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2025年4月8日

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死亡災害が前年比6.9%増、93人が犠牲に――労働安全対策の再点検が急務に(令和7年 労働災害発生状況 3月速報値)

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令和7年における労働災害発生状況について(3月速報値)(厚労省)

令和7年における労働災害の発生状況が明らかとなり、企業の安全管理体制に対する一層の見直しが求められる内容となっている。厚生労働省の速報によると、令和7年1月から2月末までの期間に報告された労働災害のうち、死亡者数は全国で93人に達し、前年同期と比べて6人増加し、率にして6.9%の上昇が見られた。これは単なる数字の増減にとどまらず、業種別や事故の型別に見た場合の傾向が、企業のリスク管理に対して具体的な課題を突き付けるものである。

死亡災害を業種別に見ると、建設業が最も多く28人となり、前年より1人多い。依然として建設現場での安全確保の難しさが浮き彫りとなった。一方で、製造業では14人と、前年から6人減少しており、30%もの改善が見られた点は注目に値する。ただし、林業における死亡者数は前年の3人から7人へと急増し、増加率は驚くべき133.3%に達した。この結果は、林業が依然として高リスク産業であることを再認識させるものである。さらに、陸上貨物運送業でも17人が亡くなり、前年より4人増え、30.8%の上昇を記録。加えて、第三次産業においても23人が命を落とし、前年より4人多く、21.1%の増加となった。これらのデータは、従来「低リスク」と考えられていた業種であっても、事故のリスクが決して軽視できないことを物語っている。

事故の発生パターンを見ると、最も多かったのが墜落・転落による事故で29人が死亡。これは前年より3人増加し、11.5%の上昇であった。作業高所での安全管理や足場の不備が想定される。また、交通事故による死亡者も前年の10人から18人へと増え、増加率は80%と非常に高い。これは、特に運送業や外回り業務のある業種における安全運転教育の必要性を示唆している。さらに、激突されによる死亡も14人と、前年より6人多く、75%もの増加が見られた。作業現場での人と機械の接触事故、フォークリフトや車両による巻き込みなどが想定される。

一方、死亡には至らないものの、休業4日以上を要する死傷者も12,512人と前年から266人増え、2.2%の上昇となった。これは、企業にとって生産性の低下や労務コストの増加を招く重大な経営リスクであり、決して軽視できないデータである。業種別では、製造業における死傷者数が2,638人と最も多く、前年からはわずかに3人減少。建設業では1,302人と、こちらも前年より19人減っており、1.4%の減少が確認された。陸上貨物運送業では1,621人で11人減となり、わずかではあるが改善が見られる。これに対し、第三次産業では6,117人と、前年から299人増え、5.1%の増加。高齢者やパート・アルバイトの多いサービス業における労災リスクが高まっている可能性がある。

事故の種類別では、最も多かったのが「転倒」で4,367人にのぼり、前年より541人増加し、14.1%の上昇となった。特に小売業や介護分野など、床の状況や利用者対応が求められる現場でのリスクが大きいと考えられる。次いで「墜落・転落」が1,953人で、前年より26人減少したが、それでも依然として高水準を維持している。「動作の反動・無理な動作」による死傷者は1,421人で、こちらは前年より104人減少し、6.8%の改善が見られた。体の動きに起因する負荷や腰痛、肩の痛みなどの職業性疾病の予防策が一定の成果を上げていることを示唆している。

今回の速報値は、令和7年1月1日から2月28日までに発生し、3月7日までに報告があった労働災害を対象としており、新型コロナウイルス感染症による災害は除外されている。したがって、今回示されたデータは主に現場での物理的な災害に限定されている点も重要である。企業にとって、今回の報告は単なる統計ではなく、具体的な安全対策の見直しにつなげるための実践的な材料である。安全教育の強化、作業マニュアルの見直し、現場巡視の徹底、さらにはICTやAIを活用した予防策の導入など、多角的なアプローチが求められる時代となった。

近年では、働き方改革の進展により、多様な雇用形態や柔軟な労働時間制度が広がっているが、それに伴い従業員の安全確保も一層複雑化している。正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員といった非正規労働者への安全配慮も重要となっており、企業の安全衛生管理体制がそのまま雇用の質と信頼性を左右する要因となる。特に高齢化社会においては、身体機能が低下した労働者への対応も不可欠であり、安全対策と健康支援の両立が必要である。企業が持続的に成長するためには、従業員一人ひとりの安全と健康を守るという「人への投資」が、最も確実な生産性向上策であるといっても過言ではない。

このような状況を踏まえ、経営者や人事・労務担当者にとって、労働災害の発生傾向を的確に把握し、自社におけるリスクを「見える化」することが喫緊の課題となっている。事故が起きてからの対応ではなく、起こる前の予防こそが、企業価値を守り、従業員の安心を確保する鍵となる。今後も厚生労働省による定期的な報告が予定されており、それを基にした迅速な対応と柔軟な体制構築が企業の成長戦略と直結していくことだろう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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