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2025年5月18日

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約77%の製造業がDXを導入!技術革新の裏にある人材戦略とは

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記者発表『ものづくり産業におけるDXと人材育成に関する調査 』(2025年5月9日)(JILPT)

2025年5月9日、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は「ものづくり産業におけるDXと人材育成に関する調査」の結果を公表しました。この調査は、国内の製造業に属する企業20,000社を対象に無作為抽出し、3,313社からの有効回答を得て実施されたものです。目的は、ものづくり産業におけるデジタル技術(DX)の導入状況や、それに伴う人材育成の現状と課題を明らかにすることにあります。調査対象企業の規模は従業員30人以上で、プラスチック製品や鉄鋼、電子部品、輸送機械など多様な分野に及びます。

まず、企業の人材育成方針については、「今いる人材を前提に能力をさらに高める」という方針が38.5%と最も多く、次いで「当面の仕事をこなすために必要な能力を身に付ける」方針が35.4%でした。企業規模が大きくなるほど戦略的な能力開発を重視する傾向が見られ、小規模企業(従業員50人以下)では約20.1%が方針を定めていないと回答しています。また、方針が従業員にどの程度浸透しているかについては、「浸透している」「ある程度浸透している」を合わせて64.1%と、比較的高い割合を示しました。

実施している人材育成の手法としては、OJT(On-the-Job Training)が72.7%、OFF-JT(Off-the-Job Training)が70.0%と、両者ともに高い実施率を誇ります。特にOJTでは、身につけるべき知識や技能を示す取り組み(77.1%)、作業標準書の活用(69.3%)が中心となっており、計画的な技能伝承の体制が整っていることが伺えます。OFF-JTに関しても、デジタル技術に関連する内容として、「一般的な知識・技術の習得」(25.4%)、「自社への導入・活用」(23.1%)が実施されており、従業員のITリテラシー強化に取り組む姿勢がうかがえます。

自己啓発に対する支援については、企業の59.9%が何らかの形で支援を行っており、その中でも「受講料などの金銭的支援」が83.8%と圧倒的に多い結果となっています。こうした支援策は、個々の従業員の自発的なスキルアップを促す一助となっています。

人材育成の成果については、経営面と人事面の両方で効果を感じている企業がそれぞれ66.9%、66.8%と、実施企業の3分の2以上にのぼります。経営面での効果では「技術水準や品質の向上」(74.0%)、「生産・加工にかかる作業時間の短縮」(64.3%)が顕著であり、投資対効果が明確に表れています。人事面では、「従業員の能力・スキルの底上げ」(82.6%)、「モチベーションの向上」(57.7%)が上位を占めており、組織内の活性化にもつながっていることがわかります。

一方、デジタル技術の導入状況に目を向けると、何らかの工程で業務改善を実施している企業は全体の77.2%に達しており、そのうち「事務処理」(43.9%)、「生産管理」(43.7%)、「製造」(39.9%)が主な対象となっています。特に「見える化(データの収集・蓄積・分析)」は全工程で70%以上の導入率を記録し、データに基づいた業務の可視化が進展しています。さらに「自動化(データによる制御)」や「最適化(工程全体の見直し)」への取り組みも一定の割合を示しており、DXの浸透が着実に進んでいる様子がうかがえます。

デジタル技術の種類としては、「プログラミング・ソフトウェア・情報システム」が最多で、すべての工程で4割以上の企業が導入。次いで「クラウド」(約4割)、「センサー」(製造で約40%)、「ロボット」(同じく製造で約40%)の順で導入が進んでいます。特に注目すべきは、企画・開発・設計工程でAIを導入している企業が19.4%に達している点で、画像認識や生成AIの応用が進展していることが読み取れます。

導入のきっかけとしては、全体的に「経営者・役員の発案」(56.6%)が最も多く、続いて「社内からの要望」が50.2%と、企業内部からの発案・推進が主流であることがわかります。外部からの影響では「グループ企業・取引先からの要請」(17.4%)や「ITベンダーからの提案」(7.1%)が挙げられています。

導入の目的に関しては、「品質の向上」(最大78.6%)、「作業負担の軽減・作業効率の改善」(最大72.6%)、「生産体制の安定」(最大65.3%)などが主な期待効果として挙げられており、実際に効果を感じている企業も80%以上に上ります。「最適化」に取り組んでいる企業では「効果を感じている」割合が最も高く、単なるデータの可視化にとどまらず、工程全体の構造的な見直しが成果を生んでいることが示されています。

人材確保においては、「社内人材の活用・育成」が最も多く、すべての工程で50%超となっています。一方、「新たに採用」は「企画・開発・設計」で22.9%とやや高めですが、他工程では15~18%程度にとどまります。育成方法としては、「OJT(現場での作業)」が最も多く、特に「企画・開発・設計」では社外研修の参加が56.8%と高い割合を示しており、外部知識の積極的な導入が図られています。

この調査から見えてくるのは、デジタル技術の導入が企業にとって単なる効率化手段ではなく、経営戦略の中核に据えられているという現状です。特に人材育成が成果に直結している事例が多く、社内リソースの最大化がDX成功のカギとなっていることが明らかになりました。今後、日本の製造業が持続可能な成長を遂げるためには、経営者主導によるDX推進と、それを支える人材戦略の強化が不可欠といえるでしょう。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ

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