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2025年7月24日

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製造業の月間労働時間156.4時間・給与41万円、全国平均が示す採用戦略の基準とは(毎月勤労統計調査地方調査 令和6年平均分結果概要)

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毎月勤労統計調査地方調査 令和6年平均分結果概要 表3 事業所規模5人以上 製造業(厚労省)

令和6年の「毎月勤労統計調査地方調査」における製造業(事業所規模5人以上)の年平均結果は、日本の製造業界の労働実態を多角的に捉えるうえで極めて貴重な資料となっています。今回の統計は、全国および各都道府県別の労働時間や給与水準を詳細に示しており、企業の採用担当者にとっては自社の採用戦略や人材定着施策の見直しに直結する有益な情報といえるでしょう。

全国平均では、常用労働者数が766万6,300人に達しており、製造業の雇用基盤が依然として日本経済の中核を成していることがうかがえます。月間の総実労働時間は156.4時間で、そのうち所定内労働時間が143.2時間、所定外、すなわち残業時間は13.2時間と、他業種と比較してやや長めの労働時間が特徴です。出勤日数の平均は18.9日と全国の労働平均と同水準ですが、製造現場の稼働効率や納期対応のために、一定の稼働日数を維持していることが背景にあると考えられます。

給与水準では、現金給与総額が412,916円に達し、そのうちきまって支給される給与が323,579円、所定内給与が293,825円、特別給与、つまり賞与や一時金などが89,337円となっています。給与構成の中で特別給与の占める割合が高いのは製造業特有の傾向であり、業績連動型の報酬制度が採用されていることが多いことが反映されています。これは一方で景気変動の影響を受けやすい面もあるため、採用においては基本給の安定性や定期昇給制度の明示が求職者の安心感に寄与します。

地域別の状況に目を向けると、たとえば東京都では現金給与総額が516,880円と全国トップクラスの水準を誇ります。これは所定内給与が372,061円、特別給与が120,620円といずれも高水準で、製造業においても都心部では高い報酬が提示されていることを示しています。しかしその一方で、総実労働時間は151.8時間とやや短く、出勤日数も18.5日と平均的であることから、効率的な労働環境が整っていると推察されます。給与が高く労働時間も適正であるという点は、優秀な人材の流入を促す好条件といえるでしょう。

愛知県においても製造業の中心地としての実力が表れており、現金給与総額は478,489円、特別給与は118,055円と高く、所定外労働時間は16.0時間と全国平均より長い傾向にあります。これは自動車関連産業をはじめとする大量生産ラインの存在が影響していると考えられ、残業の増加が収入を押し上げる要因ともなっています。こうした地域では、労働時間に見合った十分な報酬を支給する姿勢が重要であり、過重労働を避けるための管理体制整備も同時に求められます。

一方で、青森県や秋田県などの東北地方では、労働時間は全国平均と同等またはやや長い水準であるにもかかわらず、給与水準は30万円前後にとどまっており、地域による待遇格差が明確に表れています。たとえば青森県では総実労働時間が159.8時間、出勤日数が19.6日と全国平均よりも高い水準にある一方、現金給与総額は291,141円と、東京都と比較して約22万円もの差があります。このような状況では、人材の流出が加速する懸念があり、地域企業は待遇改善や福利厚生の充実といった工夫が必要不可欠です。

また、地方都市でも特定の県では高水準の労働環境が整っている例もあります。たとえば三重県では給与総額が440,770円、特別給与が95,798円と高く、所定外労働時間も14.4時間と高めです。給与と労働時間のバランスが取れており、安定した生産性を確保しつつ高報酬を維持しているモデルといえるでしょう。採用担当者にとっては、自社がこのようなバランスに達しているかを評価し、見直すことが重要です。

注目すべき点は、全国的に見て製造業の給与水準が他産業よりも高めであることです。特に特別給与が8万9千円台というのは、賞与の支給が安定して行われていることを示しており、従業員にとってのインセンティブとして機能しています。企業側は、こうした実績を採用活動の中で積極的に打ち出すことで、求職者に対して長期的な雇用の安心感を与えることができます。

また、都道府県ごとに出勤日数に若干の差があることも見逃せません。全国平均は18.9日ですが、高知県では20.0日、鹿児島県や長崎県では19.4日と高めの水準です。これに対し、東京都や神奈川県などは18.5日とやや低く、これは企業文化や業務効率の違いを反映していると考えられます。ワークライフバランスを重視する採用方針を採る企業であれば、こうした出勤日数や所定外労働の長さも重要な評価項目となります。

このように、事業所規模5人以上の製造業における労働実態は、企業ごと、地域ごとに大きな違いがあり、それぞれの特性に応じた採用戦略が必要です。単に給与の多寡だけでなく、労働時間や出勤日数、賞与の安定性、地域の生活コストとの関係など、多面的な視点から採用条件を検討することが、優秀な人材の確保と長期的な雇用維持につながります。

企業の採用担当者にとって、今回の統計は自社の労働環境を他社や他地域と比較する上で非常に有益な材料です。具体的な数値に基づく現状分析と、それに基づいた改善提案を社内で行うことができれば、採用活動の質と成果は確実に高まるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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