2025年6月26日
労務・人事ニュース
米の売上前年比200%増の東北スーパーに学ぶ消費傾向と雇用への影響とは(令和7年5月)
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景気ウォッチャー調査(令和7年5月調査)― 東北(現状)―(内閣府)
令和7年5月に公表された景気ウォッチャー調査の中でも、東北地方の動向は地域経済の変化とその要因を理解するうえで極めて重要な意味を持っています。公益財団法人東北活性化研究センターが実施したこの調査は、地域に根ざした事業者や関係者の声をもとに、家計、企業、雇用の3つの側面から東北の現状を分析しています。その内容からは、物価高騰と生活防衛意識の高まりが消費行動に大きな影響を与えている一方で、観光、一部の小売業、製造業、そして求人市場には前向きな動きも見られ、まさに混在した経済の現実が浮かび上がっています。
まず家計動向に関して注目されるのは、消費者の購買行動が大きく二極化している点です。百貨店の担当者によれば、美術展や物産展などの催事強化によって来客数が伸びており、婦人衣料や化粧品といった商品群で売上の上昇が確認されています。一方で、インバウンド需要の減少や、円高・株安の影響を受けて、高額商品や贅沢品の売上は低調に推移していると報告されています。また、あるスーパーでは米の売上が前年比で200%に達したとの声があった一方で、青果、精肉、鮮魚、総菜の売上は低下傾向にあり、生活費のやりくりに苦慮する家庭が支出項目を選別している様子が明らかになりました。
衣料品業界でも同様の傾向が見られ、価格に敏感な顧客と商品本位で購入する顧客の二層化が進んでいるとの指摘があります。ある衣料品専門店では、来客数・売上共に前年比90%となり、し好品の購買が減少していると報告されました。季節商材の動きも鈍く、衣替えや夏物商品の需要も低調に推移しているとのことで、天候や気温の影響以上に家計全体の余裕が不足している状況が読み取れます。
飲食業においては、ゴールデンウィークの効果も一部で確認されましたが、連休後は来客数が減少傾向にあります。一般レストランでは、今月の来客数が前年比で85〜90%の水準で推移しており、地元客の来店頻度が落ちているとの報告がありました。また、客単価が上がらず、売上にも直結しないという現状は、物価高により外食の頻度を減らす消費者の姿勢が色濃く反映された結果といえるでしょう。
一方で、旅行や観光に関する分野ではやや前向きな動きも報告されています。旅行代理店では、海外旅行に関する問い合わせや申込件数が増えており、消費者の一部では旅行に対する予算が増えていると感じられる動きが見られました。特に富裕層や業績好調な企業に所属する顧客層では、その傾向が顕著となっています。ただし、東北エリア内の宿泊券販売額は前年を下回っており、目標額に届いていないことから、全体としては慎重な動きが継続していると考えられます。
企業動向では、特定業種において好調な兆しがうかがえます。農業分野では、米の出荷に対する農業団体からの追加払いが例年を大きく上回る金額となったことが報告されており、生産者側の収益確保に寄与しています。また、金属製品製造業では、稼働日が少なかったにもかかわらず受注が好調であることが示されました。輸送用機械器具製造業では、電子デバイス関連が計画達成に至った一方で、半導体関連が伸び悩み、全体の業績にマイナスの影響が出ているとされています。こうした中、設備投資に関しては慎重な姿勢をとる企業が多く、通信業や広告業では、取引先からの価格引き下げ要請や広告予算の抑制といった動きが顕著です。
また、建設業界では資材価格の高騰により事業計画が頓挫する例もみられ、案件数があっても実現に至らない状況が続いていると報告されています。それにもかかわらず、一部の現場では受注工事が徐々に増加しているなど、先行きには希望を見出せる動きもあるようです。
雇用に関しては、全体として求人数は安定的に推移しているものの、分野によっては需給ギャップが依然として大きいことが明らかになっています。人材派遣会社の報告によれば、採用人数は前年比で増加傾向にあり、求人企業のニーズは依然高いままです。しかし、特に飲食業や小売業、営業職の求人では応募数が少なく、企業側が求める人材を確保するのが困難な状況にあります。こうした中、企業の新卒採用では給与引き上げなどの待遇改善が進んでおり、専門学校や職業安定所の関係者からも、求人件数は安定しているとの報告が多く寄せられています。
ただし、有効求人数の減少や有効求人倍率の低下傾向が示されており、物価高の影響を受けて経営が行き詰まり、企業整理を進める中小企業も一部に存在しています。さらに、価格転嫁が難しい零細企業では倒産が増加しており、特に卸売業や小売業の求人数が減少しているという報告もあります。
以上のように、東北地域の経済は全体としては回復と停滞が混在する状況にありますが、企業の採用担当者にとって重要なのは、求人数や人材動向の変化を的確に捉えることにあります。人手不足が深刻な業界においては、早期の採用活動が競争力の差を生む可能性があり、とくに成長分野や消費回復が見込まれる業種では、今後の人材戦略が企業の命運を分けるといっても過言ではありません。また、物価高による生活防衛意識の高まりを背景に、求職者の企業選びにも変化が見られることから、企業側には働きやすさや安定性をアピールする工夫も必要になるでしょう。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ