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2025年4月13日

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全国8割の手続きで代替確認可能、民生委員証明の見直しが進む制度改革の行方

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民生委員・児童委員による証明事務に関する調査<結果に基づく通知>(国交省)

令和7年3月に取りまとめられた「民生委員・児童委員による証明事務に関する調査結果(概要)」は、地域社会の中で長年にわたり支えられてきた民生委員制度に対する、現代的な課題と今後の制度見直しに向けた指針を明確に提示する重要な報告となっています。とくに、無報酬のボランティアとして活動する民生委員が地域住民の生活や福祉に関する支援を行うなかで、行政手続に付随する「証明事務」が抱える負担や実務上の課題が具体的に浮き彫りとなっており、企業におけるコンプライアンスや地域連携の観点からも無関係ではない内容です。

今回の調査では、国が所管する11の行政手続きと地方自治体が独自に設けた9の手続きを対象に、民生委員による証明事務の実態を検証しています。その結果、合計20手続のうち少なくとも8手続においては、他の公的書類や行政情報の活用によっても事実関係を確認できるにもかかわらず、従来どおり民生委員の証明が求められていたことが明らかになりました。これは、制度の形骸化や現場負担の過剰を意味するものであり、今後の制度運用の見直しが急務であることを示唆しています。

民生委員による証明が特に問題視されるのは、事実婚の解消や生計同一の証明といった、極めてプライバシーに関わる個人情報を扱う手続きにおいてです。民生委員は、あくまで地域に根ざした支援者であり、必ずしもすべての住民と密接な関係を築けているわけではありません。しかしながら、証明を求められる状況においては、面識のない住民に対して生活実態を尋ねる必要があり、結果として「初対面の者から聴取されることに屈辱を感じた」という声や、「近所の人に身の上を知られたくない」という住民の拒否感が生じ、証明事務をめぐってトラブルに発展する事例も報告されています。

加えて、証明を求められた民生委員が、事実確認に不安を覚えたり、個人情報の取り扱いに苦慮したりする例が相次ぎ、住民と行政の間に立つ立場として過度な負荷を背負わされている現状が浮かび上がっています。調査に協力した民生委員の多くが、「行政機関で確認可能な事実まで自分たちに依頼されるのは本来の役割を超えている」と感じており、明確な線引きと業務負担の軽減が望まれているのです。

地方公共団体の取り組みとしては、民生委員による証明を必須とせず、業務システムとの連携や源泉徴収票・納税証明書などの公的書類を活用する方法に転換している例も複数確認されました。たとえば、保育所入所や公営住宅の家賃減免、就学援助制度などの手続きにおいては、職員による聞き取りや家庭状況調査票などを活用し、民生委員の介入を必要としない柔軟な運用が進んでいます。こうした見直しにより、証明に伴う心理的ハードルを下げ、申請者のプライバシー尊重と事務効率の両立が実現されつつあります。

調査結果では、制度の運用に関して国の通知等が現場に正しく伝わっておらず、民生委員による証明は「原則不要」または「代替手段がない場合に限る」とされているにもかかわらず、現場で形式的に継続されていた事例も見受けられました。これは、行政手続に関わる各府省庁や自治体の部門間での情報共有や制度理解が不十分であることを示しており、今後は民生委員制度を所管する厚生労働省やこども家庭庁が中心となって、ガイドラインの見直しや自治体への周知を徹底していく必要があります。

また、民生委員制度そのものが担い手不足という深刻な課題に直面している中で、証明事務の見直しは制度の持続可能性を高める重要な一歩です。現在、全国に約21万人いるとされる民生委員は、ボランティアであるにもかかわらず、実質的には専門的知識と高い倫理観を求められる業務を担っており、過度な責任や期待が制度の魅力を損ねる要因となっているとの指摘もあります。こうした状況を改善するためには、民生委員に求められる役割の明確化と、その業務量の適正化が不可欠です。

企業の採用担当者にとっても、今回の報告書から得られる示唆は少なくありません。第一に、地域との連携やCSR活動において、民生委員との協働を視野に入れる場合には、業務実態や負担に十分配慮する必要があります。第二に、従業員が公的手続を行う際の支援体制の整備において、証明取得が不要な運用が可能な制度を導入している自治体の情報を把握し、社員に対して適切な案内を行うことが求められます。そして第三に、制度の変革期において公的支援制度の更新情報を敏感にキャッチし、社内ルールや申請フローの見直しを行うことが、企業の信頼性を高める一助となるのです。

⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ

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