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2025年4月11日

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木造建築物の低層住宅木造率83.9%、採用現場に求められる木材スキルとは(令和6年度)

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「令和6年度 建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」等について(林野庁)

2024年度、政府による脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、木材の建築利用を促進する政策が進展を見せている。農林水産省が中心となり、関係省庁と連携して設置された木材利用促進本部では、建築物における木材利用の実施状況を定期的にまとめており、このたび令和6年度の最新の取りまとめが決定された。木材の利用は、単に伝統的資源の活用にとどまらず、二酸化炭素の固定・排出削減に貢献するカーボンニュートラルの鍵ともなり得るため、その政策的意義は非常に高い。

この取りまとめの根拠法となるのが、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」、通称「都市の木造化推進法」である。この法律では、木材の利用を積極的に進めるための基本方針を定め、それに沿った各種施策の進捗を毎年度ごとに確認・公表する仕組みとなっている。

今回の報告によれば、木造化・木質化を推進する支援体制として、「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」が設置され、令和6年1月から12月の間に156件の相談対応が実施された。これは事業者や地方自治体、建築設計者からの具体的な課題や制度に関する質問に対応する窓口として機能しており、支援体制が実務レベルで着実に定着してきたことを示している。

また、木材利用促進協定の締結状況については、国と地方公共団体を合わせて合計180件に達し、令和6年だけでも125,000立方メートルの木材が建築用途として使用されたことが報告されている。これは、協定に基づく公共建築物等における木材の使用量としては過去最大規模に近く、今後の木材需要予測にも重要な影響を与える数値である。

10月8日の「木材利用促進の日」を含む同月には、全国で301件におよぶ普及啓発活動が行われた。中でも「ウッドデザイン賞2024」では、農林水産大臣賞を含む複数の大臣賞が交付され、木材利用を通じた優れた建築・製品デザインが表彰された。こうした表彰制度は、木材利用の社会的価値を再認識する機会を提供するとともに、民間の取組をさらに活性化させる重要な契機となっている。

建築物の木造化の進捗状況について具体的な数字を見ると、低層住宅(3階建て以下)の木造率は83.9%と依然として高い水準を維持している。一方で、低層非住宅の木造率は15.5%にとどまり、中高層建築物の木造率は住宅・非住宅ともに0.1%以下と極めて低位である。ただし、中高層建築物における木造化の床面積は過去10年間で着実に増加しており、建築技術の進歩や法制度の柔軟化により、今後の伸展が期待されている分野といえる。

国が整備する公共建築物における木材利用の目標達成状況も良好である。令和5年度においては、木造化の対象となる公共建築物のうち79棟が木造化され、合同検証チームの評価において木造化率100%という結果が示された。国自らが木材利用を先導的に実施することにより、地方自治体や民間事業者に対してもモデル的役割を果たしているといえる。

さらに農林水産省では、自らが整備する庁舎や関係機関の施設についても積極的な木材利用を進めている。令和5年度の実績としては、19棟の木造化、29棟の内装木質化が実施されており、また補助対象施設では16棟の木造化、20棟の内装木質化が行われた。これは単なる施設整備にとどまらず、木材の需給安定化、林業の活性化、そして持続可能な資材調達のモデル構築に繋がる取り組みでもある。

このような国と関係省庁の主導による木材利用促進の取り組みは、サプライチェーン全体にわたって人材需要にも大きな影響を与える。木材を扱う現場では、構造設計、加工、施工に至るまで専門性が求められる場面が多く、建築分野の人材確保が今後の拡大に向けたカギとなる。特に、中高層木造建築の普及を進めるには、耐火性や構造安全性を踏まえた高度な設計能力を持つ技術者の存在が不可欠であり、企業にとっては新たな技術領域への対応と人材育成の計画が求められる。

また、自治体や教育機関、公共施設などでは、木材の利用方針を明確にし、地域材の活用や地元林業との連携によって地域経済の循環にも貢献している。企業にとっても、木材の調達先や施工体制において地域性を活かしたパートナーシップを築くことで、持続可能な社会の実現に貢献しつつ、社会的責任(CSR)や環境配慮の側面でも評価を得ることができる。

今回の取りまとめは、単に木材の使用量や施設数を示すだけでなく、日本全体として脱炭素社会の実現に向けて、どのような政策的意図と現実的な進捗があるのかを読み解くための重要な手がかりとなる。持続可能な建築、そして環境と調和した資材利用が今後の社会標準となる中、企業の採用戦略や人材育成にもその視点を取り込むことが、次代の競争力につながるに違いない。

⇒ 詳しくは林野庁のWEBサイトへ

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