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2025年5月3日

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水素エンジンRTGの実証開始、CO2削減と同時に広がる新技術人材の採用ニーズ

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港湾のカーボンニュートラル化に向け、世界初実証 ~水素エンジンで稼働する荷役機械の現地稼働実証を開始~(国交省)

令和7年4月17日、国土交通省は港湾分野における脱炭素化を一層推進するため、神戸港にて水素エンジンを用いた荷役機械の現地稼働実証を開始したことを発表しました。この取り組みは、2050年カーボンニュートラル実現に向けて国が進めている「カーボンニュートラルポート(CNP)」の形成の一環であり、世界で初めてとなる荷役機械への水素燃料導入実証として、大きな注目を集めています。特に、産業インフラの中でもエネルギー消費量が多く、温室効果ガスの排出源とされる港湾ターミナルでの先進的な試みは、今後の脱炭素社会構築に向けた象徴的なステップといえるでしょう。

今回実証の対象となったのは、神戸港ポートアイランド第2期地区PC15~17に配備されたタイヤ式門型クレーン(RTG:Rubber Tired Gantry crane)であり、これまでディーゼルエンジン発電機によって稼働していた機械に対し、水素エンジン発電機への換装が令和6年度末に完了しました。令和7年度からは水素の充填および実際の荷役作業への適用を含む現地稼働実証が開始され、同年度を通じてデータの取得・分析が行われます。その成果を踏まえて、令和7年度から令和8年度にかけては、港湾施設の技術基準の見直しに向けた具体的な検討が始まる予定となっており、制度面からも水素活用を推進する枠組みが整備される計画です。

この実証事業は、国土交通省港湾局産業港湾課および近畿地方整備局を中心に進められており、現地調整や高度利用に関する連携は、阪神国際港湾株式会社や複数の民間事業者との協働によって実現しています。特に、水素充填に関わる技術支援には岩谷産業が関与し、RTGの換装については商船港運が機材提供を行っています。これにより、技術の確かさと安全性の両立を図りつつ、実運用に耐えうる実績を積み重ねることが目的とされています。

現在、日本の港湾ではディーゼルエンジンを用いた荷役機械が主流であり、港湾全体としての脱炭素化を進めるうえで最大の課題の一つとされています。とりわけ、コンテナターミナルにおいては、輸送効率を高めるために24時間体制で機械が稼働することが多く、排出量の削減が喫緊の課題となっています。このような背景のもと、水素エネルギーというクリーンな代替燃料を導入することは、単なるCO2排出削減にとどまらず、将来的には再生可能エネルギー由来の水素を利用することで、エネルギーの地産地消やエネルギー自立にも貢献する可能性があります。

実証事業の意義は、環境負荷軽減という面だけでなく、今後の雇用や人材戦略においても無視できないインパクトを持っています。まず、港湾運営や機械保守に携わる従業員に対し、新たな技術への適応力が求められるようになり、教育・訓練の再設計が必要となります。水素に関する基本的な知識だけでなく、安全管理、設備保守、充填手順など、従来にはなかった技能が新たに加わることから、企業側としては人材育成に対する戦略を再構築する必要が出てきます。加えて、水素関連技術に明るいエンジニアやメンテナンス技術者の採用ニーズが高まることは確実であり、企業の採用担当者にとっても今後の職種設計や採用基準の見直しが求められる場面が増えることになるでしょう。

また、国の支援を背景にしている今回のような実証プロジェクトは、長期的に見れば新たな市場の創出にもつながり、多くの関連企業にとってビジネス機会の拡大を意味します。水素燃料の製造・供給、機材の製造・保守、さらには水素を活用した新たな港湾オペレーションの構築など、様々な業種に連携のチャンスが生まれることでしょう。その中で、企業が競争力を維持・向上させるためには、必要な人材の確保と育成が最優先課題となります。とくに、理系出身者やエネルギー・環境分野での実務経験を持つ人材への需要は今後ますます高まり、専門人材の採用競争が激化することが予想されます。

さらに、CNP構想の拡大により、脱炭素を軸とした港湾経営が全国の主要港へと広がれば、地方港湾における高度人材の配置や地域経済への波及効果も期待できます。これは、地域に根ざした企業にとっては、都市圏に流出しがちだった若年層や専門人材を地元に引き留めるチャンスとなり、地方創生にも直結する戦略として注目されます。

このように、水素エンジンを用いた荷役機械の実証は、単なる技術検証にとどまらず、日本の脱炭素社会の基盤整備、人材市場の再構築、産業競争力の向上といった複数の視点からも大きな意味を持つ取り組みです。企業の採用担当者にとっては、時代の変化を先取りし、必要とされるスキルセットや職種の変化を見極めた柔軟な人材戦略がますます求められていくことになります。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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