2025年8月14日
労務・人事ニュース
国内投資の抑制と海外進出の拡大、令和7年度報告から見えた30年の軌跡
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最終更新: 2025年8月23日 23:04
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最終更新: 2025年8月23日 23:04
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最終更新: 2025年8月23日 23:04
令和7年度経済財政白書 第3章 変化するグローバル経済と我が国企業部門の課題 第2節 我が国の企業行動における長期的な変化と課題(内閣府)
この記事の概要
本記事では、令和7年度の経済財政報告の中から「企業行動の長期的な変化と課題」に焦点を当て、日本企業が過去30年超にわたってどのように経営戦略を変化させてきたのか、またその背景にある経済環境やグローバル化の影響について詳しく解説します。特に収益構造の変化、設備投資の傾向、国内外の資金運用、人件費の動向など、企業経営の意思決定に大きく関わる要素に注目しています。
我が国の企業は、過去30年以上にわたり大きな環境変化に対応しながら、その経営行動を根本から見直してきました。1980年代から1990年代にかけては、バブル経済の影響もあり設備投資や借入による拡大戦略が主流でしたが、バブル崩壊後のデフレ期には収益確保を重視したコストカット型の経営へと大きく舵を切ることになります。その結果、1993年度を底として、企業の経常利益は長期的に増加を続け、2025年1~3月期には約29.3兆円にまで達しました。これは、1985年の5.3兆円と比べて5倍以上の水準であり、日本企業の収益力が大きく向上していることを示しています。
一方で、その利益が必ずしも国内の設備投資や人件費に還元されているとは言い難く、1985年の設備投資が7.5兆円だったのに対して、2025年には13.2兆円にとどまり、約2倍弱の伸びに留まっています。また、バブル期直後の1991年には15.3兆円の設備投資が行われたにもかかわらず、2025年時点でもその水準に達していないという事実は、企業が依然として投資に慎重な姿勢を維持していることを物語っています。
企業が高い利益を維持しながらも、国内投資に積極的でない背景にはいくつかの要因があります。まず挙げられるのがコスト構造の変化です。企業は売上増加よりも、生産効率の改善や原材料コストの抑制によって利益を伸ばしてきました。特に非製造業では変動費の対売上比率が着実に低下しており、企業努力によるコスト削減が顕著でした。さらに、人件費についても長期間にわたり抑制傾向が続き、特に2000年代前半には一人あたりの人件費単価も下落する傾向が見られました。ただし、近年では30年ぶりの賃上げが話題となり、人件費もようやく増加に転じています。
企業が蓄積した利益の多くは、社内留保として残されてきました。2023年度には、税引前当期純利益の117%増に対して、法人税等は10%、配当金は40%、社内留保は67%と、利益の過半が企業内に蓄積されています。これにより企業のバランスシートにおける自己資本は大きく強化され、自己資本比率は1990年代の20%以下から、現在では全産業平均で40%以上にまで上昇しています。
では、蓄積された自己資本はどこに向かっているのでしょうか。企業は国内での設備投資を抑える一方で、海外投資や現金・預金の保有を拡大させてきました。投資有価証券の増加は、主に海外子会社の設立やM&Aを通じた海外展開を意味し、グローバル市場でのプレゼンス強化が重視されてきた証左といえます。特に大企業では、資産の中で投資有価証券が固定資産を上回るまでに増加しており、資金の使途が海外中心であることが明白です。
一方で、中小企業は海外展開が難しいため、現金・預金として資産を保有する傾向が強く、手元流動性の確保に注力しています。これは、リーマンショックやコロナ禍といった危機に備えた行動とも捉えられ、日本企業のリスク耐性の高さを物語っています。実際、非金融法人企業における現預金のGDP比は、日本が60%前後と先進国の中でも突出して高い水準を維持しています。
加えて、企業の資金運用は海外に偏重しており、海外現地法人の数や売上比率が顕著に増加しています。1995年度には33%だった海外売上比率は、2023年度には56%まで上昇し、特に非製造業においてもこの比率は急速に伸びています。企業のグローバル戦略の深化が読み取れますが、その一方で、国内の雇用や賃金、設備投資が十分に伸びていない現状には課題も残されています。
特に、製造業における海外現地生産比率の上昇は、近年一服している傾向があります。為替レートの変動や地政学的リスクなどを考慮し、企業が海外展開のペースを見直す動きも見られます。こうした変化は、国内回帰の兆しとも捉えることができるかもしれません。
総じて、日本企業の行動は、過去の教訓を踏まえた慎重な財務運営と、グローバル市場を見据えた戦略的な展開の両輪によって成り立っています。しかし、その過程で国内への分配や投資が抑制されてきた事実もまた見逃せません。今後は、蓄積された利益をどのように国内での成長に再投資し、持続可能な経済成長に結び付けていくかが問われています。企業の内部留保や手元資金を、どのように人材投資や技術革新、地域経済の活性化に生かしていくのか。その舵取りが、日本経済の今後を左右するといえるでしょう。
この記事の要点
- 企業の経常利益は過去30年間で5倍以上に増加
- 設備投資は伸び悩み、1991年のピークを依然として下回る
- 利益の多くは社内留保として蓄積され自己資本比率が上昇
- 投資先は国内ではなく海外と現金・預金が中心
- 中小企業は手元流動性を確保、大企業は海外展開に注力
- 海外売上高比率は全業種で上昇し56%に到達
- 製造業の海外生産は一服傾向も、依然として高水準
- 今後は国内投資への再配分が日本経済の成長カギとなる
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ