2025年6月6日
労務・人事ニュース
全国の建設技能労働者が0.8%不足、2025年4月時点の需給状況が明らかに(令和7年4月分調査)
- 正看護師/企業・学校・保育園/非常勤・夜勤あり/残業少なめ
最終更新: 2025年6月13日 05:34
- 保育園の看護師/日勤常勤
最終更新: 2025年6月12日 11:04
- 介護職員/介護福祉士/日勤・夜勤両方
最終更新: 2025年6月13日 03:01
- 老人デイサービスセンターの看護師/日勤常勤
最終更新: 2025年6月12日 11:04
建設労働需給調査結果(令和7年4月分調査)について(国交省)
令和7年5月26日に発表された国土交通省の建設労働需給調査によると、2025年4月時点における全国の建設技能労働者の需給状況は依然として「不足」の傾向にあり、業界全体の人手不足が継続している実態が改めて明らかになりました。全国の主要8職種における労働者の過不足率は0.8%の不足、6職種に絞っても0.5%の不足という結果であり、前月と比較すると8職種では0.7ポイントの不足幅の拡大、6職種では0.3ポイントの拡大が見られました。前年同月と比較した場合、いずれも不足率の幅がやや縮小しているものの、需給の改善にはまだ時間を要する状況であるといえます。
職種別に見ると、型わく工(建築)は0.7%の不足、左官は0.9%の不足、とび工は1.1%の不足、鉄筋工(土木)は2.0%の不足、電工は0.2%の不足と、広範な職種で人材不足が顕著です。特に鉄筋工(土木)に関しては高い不足率が継続しており、この職種への若年層の参入促進や職場環境改善の必要性が強く示唆されています。一方で、鉄筋工(建築)では3.8%の過剰が報告されており、業種間での需給バランスの違いが浮き彫りになっています。
地域別にみると、東北地域では前月の1.4%の過剰から0.2%の不足へと転じており、東日本大震災からの復旧関連工事などが再び活発化していることが要因と考えられます。また、九州では2.4%の不足が報告され、前年同月比で2.0ポイントの不足幅の増加が見られました。これは他の地域と比較しても特に顕著であり、九州地域の建設需要の高さと、技能労働者の確保の難しさが表れた結果といえます。一方で北陸地域では3.0ポイントの不足幅の縮小が見られ、需給バランスが改善傾向にあることが分かります。これにより、北陸では過剰傾向に転じる可能性も出てきています。
さらに、調査では今後の労働者確保の見通しについても言及されています。2025年6月に向けた予測では、「困難」と「やや困難」の回答が合わせて27.5%に達し、前年同月より6.5ポイント増加しています。「容易」と「やや容易」は6.0%であり、こちらは前年同月比で1.4ポイント減少しています。この数字は、今後の人手不足がさらに深刻化することを示唆しており、建設業界としては対策を急ぐ必要があります。
労働者の確保が困難となる理由としては、「前工程の工事遅延」(25.3%)、「天候不順」(24.1%)、「昼間時間帯の制約」(18.4%)、「無理な受注」(14.9%)などが挙げられています。これらはいずれも建設現場特有の要因であり、計画通りに工事が進まないことで人員の調整が難しくなり、さらに受注量の増加に対応しきれず需給ギャップが生まれている状況です。
注目すべきは、調査に回答した全手持ち現場のうち、残業・休日作業を実施している「強化現場」が全体の3.1%にとどまり、前年同月比で5.5ポイントの減少を示した点です。これは、過剰な労働時間の抑制や働き方改革の影響とも捉えられますが、一方で人材不足の中で現場の稼働率を維持できていない可能性も考えられます。つまり、労働時間の削減と人材不足のバランスをいかにとるかが、現場の運営における今後の大きな課題となってくるでしょう。
このような需給調査の結果は、企業の採用担当者にとっても重要な判断材料となります。特に、どの職種で、どの地域で、どの時期に人手不足が深刻化しているのかを把握することで、より現実的かつ効果的な採用戦略を立てることが可能になります。また、技能労働者の育成と定着を支援する社内制度の整備や、教育訓練体制の強化も、中長期的な観点からは不可欠です。
さらに、新規募集の過不足率に注目すると、全体で前年同月比を上回る不足率となっており、建設業界への新規参入が伸び悩んでいることがうかがえます。若年層や異業種からの転職者を呼び込むための広報活動や労働条件の改善も求められている現状です。加えて、各都道府県ごとに異なる需給バランスを踏まえ、地域ごとの賃金設計や福利厚生のカスタマイズも今後のカギとなるでしょう。
こうした調査結果から導き出される現状と課題は、単なる統計数値にとどまらず、企業の経営戦略、特に人材戦略の根幹を成すべき情報です。特に、建設業界が今後も社会インフラの整備や災害復旧の中核を担っていく中で、安定的かつ持続可能な人材確保が喫緊の課題であることは明白です。そのためには、データに基づいた現状分析と、先を見据えた人材育成戦略の両輪が不可欠です。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ