2025年4月24日
労務・人事ニュース
基本給拡充を実施した中小企業は約60%、同一賃金ルール対応の実態とは
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最終更新: 2025年4月30日 22:32
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同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)(JILPT)
2025年3月27日に公表された「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)」は、厚生労働省の要請のもと、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施したものであり、今後の制度見直しに向けた実態把握を目的としています。調査は、全国の中小企業2,677社および大企業761社を対象に行われ、有効回収率はそれぞれ22.5%、15.2%でした。
調査結果からは、多くの企業が同一労働同一賃金の原則に基づき待遇の見直しを行っていることが明らかになりました。特にパート・有期社員に対する基本給の改善が顕著であり、中小企業では約6割、大企業では約4割が基本給を拡充しています。昇給の仕組みについても、中小企業で約4割、大企業で約3割が改善を実施しており、非正規労働者の賃金体系における透明性と公正性の確保に向けた動きが見られます。
賞与に関しては、中小・大企業ともに約4割が拡充を図っており、ボーナス制度の整備が進んでいます。ただし、退職金については中小・大企業ともに対応が遅れており、いずれも約1割にとどまっています。家族手当や通勤手当などの福利厚生面では、大企業の方が拡充の割合が高く、家族手当で約3割、通勤手当で約2割が対応しています。中小企業でも通勤手当では約3割の改善が見られました。
休暇制度に関しては、大企業では約5割、中小企業では約3割が拡充を行っており、働き方改革の一環として非正規社員への休暇制度の整備が進んでいることがうかがえます。また、教育訓練の提供については、中小企業で約2割、大企業で約1割の企業が実施しており、キャリア形成支援に向けた施策が少しずつ浸透し始めていることが示されています。
給与と賞与の実際の変化に関するデータでは、非常に興味深い傾向が見られます。中小企業では約9割の企業が毎月の給与を増加させており、「1~3%増」が約4~5割、「4~5%増」が約3割、「6%以上増」が約1~2割に達しています。大企業でも約8割の企業が給与を増加させており、「1~3%増」が最多で約5~6割、「6%以上増」が約1割となっており、中小企業の方が給与増加幅の大きい傾向が明確に現れています。
年間賞与に関しては、大企業の方が「新設」の割合が高く、約3~4割の企業が賞与制度を新たに導入しています。一方で、中小企業では増加幅が相対的に大きく、「1~3%増」が約2~3割、「4~5%増」が約1~3割、「6%以上増」も約1~2割に上ります。これにより、賃金面での格差是正と、処遇の公平性に対する中小企業の積極的な姿勢が評価されるべき点であると言えるでしょう。
一方、パート・有期社員に対する各種処遇の実態を詳しく見ると、依然として正社員との格差が残っている項目が多く存在します。基本給の算定基準においては、中小企業で約7~8割、大企業で約8~9割が正社員とは異なる基準を採用していると回答しています。これは同一労働同一賃金の理念からは距離がある運用であり、制度のさらなる普及と浸透が求められます。
賞与については、中小企業で約6~7割、大企業で約6~8割の企業が支給対象としていますが、それぞれの約半数が異なる基準で支給しています。退職金については、中小企業・大企業ともに支給対象とする企業は2~3割にとどまり、そのうち異なる基準を用いている企業も一定数存在しています。
また、同一労働同一賃金への対応に際しての労使の話し合いの有無については、中小企業では約半数、大企業では約4割が話し合いを行っていないという実態も浮き彫りとなりました。特にパート・有期社員を含めた話し合いを行った企業は中小企業で約3割、大企業で約2割にとどまっており、当事者の意見反映の機会が限られていることが課題として指摘できます。
最後に、人事評価制度の導入状況については、正社員に対しては中小・大企業ともに約9割の企業が実施しているのに対し、パート・有期社員への評価はやや低く、中小企業で約6~8割、大企業でも同程度の水準となっています。これにより、能力や成果に応じた公正な処遇がまだ完全には整っていない状況が伺えます。
本調査からは、企業の間で同一労働同一賃金への理解と実行の度合いに濃淡があることが明確になり、特に非正規労働者に対する処遇の平準化には、さらなる制度的・文化的な支援が求められています。今後、制度改正やガイドラインの改訂に向けた議論において、本調査結果は非常に重要な資料となるでしょう。企業側も人材獲得競争の中で、多様な働き手に対する待遇改善がますます経営の中心課題となる中、このような調査を契機に、より透明性と公平性のある労務管理体制の構築が期待されます。