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2025年5月20日

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全国7,776件の公共工事から555件を点検、施工体制の透明性と品質管理の実態

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公共工事の施工体制の点検結果を公表します! ~令和6年度公共工事の施工体制の全国一斉点検の結果~(国交省)

国土交通省が令和6年度に実施した「公共工事の施工体制の全国一斉点検」の結果が公表されました。全国で稼働中の公共工事7,776件のうち、555件(約7.1%)を対象に抜き打ちで行われたこの点検は、公共工事の品質確保と適正な施工体制の維持を目的としたものであり、平成14年度より毎年実施されている重要な制度です。今回の結果では、大多数の工事現場で法令を遵守した適正な体制が確認された一方で、依然としていくつかの改善事項が見受けられた点も明らかになりました。

まず、点検対象となった555件のうち、主任技術者および監理技術者の配置については、概ね良好な結果が得られました。すべての現場で適正な資格を持つ技術者が配置されており、施工体制の基礎がしっかり整っていることが確認されています。ただし、1件については監理技術者の資格証の不携帯が確認され、これは建設業法違反として速やかに是正措置がとられました。このような事例から、資格保有だけでなく、現場における運用面での徹底が今後の課題であるといえます。

施工体制台帳についても、全ての工事で作成されていることが確認されました。しかしそのうち2件で、作業員名簿の記載漏れがあり、これも改善指導の対象となりました。施工体制台帳は現場の実態を正確に記録・反映することが義務づけられており、現場代理人や技術者、作業員の情報が正確に管理されていなければ、緊急時対応や品質監理に支障をきたす恐れがあります。こうした記載不備の背景には、記載の必要性に対する理解不足や、事務作業の簡略化が挙げられており、制度の趣旨を改めて関係者に周知する取り組みが求められています。

下請契約に関する点検では、当初契約において30件(5.4%)に指導事項が認められました。その主な内容は、契約書に建設機械費や材料費が明記されていないケースが26件、工事数量が明示されていないケースが4件で、いずれも契約内容の透明性と明確性に関わる問題です。さらに、変更契約については8件で、追加工事や契約変更の署名や押印がないなど、書類整備の不備が確認されています。これらの問題は、元請と下請の相互理解や業界の慣例に起因するケースが多く、今後は契約実務の厳格化と記載内容の標準化が求められます。

下請代金の支払いに関する点検では、546件中9件(1.6%)で労務費が現金払いでない、または手形期間が60日を超えているなどの不備がありました。また、5件では支払い方法や時期が明記されていないという指摘もありました。これらの不備の原因としては、「認識不足」や「社内規定の不適切さ」が挙げられており、企業内部でのガバナンス強化が急務です。元請企業が下請企業に対して不適切な契約条件を課すことは、法令違反に繋がるだけでなく、建設業界全体の信頼性を損なう要因となるため、業界全体のコンプライアンス意識の向上が強く求められます。

一括下請負、いわゆる「丸投げ」の禁止については、すべての工事において、元請・下請が果たすべき役割を適切に担っていることが確認されました。これは非常に前向きな結果であり、施工品質を守るうえでの重要な基盤となります。また、特定専門工事における主任技術者の専任状況や資格保有の確認についても、全ての対象工事で適正であることが明らかになりました。

企業の採用担当者にとって、これらの点検結果は単なる建設現場の運用状況を示すにとどまらず、今後の人材育成や労務管理において重要な示唆を与えるものとなります。たとえば、建設業界における人材不足が深刻化する中で、技術者の適切な配置や資格保有状況の徹底は、企業の信頼性や競争力に直結します。また、現場での契約実務や安全管理を理解し、法令順守の精神を持った人材をいかに育てるかは、企業の持続的成長の鍵を握ります。

さらに、今回の点検では、「施工体制の的確な把握」や「契約文書の明確化」といった観点から、ドキュメンテーションと透明性の確保が重視されており、これはあらゆる業界に共通する管理能力として評価できます。採用時においても、法令理解力、書類整備能力、チーム運営スキルといった点を評価指標に組み込むことで、より信頼性の高い人材を確保することが可能となるでしょう。

このように、令和6年度の施工体制点検結果は、建設業界のみならず、あらゆる企業の業務管理・人材戦略にとって有意義な知見を提供しており、法令遵守と現場力の強化が今後の日本の産業競争力を支える礎であることを、改めて示しています。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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