2025年5月9日
労務・人事ニュース
発電分野で旧一電がシェア68%、競争促進へ向けた課題とは?
- 「夜勤なし」/正看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年5月8日 22:32
- 「駅チカ」/准看護師/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年5月8日 22:32
- 看護師/2025年5月8日更新
最終更新: 2025年5月8日 03:34
- 「夜勤なし」/正看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年5月8日 22:32
(令和7年4月25日)電力分野における実態調査(発電・小売分野)について(公正取引委員会)
公正取引委員会は、令和7年4月25日に「電力分野における実態調査(発電・小売分野)」に関する報告書を公表しました。この調査は、電力市場における競争環境の現状と課題を明らかにし、今後の政策や規制の在り方を検討するために行われたものです。これまでにも公正取引委員会は平成24年9月に「電力市場における競争の在り方について」と題する報告書を、また平成30年2月には「競争的な電力・ガス市場研究会」における意見表明を行っており、電力市場における競争促進に一貫して取り組んできました。しかし近年、脱炭素社会の実現に向けた動きやデジタル技術の進展により、電力市場を取り巻く環境が大きく変化しています。
とりわけ、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、電源の非化石化と再生可能エネルギーの主力電源化が求められている中、安定的な電力供給をどう確保するかが重要な課題となっています。加えて、LNGなど燃料価格の高騰を受け、卸電力市場価格が大幅に上昇したことや、電力需給の逼迫が発生し、小売分野では新電力と呼ばれる事業者の撤退が相次ぎました。こうした背景から、公正取引委員会は改めて発電分野と小売分野を中心に実態調査を行い、今回その結果を取りまとめました。
今回の調査では、旧一般電気事業者12社、一般送配電事業者9社、新電力や新電力系発電事業者9社に対してヒアリングを実施し、発電分野と小売分野それぞれの市場構造や競争環境を詳細に把握しました。その結果、令和6年3月時点で総発電設備容量約2.65億kWのうち旧一般電気事業者が68.0%を占め、また総発電電力量約8264億kWhのうち68.1%を旧一般電気事業者が占めていることが分かりました。このデータから、発電分野において依然として旧一電が高いシェアを持っていることが明らかとなっています。
また、小売分野においても、総販売量約702億kWhのうち旧一電グループが82.7%を占めており、新電力が占める割合は17.3%に留まっています。この結果は、小売自由化が進んだとはいえ、未だに市場支配力に大きな偏りがあることを示しています。公正取引委員会は、こうした市場構造が需要家にとっての選択肢の狭まりや価格の硬直化を招く懸念があるとし、競争環境の更なる整備が不可欠であると指摘しています。
調査では特に、容量市場への参入における課題も取り上げられています。現状では火力発電等の安定電源とディマンドレスポンス(DR)等の発動指令電源の組み合わせのみが認められていますが、再生可能エネルギーと蓄電池の併設による組み合わせは、技術的課題を理由に認められていません。しかし海外では、再エネ併設型蓄電池の容量市場への参加が認められている事例もあり、公正取引委員会は、将来的に技術的な制約が解決された場合には、これらの参入を認めるべきだと提言しています。
さらに、長期脱炭素電源オークションについても課題が浮き彫りになりました。現行制度では、応札に必要な最低設備容量が10万kWに設定されており、これは特に小規模な再エネ事業者にとって非常に高いハードルとなっています。このため、現行基準が特定の事業者の参入を阻害していると認められる場合には、最低設備容量基準の見直しが競争政策上望ましいとしています。
また需給調整市場における通信回線の要件についても、新電力事業者からの改善要望が寄せられています。具体的には、一般送配電事業者が自社の光ファイバー網しか使用を認めないケースがあり、これが需給調整市場への新規参入を妨げていると指摘されています。このため、公正取引委員会は、セキュリティや技術面を考慮しつつも、できる限り柔軟な対応を求めています。
さらに、ネガワット取引における透明性の向上についても提言がありました。ネガワット調整金に関して、アグリゲーターが小売電気事業者からエビデンスの提示を受けられないケースが存在するため、取引当事者間で価格の妥当性を確認できるよう、調整金の算定根拠を明示すべきとしています。これにより、取引の透明性が高まり、健全な競争環境が促進されることが期待されます。
また、旧一電内部における環境価値取引の透明化も重要な課題とされました。非FIT非化石証書の取引において、旧一電グループ内で無償取引を行い、他事業者には有償で提供するような差別的取扱いが行われた場合、独占禁止法上問題となる可能性があると指摘されています。このため、公正な競争秩序を確保するため、旧一電に対して内部取引であっても価格設定を行うことが望ましいとしています。
最後に、洋上風力発電の公募制度についても議論されました。現行制度ではゼロプレミアム水準での入札が事実上必須とされており、これが新規参入事業者にとって大きな負担となっています。公正取引委員会は、ゼロプレミアム案件が容量市場に参加できる制度改正が望ましいとし、より多様な事業者が公募に参加できる環境整備を求めています。これにより、再生可能エネルギーの導入が促進され、電力市場の健全な競争が期待されます。
このように、公正取引委員会の今回の調査は、現行制度の課題を丁寧に洗い出し、競争環境をより一層整備するための具体的な提言を行ったものであり、今後の電力市場政策において極めて重要な指針となるものです。需要家にとっても選択肢が広がり、より適切な価格とサービスを享受できる環境が整うことが期待されます。
⇒ 詳しくは公正取引委員会のWEBサイトへ