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2025年5月31日

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平均309,059円に上昇した給与水準から読み解く令和7年3月の賃金動向

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毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報(厚労省)

令和7年3月に厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によれば、日本全国の企業が直面する賃金・雇用動向にいくつかの顕著な変化が見られました。全体として名目賃金は前年同月比で2.3%増加し、平均給与は309,059円に達しています。事業所規模別で見ると、従業員30人以上の企業では347,260円と、やや高い水準を維持しています。一方で実質賃金は、物価上昇の影響を受けて1.8%の減少という結果となっており、現金給与の購買力が下がっていることが明らかになりました。

賃金構造の内訳に目を向けると、「きまって支給する給与」は1.4%増の282,931円、「所定内給与」は同じく1.4%増の263,102円でした。また、賞与や臨時手当などの「特別に支払われた給与」は14.5%増加しており、企業の業績回復や年度末の調整支給が反映された可能性があります。一般労働者では、現金給与総額が400,236円と2.9%増加し、所定内給与も2.0%増の335,898円となりました。一方、パートタイム労働者の給与も上昇傾向を示しており、平均で110,997円(2.5%増)、時間当たり賃金は4.0%増の1,378円に達しました。

業種別の分析では、最も顕著な伸びを見せたのは「鉱業・採石業等」で、現金給与総額が393,509円と前年同月比で35.1%の大幅増加を記録しました。また「金融業・保険業」でも9.7%の増加が見られ、平均給与は487,715円と非常に高水準に達しています。その他、「情報通信業」では4.3%、「製造業」では4.5%の増加があり、専門性やスキルの高い分野での人材確保に向けた報酬の引き上げが進んでいると考えられます。

一方、「運輸業・郵便業」や「建設業」などでは減少傾向が見られ、特に運輸業では3.2%のマイナス、建設業では1.1%の減少が報告されています。こうした業界では、依然として人手不足が深刻である一方で、賃金上昇に踏み切れない経営事情が背景にあると考えられます。

実質賃金の動向をみると、消費者物価指数(CPI)の影響を強く受けており、名目では増加しているものの購買力ベースでは下落しているのが実情です。たとえば、CPI(持家の帰属家賃を除く総合)が4.2%上昇している中、これを基にした実質賃金指数は85.9と前年比で1.8%のマイナスとなりました。また、CPI(総合)で調整した実質賃金も87.4と1.2%の減少でした。

共通事業所(前年同月にも調査された事業所)のデータを用いた場合も、名目賃金の上昇率は2.7%となっており、パートタイム労働者では2.4%の増加が確認されています。ただし、労働時間に関しては全体的に減少しており、総実労働時間は前年比で2.7%の減、所定内労働時間も2.6%の減少となっています。これは働き方改革や人材確保の難航によって、勤務時間の短縮が進んでいることを示しています。

なお、産業別に見ると「教育・学習支援業」では平均給与が344,701円と前年同月比で6.4%増加し、特に一般労働者においては8.0%増の465,536円という結果が出ています。また、医療・福祉分野では給与水準が287,183円と前年比3.9%増であり、依然として雇用が安定していることがうかがえます。この傾向は高齢化社会における福祉需要の拡大と密接に関連しており、今後もこの分野の人材ニーズは高まる見込みです。

特筆すべきは、パートタイム労働者の賃金上昇率が目立つ点です。時間当たり賃金は全体で4.0%増加しており、これは働き手の生活水準にとって重要な改善と言えるでしょう。ただし、勤務時間は平均で78.5時間と前年比で2.0%減少しており、フルタイムへの移行や労働時間確保の難しさが課題として残ります。

このような状況の中で、企業の採用担当者にとって重要なのは、賃金戦略を柔軟かつ効果的に設計することです。特にスキル人材や専門職への報酬強化は、企業競争力を高めるうえで欠かせません。また、労働時間の短縮傾向と賃金上昇のバランスをどう取るかも、人事制度全体を見直す契機となるでしょう。

この調査結果から得られる示唆は多岐にわたりますが、今後の採用市場や人材マネジメントの指針として、最新の動向を把握することは欠かせません。企業の成長には、人材確保とその定着が極めて重要であり、そのためには市場相場を反映した賃金設計と柔軟な働き方への対応が不可欠です。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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