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2025年7月23日

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海外在住日本人71万人に影響、外国年金の生存証明手続をめぐる全国348市区町村の実態調査

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外国年金受給者の生存証明手続の円滑化に関する調査 <結果に基づく通知>(総務省)

令和7年7月に総務省行政評価局が取りまとめた調査報告書により、外国年金受給者に対する生存証明手続の現状と課題が明らかとなりました。現在、外国で就労し現地の年金制度に加入し、その後日本に帰国してから年金を受給する日本人は増加傾向にあります。背景には、令和5年時点で日本企業の海外拠点が81,969か所に達し、海外で生活する日本人は約71万人に上るという実情があります。こうした動きに伴い、外国年金受給者の数も増え、その生存証明手続をめぐる課題が浮き彫りとなっています。

生存証明手続とは、外国年金を継続して受給するために、定期的に受給者本人が生存していることを証明し、各国の年金機関に提出する必要があるものです。具体的には、受給者が必要事項を記入した「生存証明書」に第三者の署名や公印を得た上で、郵送やオンラインで提出します。しかしこの手続が、市区町村や受給者に大きな負担を与えていることが明らかになりました。

調査によると、25か国のうち20か国では、生存証明の際に第三者の認証が必要とされています。これらの国のうち、イギリスやフランス、ドイツ、オーストリアなど10か国では、日本国内の市区町村による認証が可能とされています。にもかかわらず、1,253市区町村から得られた回答によると、実際に認証を求められた市区町村は348か所にとどまり、その対応方針にもバラつきがあります。具体的には、認証を行う方針を示したのは311市区町村(約89%)であり、そのうち約53%が「住民票の記載」と「本人確認」をもって生存を判断していると回答しました。一方、全く認証を行わない方針を示した市区町村も37か所あり、対応の統一がなされていない状況です。

また、生存証明書の認証を求められた件数の内訳を見ると、令和4年度から5年度までの2年間で、1~5件とする市区町村が約71%と最も多く、一方で10件を超える市区町村も約10%存在していました。国別では、最も多く認証を求められたのがフランスで197市区町村、次いでドイツ105、ベルギー90の順でした。これらの国に共通するのは、年金手続の一部において第三者認証が強く求められている点であり、今後さらに市区町村への負担が増すことが予想されます。

市区町村にとって特に大きな課題は、証明書が外国語のみで記載されている場合の対応です。調査に回答した市区町村のうち約26%が、翻訳の負担に対する懸念を示しており、自力での翻訳が難しいケースや、翻訳内容の正確性に不安を感じているとの声が多数挙がっています。さらに、情報セキュリティの観点から、外部翻訳アプリの使用を控える市区町村もあり、翻訳作業がボトルネックになっている状況が明確になりました。

ローマ字で記載された生存証明書についても対応が分かれており、住民票が漢字で記載されているために認証ができないとする市区町村がある一方で、本人が提示したパスポートやふりがなを用いて認証している自治体もあります。令和7年5月26日以降、住民票に氏名のふりがなが記載されるようになったことは、この課題の一部解消に寄与するものと考えられますが、依然として自治体ごとの対応に差があります。

市区町村からは「住民票の写しを提出する方法に統一してほしい」、「認証項目を住民票記載事項のみに限定してほしい」、「国から公式な見解を示してほしい」といった要望が数多く寄せられています。こうした現場の声を踏まえ、調査報告書では、厚生労働省が各国の年金運営機関との間で協定を通じて、認証の代替方法の導入や、ビデオ通話による本人確認の拡充を働きかけることの重要性が指摘されています。

実際に、一部の国では柔軟な対応が進んでいます。たとえばフランスでは、生存証明書の提出に住民票の写しを添付することが認められており、翻訳は不要とされています。ベルギーでは、ビデオ通話による本人確認が可能となっており、遠方に住む外国年金受給者の負担軽減が図られています。このような取組みが、外国年金受給者の利便性向上のみならず、市区町村の事務負担の軽減にも直結していることは明白です。

最後に、報告書では情報提供の充実についても提言がなされています。具体的には、外国年金の生存証明書に関して、市区町村職員が容易に理解できるよう、証明書の様式や日本語訳を厚生労働省または日本年金機構のウェブサイトで公表することが望ましいとされています。現時点で日本語訳を提供しているのはチェコの事例のみであり、他国への対応も急務といえるでしょう。

このように、外国年金受給における生存証明手続は、制度の複雑さと実務上の課題が複合的に絡み合っており、今後の円滑な対応のためには、関係省庁と外国政府、地方自治体が連携し、柔軟で効率的な仕組みの構築が求められます。

⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ

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