2025年8月5日
労務・人事ニュース
宿泊税200円で伊勢志摩国立公園の魅力を再構築、鳥羽市の地域雇用に直結する理由
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正看護師/企業・学校・保育園/非常勤・夜勤あり/残業少なめ
最終更新: 2025年8月4日 10:07
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「高給与」/准看護師・正看護師/介護施設/駅から近くて通いやすい
最終更新: 2025年8月3日 23:04
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「夜勤なし」/准看護師・正看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年8月3日 23:04
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「土日祝休み」/准看護師/グループホーム/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年8月3日 23:04
三重県鳥羽市「宿泊税」の新設(総務省)
三重県鳥羽市は、観光資源を持続的に活かしながら地域経済の基盤を強化するための新たな施策として、令和8年4月1日から宿泊税を導入する方針を正式に決定しました。これは、法定外目的税として制度化されたものであり、市内の宿泊施設を利用する旅行者に対し1人1泊200円を課税する内容となっています。この制度は、令和7年3月24日に鳥羽市議会で可決され、その後4月9日には総務大臣との協議が行われ、7月22日付で同意が得られたことにより、導入の準備が整ったものです。観光都市としての鳥羽市がさらに高みを目指すうえで、宿泊税は重要な役割を担うことになります。
対象となる施設は、市内の旅館業法に基づく旅館やホテル、簡易宿所、また住宅宿泊事業法の届け出を行った民泊施設など、幅広い形態の宿泊施設が含まれます。課税客体はこれらの施設への宿泊行為であり、納税義務者は宿泊者本人となります。徴収は特別徴収方式により行われ、宿泊施設側が宿泊料金とあわせて宿泊税を徴収し、市へ納付する形式となります。宿泊施設にとっては、宿泊料金の設定や会計処理において若干の負担が生じることになりますが、宿泊税の導入はすでに他自治体での導入実績も多く、制度として成熟しつつある点で一定の運用安定性が担保されています。
注目すべきは、鳥羽市がこの宿泊税によって平年度で約3.3億円という大規模な税収を見込んでいる点です。徴税コストも年間で約960万円と抑えられており、非常に効率のよい運用が期待されます。これにより得られる財源は、観光関連事業に戦略的に投資される予定であり、特に宿泊促進、観光インフラ整備、景観・地域資源の保全、観光関連団体の組織強化といった分野への配分が明示されています。観光客にとっての快適な滞在環境の整備や、伊勢志摩国立公園という国内外から注目される自然環境の保全に対して使われることで、鳥羽市の観光価値が一段と向上することが見込まれます。
他自治体の宿泊税制度と異なり、鳥羽市の制度には課税免除の特例規定が設けられていない点も特徴です。これは、すべての宿泊者に対して公平に税負担を求めるという考え方に基づいた制度設計であり、明確で分かりやすい運用ルールのもと、徴収の一貫性が保たれることが期待されています。宿泊者にとっては200円という小額でありながら、その積み重ねによって観光施策が強化されることに対する理解と納得が求められます。今後は、市として宿泊税の趣旨や使途について丁寧な情報発信を行うことが重要になるでしょう。
企業の採用担当者にとって注目すべき点は、宿泊税による観光関連事業の拡大に伴い、地域内での人材需要が急速に高まる可能性があるということです。観光客の満足度向上に関わる現場業務では、宿泊施設スタッフ、清掃員、調理担当者などの基本職種から、観光ガイド、多言語対応スタッフ、観光体験プランナー、交通・物流系のサービス提供者に至るまで、幅広い業種での採用活動が強化されると予測されます。また、景観保全や地域資源の利活用に関わる業務では、造園業、建設、エコツーリズム関連企業などにも新たな雇用ニーズが生まれる可能性が高まります。
さらに、観光関連団体の組織強化という観点から、事務局運営、財務、人材育成、広報、イベント企画運営など、バックオフィス系の人材へのニーズも拡大していくでしょう。こうした新たな人材需要に対応するため、企業側としても地域との連携強化や、地元高校・専門学校・大学との連携を通じた採用育成施策が求められる時代が到来しつつあります。
また、鳥羽市は伊勢志摩エリアに位置しており、周辺自治体と連携した広域的な観光政策が進んでいる地域でもあります。宿泊税によって得られた財源が、域内での相互交流を促進する交通施策や観光資源連携プロジェクトに使われることによって、さらに大きな観光経済圏の形成が期待されます。これにより、地域全体での観光需要が高まれば、それに呼応する形で雇用創出も加速するため、採用活動の計画的な展開が不可欠となります。
宿泊税の導入にあたっては、観光を単なる経済活動として捉えるのではなく、文化や自然、地域の誇りを次世代へと継承していくためのインフラと位置づける視点も重要です。特に鳥羽市では、伊勢湾の恵みによる豊かな食文化や、伝統的な漁業、海女文化など独自性の高い地域資源が数多く存在します。これらを観光資源として効果的に活かすことで、観光業と地元文化が共に発展し、地域に対する誇りをもった人材の育成にもつながります。
企業の人事戦略としては、このような観光・地域資源の活性化を前提とした新たな採用の可能性にいち早く対応することが求められます。求人においては、「地域の魅力を伝える仕事」「観光×自然保護」「地方創生に貢献する働き方」などのテーマを掲げることで、従来の枠にとらわれない人材層からの応募を得やすくなるかもしれません。地域課題を解決するための事業と、それに携わる人材の価値が高まる時代において、採用戦略にも地域経済の変化を敏感に反映させていく姿勢が問われています。
鳥羽市の宿泊税導入は、観光政策の中核を担う制度として位置づけられ、単なる財源確保ではなく、地域経済の構造的な強化と雇用創出の好循環を生み出す起点となり得ます。令和8年4月の施行に向けて、制度運用の整備と周知活動が本格化するなかで、地域内外の企業がいかにこの動きをチャンスとして捉え、自社の成長と地域との共栄を実現していくかが問われることになるでしょう。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ