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2025年6月17日

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栃木県の求人倍率1.28倍、令和7年4月に企業が取るべき採用戦略とは

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足利市で1.09倍の求人倍率を背景に考える地方の人材採用手法

令和7年4月における栃木県の有効求人倍率は1.28倍となり、前月と同水準を維持しています。この数値は全国平均の1.26倍をやや上回っており、県内の労働市場における求人数の方が求職者数を上回る、いわゆる売り手市場の状態が続いていることを示しています。つまり、企業側が積極的に人材を探しているにもかかわらず、それに見合った人材が十分に供給されていない構造的な課題が存在しているといえます。企業の採用担当者は、こうした環境に即した採用戦略を立案・実行しなければ、必要な人材の確保はますます困難になります。

求人側の状況を見ると、令和7年4月の栃木県内における新規求人数は17,281人で、前年同月比で6.3%の増加となっています。特に製造業では前年同月比9.9%増、医療・福祉分野では6.7%増と、引き続き人手不足が深刻な業種での求人が目立ちます。製造業は本県の主要産業であることから、安定的な人材供給が地域経済の根幹を支えているといっても過言ではありません。一方で、卸売業・小売業やサービス業の一部では求人数が減少に転じており、業種ごとの人材ニーズに明確な差が出始めています。

一方で、新規求職者数は前年同月比1.0%の減少で、特に若年層の動きが鈍い傾向にあります。この背景には、転職市場の過熱や他県への流出、さらには新卒者の都市部志向などが挙げられます。つまり、求人は増えているが、求職者が追いついていない状況であり、企業はより戦略的に「人材に選ばれる工夫」が必要とされています。

企業の採用担当者が今、最も重視すべきは「求人情報の質の向上」です。単に労働条件を列挙するだけの求人票では、求職者の心には響きません。仕事内容を具体的に記載し、1日の業務の流れ、社内の雰囲気、教育体制、キャリアパス、働き方の柔軟性など、働く姿をイメージしやすい情報をしっかりと記載することで、応募へのハードルを下げることができます。特に、未経験者や若年層に対しては、「どのように成長できるのか」を具体的に示すことが、応募動機の形成につながります。

また、栃木県内でも地域別に求人倍率の格差があります。たとえば宇都宮市や小山市では1.4倍を超える高い求人倍率を記録しており、県内の中でも人材の取り合いが激化しているエリアといえます。一方で、那須塩原市や足利市などでは1.1倍前後と、相対的に採用のハードルがやや緩やかな地域も見受けられます。企業はこうした地域差を踏まえ、勤務地を柔軟に設定したり、通勤支援を強化したりすることで、より多くの求職者にアプローチできる体制を整える必要があります。

特筆すべきは、正社員有効求人倍率が1.03倍となり、前年同月比で0.01ポイント上昇している点です。この数値からも、求職者が正規雇用を強く希望していることが読み取れます。短期的な人手補充ではなく、長期的なキャリア形成が可能な職場環境を整えることで、安定を求める層からの関心を集めやすくなります。そのためには、福利厚生の充実、評価制度の明確化、社内教育の体系化など、採用後のフォローアップ体制までを含めた戦略が不可欠です。

また、高年齢層の雇用にも目を向ける必要があります。65歳以上の求職者数が前年同月比で4.1%増加しており、再雇用や生涯現役を望む人々が増えていることが分かります。こうした層は豊富な職務経験を有しており、短時間勤務や補助業務といった形で十分に戦力化が可能です。企業は、高年齢者でも働きやすい職場環境を提供することで、人手不足の一端を補うことができるでしょう。これには、安全面や作業負担の軽減だけでなく、就業時間の調整や通勤の利便性の確保など、きめ細やかな対応が求められます。

離職理由に関するデータを見ると、依然として自己都合退職が多く、職場とのミスマッチが課題となっています。採用の際に過度な理想像を描かせないよう、現実的な職務内容と期待される役割を明確に伝える努力が必要です。また、入社後のギャップを埋めるためには、初期研修の充実やメンター制度の導入が効果的です。特に中小企業では、人間関係が働きやすさを大きく左右するため、現場の雰囲気やチームの人間関係を丁寧に伝えることも有効です。

採用活動の広報手段も多様化しています。ハローワークや求人サイトに加えて、自社のホームページやSNSを通じて職場の魅力を発信する企業も増えています。働く人の声や日々の業務風景を発信することで、リアリティのある情報が求職者に届き、応募の後押しとなります。また、企業の社会貢献活動や地域連携の取り組みなど、価値観に共感されやすい情報を発信することも重要です。若年層は特に、給与や待遇以上に「働く意味」を重視する傾向があるため、自社の理念やミッションを積極的に伝えることが、採用競争において優位に立つためのポイントとなります。

このように、求人倍率1.28倍という一見わずかな数字の差が、実際の採用活動においては大きな影響を与える現実があります。採用の成功は偶然ではなく、情報収集と改善の積み重ねにより初めて実現するものです。栃木労働局が毎月発表する雇用統計は、地域の動向を知るうえで極めて重要な資料であり、採用活動の方針を見直す際の羅針盤として活用することができます。データを活用し、自社の強みと弱みを客観的に把握したうえで、時代に即した採用戦略を講じていくことが、企業にとっての持続的な成長につながるのです。

⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ

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