2025年8月19日
労務・人事ニュース
求人倍率1.16倍となった2025年6月栃木県、採用と地域戦略の接点とは
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労働市場のようす(令和7年6月の求人・求職の取扱状況)(栃木労働局)
この記事の概要
2025年6月の栃木県における有効求人倍率は1.16倍で、前月より0.03ポイントの低下が見られました。求人数が減少し、求職者数が増加する中で、採用市場には足踏みの傾向が見られています。
2025年6月、栃木県の労働市場には慎重な動きが見受けられます。有効求人倍率は1.16倍となり、前月比で0.03ポイントの下落という結果となりました。この数値は全国順位で33位に位置しており、全国平均と比較しても決して高水準とは言い難い状況です。加えて、有効求人数が1.1%の減少、有効求職者数が1.0%の増加と、雇用需給のバランスに小さな変化が起きています。採用を検討している企業にとって、これは一つの警鐘と受け取るべきでしょう。つまり、これまでのように人材が容易に確保できる環境ではなくなりつつあるということを意味しています。
特に注目すべきは、新規求人倍率の動向です。こちらは2.00倍で前月から0.02ポイント上昇しているものの、新規求人数自体は前年同月比で1.1%の減少と2か月連続でマイナスとなっています。これは、企業側が新たな人材募集に慎重な姿勢を取り始めていることの表れであり、景気や原材料費の高騰、物価上昇などの外的要因が人件費の抑制に影響を及ぼしている可能性があると読み取れます。一方で、新規求職者数は前年同月比で3.0%の増加となっており、働く意欲は継続的に高まっていることがうかがえます。
正社員に限った求人倍率は1.03倍で、こちらも前月よりわずかに下回っています。正社員として安定した職を求める動きは依然強く、非正規からの転換を希望する声も多い中、企業としては正社員求人の打ち出し方や待遇の見直し、さらには育成制度の整備に注力すべき段階にあります。単に人材を募集するだけでなく、その人材をいかに育て、いかに定着させるかという点に視点を移さなければ、今後の人手不足に拍車がかかることになります。
産業別に見た新規求人の動きにも特徴があります。建設業は前年同月比で4.2%の増加となっており、公共投資やインフラ整備の影響が感じられる結果です。また、医療・福祉分野では7.5%の増加、サービス業(他に分類されないもの)でも18.6%の増加と、人手を必要とする分野での求人は引き続き強い傾向が見られます。反面、製造業では11.2%の減少、卸売業・小売業は8.3%減、宿泊・飲食サービス業に至っては21.3%の大幅な減少が確認されており、業種によっては採用そのものを縮小する傾向にあります。このことは、採用担当者が業界全体の流れや先行きを見据えたうえで、自社の採用計画を柔軟に設計していく必要があることを示しています。
雇用保険に関する指標からも、現在の労働市場の一端が浮かび上がります。受給資格決定件数は前年同月比で10.7%増加、受給者実人員も7.2%増加と、離職者が増加している状況がうかがえます。このような変化に対して企業がとるべき対応は、離職防止策の強化と従業員満足度の向上に尽きます。適切な人事評価制度の導入、ワークライフバランスへの配慮、キャリア形成支援など、従業員の働きがいを高める仕組みづくりが求められています。
さらに見逃せないのは、職場の魅力をどのように伝えるかという点です。求職者の多くは、求人票の内容だけでなく、企業のホームページ、SNS、口コミなど多様な情報源を通じて企業を評価しています。そのため、採用広報の質と戦略性が、応募数や採用率に直結する時代に入っています。自社の価値観や社風を的確に伝え、働くイメージを鮮明に描いてもらうことが、採用競争において他社と差別化を図る鍵となるのです。
一方で、採用活動の場は都市部に限らず、地方にも広がりを見せています。栃木県のように首都圏に隣接しながらも自然と生活環境に恵まれた地域では、UターンやIターン希望者からの注目も高まっています。こうした層に向けた情報発信や地域の住みやすさのPRは、単なる採用活動の一環ではなく、企業と地域の持続可能な発展にもつながる施策です。特に家族を持つ世代や生活コストの見直しを考える層に対しては、栃木県の地理的な利点や生活環境の良さをアピールすることで、首都圏との競争にも十分立ち向かうことが可能です。
総合的に見て、2025年6月時点の栃木県の雇用情勢は大きくは揺らいでいないものの、採用市場における微細な変化は確実に進行しています。企業の採用担当者には、単なる求人票の発信にとどまらず、労働市場の構造的な動きや求職者のニーズを的確に捉えた対応が求められます。そのためには、データに基づいた戦略的判断、業種ごとの特徴を踏まえた個別対応、そして自社の働く魅力を具体的に伝える力が、これまで以上に重要となるでしょう。
この記事の要点
- 2025年6月栃木県の有効求人倍率は1.16倍で前月より0.03ポイント低下
- 新規求人数は減少する一方で求職者数は増加傾向
- 医療・福祉、建設業などでは求人が増加傾向にある
- 製造業や宿泊・飲食業では求人が大幅に減少し採用抑制の動き
- 離職者増加の傾向にあり、定着支援と満足度向上施策が重要
- 採用広報の質と一貫性が応募者の判断材料として重視される
- Uターン・Iターン層の獲得には地域の生活環境や利便性の発信が鍵
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ