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2025年4月9日

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妊婦健診受診者が95万人超、母子保健の充実が育児支援のカギに

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令和5年度地域保健・健康増進事業報告の概況 地域保健編(厚労省)

令和5年度に実施された地域保健に関する全国調査の結果が公表され、日本の母子保健や健康増進、歯科保健、精神保健福祉、予防接種、職員配置など、保健行政全般の実施状況が具体的な数字とともに明らかになりました。この調査は市区町村と保健所の連携のもと行われ、国民の健康を支える基盤整備の状況を客観的に把握するものであり、行政はもちろん、企業にとっても今後の人事戦略やCSR活動において重要な参考資料となります。

まず母子保健に関して注目すべき点は、妊娠届出件数が年間で750,992人にのぼったことです。これは全国の妊娠者のうち94.5%が妊娠11週以内に届出を行っており、妊娠の早期把握が制度的にも定着している現状を示しています。また、妊婦に対する一般健康診査の受診者数は956,635人、産婦は542,095人であり、妊娠中および出産後の母体の健康管理が公的支援のもと広く実施されていることがうかがえます。市区町村による乳児の健康診査では、3~5か月児が735,706人受診し、その受診率は96.1%に達しています。さらに、1歳6か月児健診は782,952人、3歳児健診は840,352人が受診しており、受診率もそれぞれ96.9%、96.0%と高水準を維持しています。

妊産婦や乳幼児への保健指導の実施状況にも目を向けると、妊婦への指導が811,574人、産婦が304,540人、乳児が555,726人、幼児が745,020人に提供されており、育児初期段階での家庭支援が広く展開されています。一方で、訪問指導に関しては産婦への指導が645,198人と最多であり、次いで乳児が513,876人となっています。家庭訪問による支援は、育児不安や産後うつなどの予防にも寄与しており、今後も継続的な体制強化が期待されます。

健康増進分野では、保健所および市区町村によって実施された健康指導の総延人員は5,237,873人にのぼります。中でも栄養指導が3,221,917人と最多であり、運動指導が1,120,032人と続きます。特に栄養指導においては乳幼児への実施件数が1,748,562人と多く、食育や成長発達に対する支援が重点的に行われていることが分かります。また、運動指導においては20歳以上が1,069,777人と中心層となっており、成人病予防や健康寿命延伸に向けた取組が活発です。

歯科保健の分野でも活発な活動が見られます。令和5年度には歯科健診が3,028,094人、保健指導が2,834,906人、予防処置が1,587,124人、治療が15,418人実施されています。これらの取り組みは、虫歯や歯周病といった口腔疾患の早期発見・早期治療を目的とし、医療費抑制や生活の質の向上に寄与しています。

精神保健福祉に関しては、相談件数が874,102人、訪問指導が287,830人、電話相談が1,688,235人、メール相談が28,049人となっており、特に電話相談の多さが特徴的です。相談内容では「社会復帰」に関するものが220,111人と最多で、精神疾患を抱える人々の生活再建や就労支援が主要なテーマとなっていることが明らかです。

感染症対策としてのエイズ予防にも動きが見られ、電話相談が34,602件、来所相談が44,777件となっており、HIV抗体検査のスクリーニング検査は80,890件、そのうち陽性件数は149件でした。陽性率は0.18%と低いながらも、継続的な検査体制と啓発活動が欠かせない状況です。

予防接種についても広範な実施がなされており、インフルエンザワクチンは年間で1,968万人以上が接種を受けています。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、2価・4価・9価の接種が合わせて160万人を超えており、女性の健康管理に向けた重要な施策として注目されています。特に令和4年度からは積極的な接種勧奨が再開され、接種者数が大幅に増加しました。

保健行政を支える人材の面では、保健所や市区町村における常勤職員数は全体で29,005人の保健師を筆頭に、管理栄養士が3,929人、薬剤師が3,259人、獣医師が2,373人配置されています。中でも保健師の人口10万人当たり配置数を見ると、全国平均は23.2人ですが、島根県が49.8人と最多で、高知県が45.6人、鳥取県が41.5人と続いています。都市部と地方の格差が見られる一方で、地域密着型の保健サービス提供が地方自治体の特色となっている点も注目されます。

これらの統計データから明らかになるのは、日本の保健行政が非常に多面的かつ包括的に展開されており、妊娠期から老年期に至るまで、国民の健康を切れ目なく支える仕組みが構築されているという点です。企業の採用担当者にとって、こうした保健体制は働く人々のライフイベントを支える基盤として捉えることができ、職場環境の整備や福利厚生の方向性を見極めるための重要な参考情報となります。たとえば、育児休業後の復職支援や、精神的な健康維持のための制度設計などにおいて、行政が提供する支援との連携を視野に入れることが、社員の定着率向上や企業全体の持続可能性につながる可能性があります。

このように、令和5年度の地域保健実施状況の詳細なデータは、企業が社会課題とどう向き合い、どのように社会的責任を果たしていくかを考えるうえでも極めて価値のあるものです。今後の人材戦略を立てるうえで、こうした地域保健の現状把握と対応施策の理解は、企業の信頼性や魅力度を高めるための重要な要素となるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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