26倍と非常に高く、特に土木作業従事者は6.71倍に達しています。介護や看護など福祉関連職も求人倍率が2倍を超える高水準で推移しており、慢性的な人材不足が続いています。一方、事務職は0.51倍と依然として求人に対して求職者が多い状況であり、労働市場の二極化が進んでいることが読み取れます。

中小企業の採用担当者にとって、この1.21倍という数字は、求人を出せばすぐに応募が集まる状況ではないことを意味しています。求人倍率が高い職種、たとえば建設・製造・介護といった業種では、競合他社との差別化が採用の鍵となります。賃金水準を上げることが難しい場合には、柔軟な勤務体制の導入やスキルアップ支援など、働きやすさや将来の成長機会を提示することが有効です。特に地方の中小企業では、若手や女性、高齢者など多様な人材層に目を向けることが、採用の安定化に直結します。

また、求人倍率が1倍を下回る事務系職種のように人材が比較的集まりやすい分野でも、AIやデジタル化の進展に伴い、求められるスキルが変化しています。従来の事務職からデータ管理やクラウド業務対応が可能な人材への転換を意識することが重要です。つまり、求人倍率を単なる「人手の多寡」として見るのではなく、職種や年齢層ごとの構造変化として捉え、自社に必要な人材の定義を明確にすることが採用戦略の第一歩となります。

さらに、秋田県の地域特性として、県北地域の求人倍率が高いのは製造・建設業が多い産業構造によるものです。中央・県南部では医療・福祉分野の求人が多く、介護や看護職の需要が根強い傾向があります。中小企業はこの地域的特性を踏まえ、地元高校や専門学校との連携、地域密着型の求人広報を強化することが求められます。

今後、物価上昇やエネルギーコストの影響が続く中で、求人倍率のわずかな変動も企業経営に大きな影響を与えます。採用担当者は、求人倍率の数字を単に景況感として捉えるのではなく、「どの業種で競争が激化しているか」「どの地域で人材確保が容易か」という分析を常に行う必要があります。求人倍率1.21倍という数値の裏には、企業間競争の激しさと地域経済の温度差が隠れており、採用戦略の立案にはより緻密なデータの読み解きが不可欠です。

この記事の要点

  • 令和7年9月の秋田県有効求人倍率は1.21倍で全国平均並み
  • 建設業・製造業で求人増加、小売業・福祉業で減少傾向
  • 事業主都合による離職が18.7%増と企業の雇用調整が進む
  • 65歳以上の求職者・就職件数が増加しシニア雇用が拡大
  • 中小企業は給与以外の魅力訴求で人材確保を図る必要
  • 地域差を踏まえた採用戦略と教育機関連携が鍵

⇒ 詳しくは秋田労働局のWEBサイトへ

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