2025年5月31日
労務・人事ニュース
名目給与349,388円に上昇、3.0%増から読み解く令和6年度の賃金改善動向
- 「時短勤務可」/准看護師・正看護師/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年6月12日 22:31
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最終更新: 2025年6月12日 22:31
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最終更新: 2025年6月12日 22:32
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最終更新: 2025年6月12日 22:32
毎月勤労統計調査 令和6年度分結果確報(厚労省)
厚生労働省が発表した令和6年度の毎月勤労統計調査確報によれば、日本の労働市場は依然として回復基調にあり、名目賃金や常用雇用の拡大が各所で確認されました。今回の調査は、事業所規模5人以上を対象として実施されており、名目賃金、実質賃金、労働時間、パートタイム比率、そして入職率・離職率などの詳細なデータが網羅されています。企業の採用活動や労務戦略において極めて参考となる最新の統計です。
まず注目されるのは名目賃金の動向です。全体の現金給与総額の平均は349,388円で、前年と比較して3.0%の上昇となりました。従業員30人以上の企業ではこれが399,638円とさらに高く、3.4%の増加となっています。この数字は、企業全体で人材確保のための賃金改善が進められている実態を如実に表しています。給与の内訳を見ると、基本給にあたる「きまって支給する給与」は283,070円(前年比2.1%増)、定時労働による「所定内給与」は263,381円(同2.1%増)となっており、雇用の安定性と生活保障の向上が図られていることがわかります。さらに、賞与や一時金などの「特別に支払われた給与」は66,318円で7.5%の増加を示し、企業の業績回復や成果に対する報酬制度の強化が進んでいることがうかがえます。
次に、一般労働者とパートタイム労働者の属性ごとに賃金を比較すると、一般労働者の平均現金給与は455,726円で前年比3.5%の増加となりました。所定内給与は334,392円(同2.5%増)と、全体の傾向と一致した伸びを見せています。対してパートタイム労働者の現金給与は112,637円で3.9%の増加、時間当たり給与は1,357円と前年から4.3%上昇しており、パートタイム従業員の待遇改善も進んでいることが明らかです。
一方で実質賃金の面では、物価上昇の影響を受けてやや厳しい状況が続いています。消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で調整された実質現金給与総額は98.7と、前年比で0.5%の減少を示しました。これは名目賃金の伸びを物価上昇が上回ったことを意味し、実質的な購買力の低下が避けられなかったことを示しています。なお、消費者物価指数自体は3.5%の上昇となっており、家計にとっては可処分所得の圧迫が続くことが予想されます。
産業別に賃金を比較すると、最も高い水準を記録したのは「電気・ガス業」で、平均給与は609,804円(前年比5.1%増)に達しました。ついで「金融業・保険業」が535,870円(同6.0%増)、「情報通信業」が532,171円(同2.9%増)と続き、高度な専門性を要する産業での報酬水準の高さが際立っています。一方、「飲食サービス業等」では141,183円にとどまり、同3.2%の増加ではあるものの、業界間の賃金格差は依然として大きいことが示されています。
労働時間については、総実労働時間の平均が136.3時間で前年比1.2%の減少となっており、長時間労働の是正や業務効率化が一層進んでいる傾向が見て取れます。所定内労働時間は126.3時間(同1.1%減)、所定外労働時間は10.0時間(同2.5%減)と、残業の削減も顕著に進行しています。出勤日数の平均は17.6日で、前年と同水準でした。
パートタイム労働者に限って見ると、労働時間は79.9時間で前年比1.2%減、所定外労働時間はわずかに増加して2.3時間(3.3%増)となりました。これは短時間勤務を基本としつつも、補助的業務に対する柔軟なシフト調整が進められている可能性があります。また、業種別では「製造業」のパート労働者の所定外労働時間が5.1時間(前年比7.1%増)となっており、人手不足への対応としてパートの時間延長が行われていると考えられます。
雇用面でも、労働者総数は51,021千人で前年比1.2%の増加、常用雇用の拡大が明らかとなっています。パートタイム労働者比率は31.01%で前年より0.51ポイント上昇しており、雇用の多様化が一層進んでいることを物語っています。中でも「卸売業・小売業」ではパート比率が44.56%と高く、サービス業中心の働き方の変化に企業が順応していることがうかがえます。
企業の採用担当者にとって、このような統計は極めて有益な資料です。業界別、就業形態別、規模別に具体的な数値を把握することで、自社の賃金水準が相対的にどう位置づけられるかを客観的に評価することができます。また、離職率や入職率といった指標を併せて分析することで、採用から定着、戦力化に至るまでの一連の人材戦略を精緻に構築することが可能になります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ