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2025年7月24日

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常用労働者数3102万人、平均給与39万779円から読み解く大企業の採用環境の実情(毎月勤労統計調査地方調査 令和6年平均分結果概要)

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毎月勤労統計調査地方調査 令和6年平均分結果概要 表2 事業所規模30人以上 調査産業計(厚労省)

令和6年の「毎月勤労統計調査地方調査」における事業所規模30人以上の調査結果は、全国の労働環境や給与水準を把握するうえで非常に貴重なデータです。とりわけ人材の獲得や定着に苦慮する企業にとっては、このような地域ごとの統計情報が採用戦略を見直す材料となります。今回発表された年平均のデータには、労働者数や労働時間、給与水準といった基本的な労働実態に加え、所定内外の労働時間の内訳、出勤日数、特別給与の支給状況まで細かく示されています。

全国の常用労働者数は3,102万6,900人となっており、これは前年度に比べて一定の雇用安定が保たれていると評価できます。労働時間については、月あたりの総実労働時間が142.8時間で、そのうち所定内労働時間は131.1時間、所定外、いわゆる残業時間は11.7時間でした。また、平均出勤日数は17.9日となっており、全国的に月の勤務はおおよそ4週半にわたって安定的に行われている状況が読み取れます。これはフルタイムでの労働が基本となっている一方で、働きすぎには至らない程度の勤務実態が示唆される数字でもあります。

給与面では、全国平均で現金給与総額が397,789円、きまって支給される給与が315,351円、その中の所定内給与が290,654円、特別給与、つまり賞与や一時金などが82,438円という結果になりました。これらの数字から、給与構成の大部分が毎月安定して支給される基本的な報酬で占められており、企業側が安定した賃金制度を採用していることが伺えます。特別給与の支給も一定程度行われており、これは年2回の賞与などが継続的に行われている企業が多いことを示しています。

地域別に見ていくと、労働環境の違いがより鮮明になります。たとえば東京都では、常用労働者数が624万1,900人と圧倒的に多く、月間の総実労働時間は145.5時間と全国平均よりやや長く、残業時間にあたる所定外労働時間は13.3時間に達しています。これは都市部特有の業務集中や多様な産業構造に起因するもので、忙しさの中にも高い労働生産性が求められる状況を反映しています。その反面、給与水準は非常に高く、現金給与総額は50万5,379円、所定内給与も36万2,050円と、全国平均よりも10万円以上高い結果となっています。これらの数字は、首都圏で働くことの経済的なメリットと引き換えに、時間的・体力的負担がやや大きいことを示しています。

また、神奈川県でも同様の傾向が見られ、総実労働時間は138.6時間、所定外労働時間は12.5時間、現金給与総額は408,792円と、全国水準を上回る労働と報酬のバランスが確認されました。千葉県においても給与は391,699円と高水準で、出勤日数が17.8日と全国平均に近い点から、比較的安定した労働環境が整っていることが分かります。

一方、地方では給与水準に地域差がみられます。たとえば青森県の総実労働時間は149.2時間と非常に長く、出勤日数も19.3日と全国より1.4日も多い状況にありながら、現金給与総額は294,541円と、首都圏と比較すると10万円以上の差があります。これは、長時間労働が常態化しつつも報酬が追いついていない構造を示しており、採用面で不利に働く可能性も否めません。このような地域では、労働条件の見直しやインセンティブの強化、柔軟な働き方の導入など、企業側の積極的な対応が求められます。

さらに、地方都市においても特定の県ではバランスの取れた労働環境が見られるケースがあります。宮城県では総実労働時間が147.6時間、所定外労働時間が12.2時間とやや長めですが、現金給与総額は361,516円と全国平均に近く、給与の安定性や賞与の水準も良好です。また、岐阜県や長野県といった中部地方でも、総実労働時間が140時間台で給与水準が35万円を超えるなど、地方における優良な雇用条件のモデルとなる可能性があります。

採用担当者がこのデータから読み取るべきポイントは、単に給与の高低だけでなく、労働時間とのバランス、出勤日数、そして所定外労働の割合など、働く人々の実際の負荷を正確に把握することです。たとえ給与が高くても、過剰な残業や休日出勤が常態化していれば、長期的な人材定着にはつながりにくく、結果的に採用コストの増大を招く可能性もあります。逆に、給与水準がやや低くても、労働時間が短く、ワークライフバランスのとれた環境を提供できる職場であれば、特定の層にとっては非常に魅力的な職場と映ることもあります。

また、特別給与の支給額は企業の業績に左右される面もありますが、平均して月給の20%前後を占めていることから、賞与制度を明示することが求職者への安心感につながります。特に新卒採用や中途採用においては、年収ベースでの給与提示が主流になりつつあるため、こうした一時金を含めた報酬制度の設計とその情報開示が重要な採用アピール要素となります。

企業の採用担当者は、このような労働実態データを基に、自社の労働条件が業界や地域でどのような位置にあるのかを定量的に把握することが必要です。その上で、必要に応じて制度や体制を見直すことで、より魅力的な職場環境を構築し、優秀な人材の確保と定着につなげることが可能になります。労働市場が多様化し、求職者の価値観が変化する中においては、こうした数値に裏打ちされた戦略が採用成功の鍵となるのです。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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