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2025年4月15日

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船員職業紹介を無料化、全国自治体での新制度創設で若年船員確保に本格着手

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「船員法等の一部を改正する法律案」を閣議決定 ~船員不足の深刻化や航行の安全に関する国際的な規制強化等に対応~(国交省)

令和7年3月28日、国土交通省海事局は、船員の労働環境改善と人材確保を推進し、さらに国際的な海上安全基準の強化に対応するため、「船員法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。この法改正案は、船員不足の深刻化に歯止めをかけるとともに、今後の船舶運航における安全性を高め、関連する手続きをデジタル化によって効率化することを目的としています。近年、我が国の海運業界では有効求人倍率が著しく上昇しており、とくに若年層の就業者減少によって、船員の安定確保が将来的な課題とされてきました。加えて、海上の安全に関する国際条約の改正もあり、日本としてその内容を国内法に反映させる必要性が生じています。

今回の法案の第一の柱は、深刻な船員不足への対応です。具体的には、地方公共団体が無料で船員職業紹介を行う事業を新たに創設することが盛り込まれています。これにより、地方における雇用促進と若年層の流入を図り、海運産業の裾野拡大を狙います。また、船員職業紹介事業者に対しては、求人情報の正確な表示を義務付けることで、応募者とのミスマッチを防ぎ、円滑な人材確保を支援します。さらに、船舶所有者には、船内環境の快適性向上を努力義務として課し、長期雇用の促進と離職率の低下を目指します。加えて、非常時における船員の安全確保の観点から、船舶所有者に対して基本訓練の実施も義務付けられることとなります。

第二の柱は、航行安全の確保と国際基準への対応です。2024年5月に改正が採択された国際条約、すなわちSTCW-F条約とSOLAS条約への対応が急務とされており、それを受けた措置として一定規模以上の漁船には、船長または航海士として乗り組む際の要件が新たに設けられます。これにより、漁業船舶における操船技術や安全管理の質を向上させ、海難事故の未然防止を図ります。また、近年問題視されているコンテナの海中転落に関しても、付近を航行する船舶などへの通報制度を創設し、二次災害の防止および回避行動の迅速化に資する新たなルール整備が行われる予定です。

第三の柱は、船員関係手続のデジタル化対応です。従来、乗船履歴などの証明には、船員手帳への記載および証印が必要とされてきましたが、今回の改正によって、記載や証印に依存しない電子的な証明方法が整備されることになります。これにより、手続負担が大幅に軽減され、利便性が飛躍的に向上します。特に、複数の船会社を渡り歩く船員や、地方在住の申請者にとっては、物理的移動の負担がなくなるという点で大きな前進となります。

今回の法改正の背景には、船員の高齢化や若年層の職業選択志向の変化といった構造的な問題が横たわっています。とくに、日本の海運を支える船員の多くが50歳以上である現状を踏まえると、次世代の人材確保は喫緊の課題です。国としては、これまでにも海技教育機関の拡充や職業訓練支援、職業理解を促す広報活動などを行ってきましたが、今回のように法律レベルで新たな枠組みを制度化することは、持続的な船員育成の基盤強化に直結するものといえます。

さらに、国際的な視点で見ても、海運業界を取り巻く環境は急速に変化しています。グローバルなサプライチェーンの要である海上輸送においては、各国の安全基準や人材確保戦略が競争力に直結する時代に突入しており、日本がその中で国際的な信頼性を維持しつつ、競争優位を確保するためには、法的基盤の整備が不可欠となります。今回の改正は、まさにその第一歩と位置づけられます。

加えて、デジタル化という時代の潮流にも即応するかたちで、船員関連業務の電子化が進められることで、企業の業務効率も向上することが見込まれます。人事管理や労務対応においても、証明手続の省力化やデータ活用によるスキルマッチングの精度向上が期待され、船主・運航会社にとっても人的資源管理の最適化が現実のものとなります。

このように、今回の法案には、即効性のある現場支援から、将来的な制度整備まで幅広い意図が込められており、特に採用担当者や人事戦略を担う部門にとっては、制度改正を機に新たな人材確保策を検討するチャンスともなります。若年層の確保、地方からの人材登用、多様なキャリアパスの設計など、柔軟な対応が可能となる法的土台が整いつつあります。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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