2025年4月9日
労務・人事ニュース
全国児童相談所での対応件数が58万件超、子ども支援の現場から見える日本の今
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最終更新: 2025年5月2日 03:01
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最終更新: 2025年5月1日 22:32
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令和5年度福祉行政報告例(児童福祉関係の一部)の概況(厚労省)
令和5年度に実施された児童福祉に関する全国調査の結果が取りまとめられ、児童相談所に寄せられた相談件数やその内容、さらには児童虐待の実態に関する詳細が明らかとなりました。この調査結果は、子どもたちの置かれた現状を正確に把握し、今後の支援策や政策の立案に資する重要な資料であり、福祉・教育・行政のみならず、民間企業の採用活動においても、社会課題への理解やCSR活動の方向性を考える上で非常に有意義な情報です。
まず、全国の児童相談所における令和5年度の総対応件数は58万5,934件にのぼりました。これは膨大な数であり、子どもに関するさまざまな問題が日々、現場で向き合われている現実を物語っています。このうち最も多かったのが「養護相談」で、全体の51.3%にあたる30万814件を占めました。続いて「障害相談」が19万7,307件(33.7%)、「育成相談」が4万1,456件(7.1%)と続いており、子どもたちが抱える課題が多様化していることがうかがえます。その他にも、非行相談が1万3,808件、保健相談が1,045件、その他の相談が3万1,504件と記録されています。
特に注目されるのが児童虐待に関する相談件数の動向です。令和5年度に児童相談所が対応した虐待関連の相談件数は22万5,509件で、これは前年の21万4,843件と比べて1万666件、率にして5.0%の増加となっています。依然として高い水準で推移していることから、社会全体での継続的な対応が求められています。相談の内訳を見ると、「心理的虐待」が最も多く13万4,948件(59.8%)を占め、「身体的虐待」が5万1,623件(22.9%)、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が3万6,465件(16.2%)、「性的虐待」が2,473件(1.1%)という結果でした。心理的虐待が過半数を占める背景には、言動による精神的苦痛の長期化や家庭内での見えづらい暴力の存在があると推察されます。
被虐待児童の年齢に関する分析では、3歳の子どもが1万4,423件と最も多く、幼少期における家庭内環境の重要性を再認識させられる結果となりました。年齢が上がるにつれて身体的虐待の割合が高まる傾向が見られ、中学生以降では3割を超える割合に達しており、成長段階に応じた対応の必要性が示唆されています。0歳から18歳まで、どの年齢層にも虐待が存在しているという厳しい現実がここにはあります。
加えて、虐待の主な加害者についても調査が行われており、実母が48.7%で最も多く、次いで実父が42.3%となっています。この構成比率は前年とほぼ同じであり、親による虐待が依然として大きな課題であることが分かります。実母による虐待の割合が高い背景には、母親が主たる養育者である家庭が多いことや、育児ストレスの蓄積などが関係していると考えられます。また、その他の保護者や親族、養育者などによる虐待も少なからず存在しており、家庭の多様化や養育形態の変化に対応した支援体制の必要性が浮き彫りになっています。
このような児童福祉の現状は、民間企業にとっても無関係ではありません。社員が家庭に抱える問題が職場に影響を及ぼす可能性があるほか、地域社会との連携や支援活動を通じて企業価値を高める機会にもなります。特に、ワークライフバランスや子育て支援制度の充実が、企業の採用活動や離職率の抑制にもつながることを考えれば、こうした社会的課題に対する理解は人事戦略の中でも重要な視点となります。
また、この調査結果は、行政や福祉機関だけでなく、企業が地域社会とどのように関わるかを考える上でも貴重なデータです。たとえば、従業員向けに子育てや家庭支援に関する研修を導入したり、育児中の社員が安心して働けるような環境整備を進めたりすることは、企業全体の生産性向上にも寄与します。さらに、児童虐待の未然防止に貢献する取り組みとして、地域のNPOや自治体と連携した寄付活動やボランティア参加の奨励など、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としての位置づけも期待されます。
令和5年度のデータは、単に数値の増減を示すものではなく、子どもたちの命と尊厳が危機にさらされている実態を浮き彫りにしています。そのため、企業を含むすべての組織がこの現実を正しく認識し、持続可能な社会の実現に向けて何ができるのかを真剣に考える必要があります。未来の人材である子どもたちを守ることは、社会全体の責務であり、それを支えるインフラの一部として企業の役割も問われているのです。
このように、令和5年度における児童福祉の実態は非常に多面的かつ深刻であり、行政や教育機関、企業、地域社会が一体となって取り組むべき課題が山積しています。調査結果は数値だけでは読み取れない人間の苦悩や希望を含んでおり、それにどう応えるかが今後の社会全体の成熟度を測る指標ともなります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ