労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 最低賃金引上げで生産性「伸びた」が41.0%、8,206社調査が示す中小企業の適応力

2025年6月3日

労務・人事ニュース

最低賃金引上げで生産性「伸びた」が41.0%、8,206社調査が示す中小企業の適応力

Sponsored by 求人ボックス

「最低賃金の引上げと企業行動に関する調査」結果 ―2021~2023年度の連続パネル調査を通じて―(JILPT)

令和6年5月23日、独立行政法人労働政策研究・研修機構は、調査シリーズ第255号として「最低賃金の引上げと企業行動に関する調査」の結果を公表しました。今回の報告は2021年度から2023年度までの3年間にわたり同一企業を対象に実施されたパネル調査で、企業が最低賃金引上げにどのように対応し、その影響がどのように表れているのかを詳細に分析したものです。調査対象は全国の中小企業を中心とした2万社で、最終的に有効回答を得たのは8,206社、うち3年連続で回答したパネル接続可能企業は2,549社に上りました。

調査結果によると、最低賃金引上げに対し何らかの対策を講じたと答えた企業は42.7%にのぼり、その中でも正社員の賃金を引き上げた企業が61.4%と最も多くなっています。さらに、製品やサービスの価格引上げを行った企業が49.2%、人件費以外のコスト削減を実施した企業が42.8%、非正社員の賃金引上げを行った企業が39.3%という結果も明らかになりました。これは、企業が単に賃金を上げるだけでなく、経営全体を見直し、収益性を保とうとする努力が多方面で展開されていることを示しています。

また、企業が行った取り組みの成果について尋ねたところ、労働者の1時間当たりの生産性や売上が「はっきりと伸びた」もしくは「伸びたと思う」と回答した企業は全体の41.0%に達しました。一方で、「低下した」との回答はわずか7.1%にとどまり、最低賃金の引上げが必ずしも企業の生産性や業績に悪影響を及ぼしていないことが分かりました。特に2021年度から2023年度にかけて「生産性が伸びた」とする企業の割合は約15ポイント上昇しており、企業が引上げに適応しつつある姿が浮かび上がります。

さらに、正社員の賃金決定に際して企業が重視する要素についての調査では、「職務(役割)」が49.0%と最も高く、次いで「自社の業績」(48.6%)、「経験年数」(47.7%)が続きました。これは、従来型の年功序列から脱却し、職務内容や貢献度に基づいた評価が進んでいることを示しています。一方、地域別の傾向を見ると、最低賃金が比較的低かった地域を含む新BランクやCランクでは、「地域の賃金相場」や「地域別最低賃金」を重視する企業が多く見られ、地域格差の影響が賃金決定に及んでいる実態も明らかとなりました。

また、パート・アルバイトの賃金決定に関する調査では、「地域別最低賃金」が51.1%と最も多く、正社員と比べて約30ポイント高い結果となりました。これは、非正規雇用において最低賃金が直接的な基準となっていることを示しています。特に新BランクやCランクといった賃金水準が比較的低い地域では、その割合がさらに高く、最低賃金の改定が地域雇用に与える影響の大きさを浮き彫りにしています。

この調査は、厚生労働省からの要請に基づき実施されたものであり、企業の経営戦略や雇用政策に関心を持つ採用担当者にとって非常に示唆に富んだ内容です。特に今後の採用活動において、賃金設計や人件費戦略、価格転嫁の可否など、複雑な経営判断を迫られる場面において、本調査の分析結果は有用な参考資料となることでしょう。人材確保が困難化する中で、賃金政策は単なるコストではなく、企業の競争力そのものを左右する要素であることが、今回の調査から改めて認識されます。

今後も最低賃金の引上げは継続的に議論されると見込まれ、それに対する企業の対応力が問われる時代が続くと考えられます。こうした背景を踏まえ、企業は地域ごとの特性を理解しながら、自社に適した賃金制度の構築を図る必要があります。賃金の適正な引上げは、従業員の満足度や定着率の向上、さらには企業全体の生産性向上にもつながる重要な要素であることを改めて確認できる内容となっています。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ