2025年6月21日
労務・人事ニュース
最大1.4mの嵩上げが必要に、港湾全体で取り組む「協働防護」ガイドラインを公表
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最終更新: 2025年6月20日 22:32
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海面上昇等に官民で対応する「協働防護」を推進 ~港湾管理者向け、港湾立地企業向けのガイドラインを公表~(国交省)
令和7年6月2日、国土交通省は、気候変動による海面上昇や高潮、津波などへの対策として、官民が連携して取り組む新たな枠組み「協働防護」の推進に向けた二つのガイドラインを発表しました。これらは、港湾に関わるすべての関係者が共通の目標をもとに一体となって防災・減災に取り組むための実務的な指針として活用されることが期待されています。
近年、南極やグリーンランドの氷の溶解、海水の熱膨張、さらには台風の強度増大により、世界各地の港湾が海面上昇や高潮といった深刻なリスクにさらされています。特に、2040年までの間には平均海面水位が約1メートル、潮位偏差が約0.4メートル上昇し、東京港などでは最大で約1.4メートルの嵩上げが必要とされています。これに対応するため、港湾ごとに地域特性を踏まえた協働的な対策が求められています。
今回策定された「協働防護計画作成ガイドライン(Ver.1.0)」は、主に港湾管理者を対象にしており、港湾法の改正により新たに制度化された協働防護の枠組みに基づき、関係者が協定により共通の防護目標を設定し、施設の嵩上げや防潮壁の設置といったハード対策を進める上での計画作成手順が詳述されています。ガイドラインでは、設計供用期間の初期段階で対策を施す「事前適応策」と、供用中に段階的に対応する「順応的適応策」の双方を含めて解説されており、気候変動による外力の経年変化を前提とした柔軟な設計思想が盛り込まれています。
また、民間企業向けには「港湾立地企業における気候変動リスク評価手法ガイドライン(Ver.1.0)」が公表されました。これは、気候関連の情報開示が国際的に義務化されつつある中で、特に港湾に立地する企業が高潮・津波などの浸水リスクにどう対応すべきかを示したもので、定性的なリスク評価から数値解析による詳細な評価方法まで、企業の対応段階に応じたアプローチが紹介されています。東証プライム市場においては、2022年からTCFD提言に基づく情報開示が実質義務化されており、港湾立地企業の多くもこれに準拠した情報公開を進めています。
国土交通省では、令和7年4月に港湾法を改正し、「協働防護計画」や「協働防護協議会」などの制度を正式に導入しました。加えて、協働防護計画の作成に関する費用支援制度や、民間が所有する護岸に対する税制特例措置も創設され、官民が実効的に連携できる体制が整備されつつあります。これにより、従来のように一部の施設だけが対応しても全体として効果が発揮されないといった問題に対して、関係者全体が足並みをそろえて対応する仕組みが確立されます。
港湾は、我が国の物流や産業の中心を担う重要な社会インフラであり、複数の企業や自治体が密集する環境にあります。そのため、一部の護岸が対策不十分であれば、港湾全体に被害が及び、物流が寸断されるリスクもあります。こうした課題に対して「協働防護」は、関係者間の合意形成を通じて港湾全体の強靱性を高める戦略的なアプローチといえます。
将来的には、2040年をひとつの節目とし、それ以降のさらなる気候変動への適応として追加の工事や設計変更が見込まれています。このような対応を可能にするには、技術的・財政的な裏付けはもちろん、民間企業の積極的な参画と持続可能な事業継続計画(BCP)の見直しが不可欠です。TCFDやISSBといった国際基準に基づいた情報開示もまた、企業の透明性を高め、社会的信頼を獲得するうえでますます重要となっています。
このように、今回公表された2つのガイドラインは、港湾の気候変動適応に関わるあらゆる関係者にとって、実務的かつ戦略的に極めて有用な指針となるものです。今後の実装にあたっては、官民の枠を超えた協力と長期的な視点が求められます。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ