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2025年7月3日

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価格交渉が前回比約10ポイント上昇!中小企業の64.2%が交渉実施と回答(価格交渉促進月間2025年3月)

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価格交渉促進月間(2025年3月)フォローアップ調査の結果を公表します(経産省)

2025年6月20日に中小企業庁が発表した「価格交渉促進月間(2025年3月)フォローアップ調査」の結果は、日本の中小企業が直面している価格交渉や価格転嫁の実態を浮き彫りにする重要な内容でした。近年の原材料費やエネルギー費、労務費の高騰を背景に、中小企業にとって適切な価格交渉の実現は経営の安定に直結する重要な課題となっており、今回の調査はその取り組みが着実に進展していることを示しています。

まず注目すべきは、価格交渉が実際に行われた割合です。調査対象となった65,725社のうち、価格交渉が実施されたと回答した企業は64.2%に上り、前年同時期の54.9%から大きく増加しました。とくに発注企業側から交渉の申し入れがあったケースは、前回の18.0%から22.7%へと上昇しており、発注側にも価格調整の必要性が広く認識されてきていることが分かります。

また、価格転嫁の実施状況も改善が見られました。全体の価格転嫁率は52.4%で、前年同時期の49.7%から上昇しています。全額転嫁ができた企業は25.7%で、前回よりも増加し、「一部でも転嫁できた」とする企業は全体の83.1%に達しました。このことから、厳しい経営環境の中でも、一定の価格調整が実現している実態が伺えます。

とくに労務費に関する価格交渉は、注目すべきトピックの一つです。価格交渉が行われた企業のうち、73.2%が労務費についても交渉を実施しており、これは前回の70.4%から増加しています。政府が2023年11月に策定した「労務費指針」が一定の効果を上げていると評価できるでしょう。しかし一方で、「労務費が上昇したにもかかわらず、交渉できなかった」という企業も6.4%存在しており、まだまだ課題は残っています。

価格交渉の実現には、発注側の理解と協力も不可欠です。調査によると、価格交渉が行われたにもかかわらず全額転嫁に至らなかった企業のうち、発注側から「納得できる説明があった」と回答した企業は61.8%でした。つまり、4割近くの企業は説明不足や一方的な価格提示に不満を持っていることになります。今後は、発注企業に対する説明責任の強化や、公正な取引慣行の周知が一層求められます。

また、サプライチェーンの取引階層が深くなるにつれて価格転嫁率が低下する傾向も明らかになりました。一次請けの企業では価格転嫁率が53.6%であったのに対し、四次請け以上では40.2%にとどまっています。特に下層の企業ほど「全く転嫁できなかった」あるいは「減額された」とする割合が高くなっており、サプライチェーン全体への公平な価格転嫁の仕組み作りが求められます。

官公需においても、価格転嫁の状況は改善の兆しを見せています。交渉実施率は38.9%に達し、前回の30.2%から大幅に上昇しました。価格転嫁率も52.3%と全体平均に近づいており、公共調達の分野でも一定の柔軟性が見られるようになっています。

支払条件についても注目すべきポイントがあります。取引代金の支払い手段について、81.8%の企業が「全額現金で支払われている」と回答しました。また、手形や電子記録債権を利用する場合でも、その約6割が「60日以内に入金される」としています。ただし、「割引料を受注側が負担している」割合は約27.5%に上っており、今後は受注側企業の資金繰りに配慮した改善が求められます。

今後の取り組みとしては、8月中下旬に発注企業ごとの価格交渉や価格転嫁の評価結果をまとめたリストの公表が予定されており、9月の価格交渉促進月間に向けた施策も進行中です。これらの取り組みにより、価格交渉の透明性と公平性がさらに高まることが期待されます。

このように、2025年3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査は、価格交渉と価格転嫁に関する社会的理解が深まりつつある現状を示しながらも、引き続き解決が必要な課題も明確にしています。中小企業の安定経営を支えるためには、政府や発注企業、サプライチェーン全体の協力が不可欠であり、継続的な制度改善と実効性ある支援が求められます。

⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ

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