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2025年5月23日

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都市の再生には人材が不可欠、2000年代と比較して中小ビル再開発比率が31%増

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「都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会」の中間取りまとめを公表!~「成熟社会の共感都市再生ビジョン」として、新しい時代の都市再生の方向性を提示~(国交省)

都市の姿が大きく変わりつつある今、日本全国の自治体や企業が「都市再生」に本格的に取り組む時代へと突入しています。国土交通省が2025年5月16日に発表した中間取りまとめ「成熟社会の共感都市再生ビジョン」は、この新しい都市のかたちを描いたものであり、都市開発に関わるすべての人にとって方向性を示す重要な指針となっています。この取りまとめは、都市の質と価値を向上させ、個性を活かしたまちづくりを通じて人と投資を惹きつける磁力のある都市をつくり出すための考え方や取り組みを整理したものです。人口減少や建築費の高騰といった課題が深刻化する中、これからの都市には、短期的な経済合理性だけではなく、長期的な視点での持続可能性、そして地域文化の尊重が不可欠であると指摘されています。

今回のビジョンでは、これまで量的な拡大を追い求めてきた成長社会から、精神的な豊かさや生活の質、地域の価値に焦点を当てた成熟社会への転換が前提となっています。たとえば、2000年代初頭と比べて、再開発に使用される中小ビルや住宅地が占める割合は31%増加しており、従来のように大規模な土地転用に頼るのではなく、既存の都市資源を活かす方向へとシフトしていることが数字でも裏付けられています。実際、東京や大阪といった大都市だけでなく、地方都市においてもそれぞれの地域の特性や魅力を引き出す工夫が求められており、「稚内から石垣まで」の都市再生という考え方が強調されています。

今回の中間報告で特に注目されるのは、都市の持つ「普遍的魅力」と「固有の魅力」を両立させ、画一的ではないまちづくりを進めるための官民連携の促進です。その中でも「ウェルビーイングの向上」「パブリックライフの浸透」「地域資源の活用」「多機能の集積による稼ぐ力の創出」「共創・支援型のエリアマネジメント」という五つの施策が提案されています。これらはいずれも都市再生に関わる事業者、行政職員、さらには市民一人ひとりが当事者意識を持って関わっていくことが前提とされており、都市と人との新しい関係性の構築が重視されています。

また、都市再生の具体的な成果として、全国の都市再生特別地区では、2024年度時点でおよそ33万㎡もの広場が整備されており、これは東京ドーム約7個分に相当します。緑地については約47万㎡、東京ドーム10個分に相当する広大な面積が創出されており、都市空間における快適性や環境負荷の軽減といった観点からも大きな意義があります。都市緑地法の改正によって新たに創設された「優良緑地確保計画認定制度」などの制度が、こうした成果の背景にあるのです。これらの整備に携わる人材としては、都市計画や景観設計、緑地維持管理の分野での高い専門性を持つ人材が求められています。

さらに、文化施設や国際的なホテルの整備も進んでいます。文化施設は全国で33万㎡が整備され、都市のアイデンティティを高める役割を担っています。一方、ホテルの整備面積は67万㎡に達し、訪日外国人観光客の増加や国際会議、イベント対応の基盤を強化するために重要なインフラとされています。こうした施設は単なる観光資源にとどまらず、地元経済に持続的な利益をもたらす存在であり、施設運営や観光マネジメント、国際対応力のある人材が必要不可欠です。

都市再生のプロジェクトには、単なる建物の整備だけでなく、地域社会への波及効果も含めた「まちづくり」の視点が欠かせません。そのためには、地域資源を活用し、シビックプライドを醸成するようなストーリー性を持たせたプロジェクトが求められます。愛媛県大洲市における歴史的建造物の活用や、東京都立川市におけるウェルビーイングを重視した街区づくりなど、すでにいくつかの先行事例が成功を収めています。これらの事例からも分かるように、単なる箱物整備ではなく、そこに住む人、働く人、訪れる人の視点から、都市の価値を「育てていく」アプローチが今後さらに重視されることになります。

都市再生のもう一つの柱となるのが「エリアマネジメント」です。これは地域の自治体や民間事業者、住民が連携しながら、まちを育て、支え、維持していく取り組みです。国としてもこの分野への支援を強化しており、特に計画段階から管理運営までを視野に入れた体制づくりが重要とされています。既に全国で88件の都市計画提案が行われており、それに携わる人材には、地域との対話力、企画力、そしてマネジメント力が求められています。

このような都市再生の取り組みが今後さらに加速していく中で、企業にとっても新たな事業機会が広がると同時に、それを担う人材の確保と育成が喫緊の課題となります。建築や都市計画の専門職だけでなく、観光、環境、地域コミュニティづくりといった分野でも横断的なスキルを持つ人材が必要とされており、採用担当者にとっては、次世代の都市づくりを支えるキーパーソンを見極める力が一層問われる時代に入っています。

都市の再生は、単なるインフラ整備では終わりません。むしろ、それを使いこなし、価値を創出する「人」の存在が都市の未来を左右します。国の政策や制度だけでなく、企業の取り組み、そして市民一人ひとりの関与が重なり合ってこそ、都市が本来持っているポテンシャルを最大限に引き出すことができるのです。今回発表されたビジョンを一過性のものとせず、持続的に都市の質と価値を高めていくために、今こそ企業の積極的な関与と人材戦略の見直しが求められています。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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