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2025年8月4日

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宿泊料金に応じて最大500円課税、占冠村が高付加価値観光と専門人材育成に本格着手

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北海道占冠村「宿泊税」の新設(総務省)

北海道占冠村は、観光地としての魅力をさらに高め、地域の持続可能な発展を促進するため、令和8年4月1日から新たに宿泊税を導入することを決定しました。この制度は、法定外目的税として設けられ、占冠村内の宿泊施設に宿泊するすべての利用者に対して課税される仕組みです。観光客数の増加に対応しつつ、観光資源の保全と活用を両立させるための重要な施策として位置付けられています。

占冠村は、北海道の中央部に位置し、緑豊かな自然に囲まれた環境が特徴の地域であり、四季折々の風景やアクティビティを楽しむことができる国内有数のリゾート地としても知られています。特に、星野リゾートトマムをはじめとする大規模な観光施設が点在し、国内外から多くの観光客が訪れるエリアであることから、観光施策の充実は地域経済に直結するテーマとなっています。今回導入が決定された宿泊税は、そうした地域の特性を活かしながら、観光資源の価値を持続的に高めていくための財源確保を目的としています。

この宿泊税は、旅館業法に基づく旅館・ホテル・簡易宿所、および住宅宿泊事業法の届出を行って運営される民泊施設など、占冠村内のあらゆる宿泊施設が対象となります。課税の対象は、実際に宿泊した宿泊者本人とされ、納税義務者となります。課税方式としては、特別徴収制度が採用され、宿泊施設側が宿泊料金とともに宿泊税を徴収し、後日まとめて自治体に納付することになります。これにより、利用者側にとっても分かりやすく、施設側にとってもスムーズな運用が期待される制度設計となっています。

課税額については、宿泊料金に応じた三段階制が導入されており、宿泊料金が2万円未満であれば1人1泊あたり100円、2万円以上5万円未満であれば200円、5万円以上の場合は500円と設定されています。このように価格帯に応じた税率を設定することで、観光客の負担感を最小限に抑えつつ、高価格帯の宿泊を選択する旅行者からはより多くの税収を確保できる仕組みとなっています。価格別の段階制により、宿泊の質に応じた公平な負担を求めることが可能となり、観光サービスの多様化に対応した柔軟な制度となっています。

占冠村が見込む宿泊税による年間税収は約0.7億円、すなわち7,000万円に達する見込みです。この収入は、観光振興に直接結びつく施策に充てられる予定で、具体的には観光施設の整備、情報発信力の強化、観光客受け入れ環境の向上、イベント開催の支援など、多岐にわたる活用が想定されています。さらに、観光客の安全確保や災害時の対応といった危機管理分野における支援体制の構築にも一部が使われる見通しです。これにより、観光地としての信頼性を高めるとともに、観光産業全体の持続可能性を担保する基盤づくりが進められることになります。

徴税にかかる費用は、平年度で約930万円と見積もられており、税収に対するコスト比としては適正水準に収まっています。行政の効率的な運用と、宿泊施設との連携を通じた円滑な徴収体制が求められることから、条例施行までの期間において、制度周知や実務支援の体制整備が進められる予定です。また、教育・福祉的配慮として、修学旅行の参加者および引率者、認定こども園や保育所などの行事による宿泊参加者に対しては課税免除措置が講じられています。この免除制度は、地域社会の理解を得るうえで極めて重要な役割を果たし、公共性の高い活動に対する柔軟な対応が可能となっています。

条例の制定は令和7年3月14日に占冠村議会で可決され、その後、3月31日には総務大臣との協議が行われ、同年7月22日付で正式に同意が得られました。このように、制度の立法過程も適切な手続きを経て進められており、住民や関係者にとっての安心材料となっています。また、制度施行から5年を目途に見直しを行う旨も盛り込まれており、時代や需要の変化に応じた柔軟な制度運用が可能となることも注目すべき点です。

企業の採用担当者にとっては、今回の宿泊税導入がもたらす人材市場への波及効果に注目すべきでしょう。観光産業の活性化により、観光施設での接客・運営スタッフをはじめ、通訳案内士、観光プランナー、イベント運営スタッフ、地域マーケター、広報・PR担当者、さらには地域の自然環境を活かしたエコツーリズムガイドなど、多様な職種での雇用創出が期待されます。特にインバウンド需要を見越した語学対応や多文化理解に長けた人材の採用ニーズが高まることは確実であり、企業にとっては専門人材の確保と育成が急務となる場面が増えると見られます。

また、宿泊税によって安定した観光財源が確保されることで、企業が地域に根差した観光ビジネスを展開するための環境が整備され、地域外からの人材誘致やU・Iターン就職の促進も期待されます。観光を核とした地域づくりが進むなかで、観光業界と連携した新規事業やスタートアップの創出、観光関連の人材サービス業など、周辺産業への波及効果も見込まれ、採用活動の幅は今後さらに広がることでしょう。

占冠村の宿泊税導入は、観光を通じた地域活性化を進めるなかで、財源確保と制度的持続性を両立させる好事例といえます。制度開始に向けた準備が本格化する今、企業は自社の採用戦略を地域の観光政策と連動させて再構築することが求められています。地域経済の発展に貢献する人材の確保は、単なる雇用ではなく、社会的価値の創出にもつながる重要なミッションであるという認識を、あらためて持つ必要があるでしょう。

⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ

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