2025年6月30日
労務・人事ニュース
年金支給停止基準が月62万円に引き上げ、2026年から高齢人材の活用が加速
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「駅チカ」/准看護師・正看護師/デイサービス/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年6月29日 22:37
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「駅チカ」/准看護師・正看護師/内科/クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年6月29日 22:37
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「時短勤務可」/正看護師/デイサービス/介護施設/駅から近くて通いやすい
最終更新: 2025年6月29日 22:37
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「時短勤務可」/正看護師/整形外科/内科/外科/病院
最終更新: 2025年6月29日 22:37
年金制度改正法が成立しました(厚労省)
令和7年6月13日、年金制度に関する重要な法改正が国会で成立しました。この法改正は、正式には「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」として提出され、急速に変化する日本の社会構造を背景に、年金制度を現代社会に適合させるための複数の施策を包含しています。超高齢社会を迎える日本において、年金制度の持続可能性と公平性を確保することは、国民生活の安定に直結する課題です。特に今回の改正は、働き方の多様化、男女格差の是正、家族形態の変化など、現代的な課題に対応する制度的な土台を築く内容であり、企業や従業員双方にとって大きな意味を持ちます。
まず注目されるのは、在職老齢年金制度の見直しです。これは年金を受給しながら働く高齢者にとって重要な制度ですが、これまでは収入が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止となる仕組みでした。具体的には、給与と年金額の合計が月50万円を超えると、超えた分の一部が支給停止となっていました。今回の改正では、この支給停止の基準額を月62万円に引き上げることが決まり、2026年4月から適用されます。この見直しにより、今後は約20万人の高齢者が年金の全額を受け取れるようになると見込まれており、労働意欲を損なうことなく高齢者が働き続けられる社会の実現に寄与するものです。高齢者の労働市場への参画が進めば、人手不足に悩む企業にとっても、経験豊かな人材を安定的に確保する好機となります。
次に大きな柱となるのが、遺族年金制度の見直しです。特に遺族厚生年金の男女格差を解消することを目的として、男女の受給要件の違いが段階的に廃止されることになりました。現在の制度では、夫が亡くなった場合には妻が比較的受給しやすい一方で、妻が亡くなった場合に夫が受給するには厳しい要件が課されています。このような制度設計は、かつての「男性が稼ぎ手、女性が専業主婦」という前提に基づいていますが、現代では共働き世帯が主流となっており、制度の見直しが強く求められていました。今回の改正では、2028年4月以降、20年かけて段階的にこの格差が是正され、男女問わず公平に遺族厚生年金が支給されるようになります。この変更は、家族構成が多様化する現代社会に対応したものであり、企業が福利厚生制度を設計する際にも、こうした公平性の視点を取り入れることが求められます。
また、年金の給付水準を底上げするための措置も講じられました。これは将来の基礎年金の給付水準が生活を支えるのに十分であるようにすることを目的としたもので、所得再分配機能を強化するという年金制度の基本的な役割に立ち返った取り組みです。高齢期における生活の不安を軽減し、必要最低限の生活を保障するという視点が、制度設計の根幹に据えられています。
さらに、標準報酬月額の上限引き上げも段階的に行われます。保険料や将来の年金額の計算に用いられるこの基準額は、2027年9月に月額65万円から68万円、2028年9月に71万円、2029年9月には75万円へと引き上げられます。これにより、高所得層も賃金に応じた保険料を負担することになり、年金制度の公平性が一層強化されると同時に、受け取る年金額も現役時代の収入に応じて増える設計となります。この変更は、役職者や専門職など年収の高い社員が多い企業にとっては、年金制度がより合理的なものとなる契機であり、報酬体系の見直しを検討する際の要素にもなり得ます。
加えて、私的年金制度に関しても重要な見直しが行われました。個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入年齢が現行の65歳未満から70歳未満へと引き上げられ、企業型確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出についても加入者が自らの判断で掛金を追加できるようになります。また、企業年金の運用情報の「見える化」が進められ、加入者が制度内容を理解しやすくなることが期待されています。これにより、企業は社員の将来設計に寄り添った年金制度を設けやすくなり、人材定着やエンゲージメント向上に寄与することができます。
こうした一連の年金制度改正は、企業の採用活動や人事戦略にとっても無関係ではありません。労働者が安心して長く働き続けられる制度が整備されることで、企業にとっても多様な人材を採用し、育成し、定着させるための基盤が強化されるからです。特に高齢者や女性、非正規雇用者といった、従来フル活用されてこなかった労働力が活躍できる制度が整うことで、企業の人材ポートフォリオにも大きな変化が生まれる可能性があります。従業員のライフプランに応じた柔軟な働き方を制度的に支える環境が整うことで、働く人にとっても魅力的な職場となり、企業価値の向上にもつながることでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ