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2025年8月15日

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医療情報の仮名化提供解禁で約470万人分のデータが研究に活用可能に

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令和7年版厚生労働白書 第2部 第5章 医療関連イノベーションの推進(厚労省)


この記事の概要

政府は、超高齢社会に対応し医療・介護の質を高めるため、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に本格的に取り組んでいる。マイナ保険証の普及、電子処方箋や全国医療情報プラットフォームの整備、電子カルテの標準化など、医療現場の効率化と国民への利便性向上を目指した取り組みが進行中である。これにより、医療の質向上や健康寿命の延伸が期待されている。


日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しており、医療・介護・福祉の持続可能性をいかに確保するかが国家的な課題となっている。こうした背景を受けて、政府は医療分野のデジタルトランスフォーメーション、すなわち医療DXの推進に注力している。特に厚生労働省では、2023年6月に策定された「医療DX推進工程表」に基づいて、さまざまな政策を展開している。

最も注目されるのは、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」の導入と普及促進である。2024年12月2日以降、新たな健康保険証の発行は停止され、マイナ保険証を基本とする仕組みへと移行した。ただし、最長1年間は既存の保険証も利用できる措置が取られており、マイナ保険証を持たない人には、申請不要で保険者から資格確認書が交付される。このように、デジタルとアナログを併用する過渡的な措置が導入され、国民が不安なく医療サービスを受けられる環境整備が進められている。

また、2023年から全国的に運用が始まった電子処方箋も、医療の質を高める重要な取り組みである。2025年3月末時点で、全国の薬局の約77.7%が電子処方箋を導入済みであり、今後さらに普及が進むことが見込まれる。これにより、重複投薬や薬の飲み合わせの問題を防ぎ、患者の安全性が大きく向上すると期待されている。

全国医療情報プラットフォームの構築も進められている。このプラットフォームは、医療・介護・公衆衛生に関する多様な情報をネットワークで共有できる仕組みで、電子カルテ情報の共有や医療情報の二次利用を可能とする基盤として重要な役割を担っている。2025年度中には、本格稼働が予定されており、情報の共有によって切れ目のない医療提供が現実のものとなる。

さらに、異なる医療機関間での情報共有を円滑に行うため、電子カルテの標準化も進められている。既に電子カルテを導入している医療機関に対しては、標準規格への改修に必要な費用の一部を支援し、導入していない診療所等にはクラウド型の標準電子カルテが提供される予定である。2025年3月から一部地域での試行も始まっており、全国展開に向けた基盤が着々と整えられている。

診療報酬制度のデジタル化、いわゆる「診療報酬改定DX」も見逃せない動きである。診療報酬の算定と患者負担金の計算を標準化し、共通モジュールとして提供することで、医療機関の業務効率が飛躍的に向上すると期待されている。この仕組みは2026年度中の本格提供を目指し、既に開発が始まっている。

医療情報の二次利用も注目される分野である。これまでの匿名化情報に加えて、仮名化情報の提供が可能となり、複数のデータベースとの連携解析が進められている。これにより、革新的な医薬品や治療法の研究開発が加速され、国民の健康増進や医療の質の向上に寄与することが期待されている。

こうした医療DXの進展は、単に医療機関の効率化にとどまらず、患者の命を守り、災害時や救急時の迅速な対応、さらには医療費の抑制にもつながる大きな可能性を秘めている。災害時には、避難先の医療機関でも患者の服薬情報などが即座に確認できる「災害時モード」が活用され、2024年3月までに約31,300件の情報閲覧が行われた実績もある。

また、医療従事者にとっては、事務作業の効率化や誤入力の減少によって働き方改革が進み、より魅力的な職場環境が整備される。こうした改革により、医療従事者の負担が軽減されるだけでなく、医療サービス全体の質の底上げが期待される。

医療DXの推進は国民一人ひとりの生活に直結するものであり、国、自治体、医療機関、企業が連携して取り組む必要がある。今後も多様な技術革新が導入され、健康寿命の延伸、医療の質の向上、そして社会保障制度の持続可能性という三つの大きな課題を乗り越えるための鍵となるだろう。

この記事の要点

  • マイナ保険証の利用が2024年12月から基本制度に移行
  • 電子処方箋は薬局の約77.7%で導入済み
  • 全国医療情報プラットフォームは2025年度中に本格稼働予定
  • 電子カルテの標準化とクラウド型導入を国が支援
  • 診療報酬改定DXで業務負担の軽減と効率化を目指す
  • 医療情報の二次利用が新たな医薬品開発を後押し
  • 災害時には「災害時モード」により患者情報の即時共有が可能

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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