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2025年5月31日

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離職率2.20%に低下、全産業平均で見る定着率向上の背景と今後の対策(毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報)

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毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報 第3表 常用雇用及び労働異動率(厚労省)

令和7年3月分の毎月勤労統計調査によって、全国の企業における常用雇用の状況と労働者の移動動向が明らかとなりました。今回の調査では、事業所規模5人以上の企業を対象に、各産業における労働者総数、パートタイム労働者比率、入職率および離職率がまとめられており、企業の採用活動や人材戦略を考えるうえで非常に重要な指標が提示されています。日本経済全体の雇用情勢を反映するこれらの数値は、企業の人事担当者が自社の状況を他社と比較し、今後の採用方針を構築する際に不可欠な情報となるでしょう。

全産業の平均として、令和7年3月の労働者総数は50,856千人となり、前年同月比で1.7%の増加を記録しました。これは多くの産業において雇用拡大の動きが見られたことを意味しており、特に建設業や情報通信業、不動産・物品賃貸業などで顕著な増加が確認されています。建設業では労働者数が2,543千人、前年比で2.8%増となっており、住宅やインフラ関連の需要が安定していることが背景にあると考えられます。情報通信業も1,852千人で前年比2.3%の増加を記録しており、IT関連人材の需要が引き続き高まっていることが読み取れます。

一方、鉱業・採石業等では労働者総数が12千人と極めて少ないながらも、前年比で3.5%の減少となっており、労働力の確保が依然として課題であることがうかがえます。また、製造業では7,612千人と多くの雇用を支える業種でありながら、前年比では0.1%の微減となっており、景気の影響や業務の自動化などが影響している可能性があります。

次に、パートタイム労働者の比率を見ていくと、全産業平均では31.51%となり、前年同月から0.58ポイントの増加がありました。特に卸売業・小売業では45.51%と非常に高く、飲食サービス業等では78.24%にも達しており、これらの業種がパートタイム労働者に大きく依存している実態が浮き彫りとなっています。対照的に、建設業や電気・ガス業では5%前後と低く、フルタイムの常用雇用が中心であることがわかります。鉱業では6.59%とやや高めではあるものの、前年同月比で5.94ポイントの大幅な上昇が見られ、急激な雇用形態の変化が進行している可能性があります。

入職率に関しては、全産業平均で1.81%となっており、前年から0.05ポイントの減少が見られました。産業別では電気・ガス業が1.94%でトップを占め、前年比では1.06ポイントも上昇しています。これは業界全体で人員の新規採用に積極的に取り組んだことが影響していると考えられます。一方で、製造業では0.91%とやや低めの水準にとどまっており、人手不足や即戦力人材の確保が難航している様子がうかがえます。建設業では1.03%と平均を上回っていますが、前年同月比では0.01ポイントの微減にとどまり、安定した採用活動が継続されていると判断できます。

離職率については、全体平均で2.20%となり、前年から0.12ポイントの減少が見られました。これは労働市場全体で雇用の安定が進んでいる証左であり、企業の定着施策や労働環境改善の成果が出始めていると評価できます。産業別に見ると、建設業の離職率は1.18%で前年比0.55ポイントの減少、製造業では1.09%で0.01ポイントの増加と、全体としては横ばいか改善傾向にあるといえるでしょう。対照的に、鉱業・採石業等では離職率が0.60%と非常に低い一方で、前年比では1.00ポイントの減少が記録されており、小規模業種での変動の大きさが目立っています。

このように、労働者数の増減、パート比率の推移、入職・離職の動向を総合的に見ると、現在の雇用市場はゆるやかな拡大基調にある一方で、業種ごとに課題が分かれていることが分かります。特に人材確保の難しい専門職や、変動の激しいサービス業では採用力の強化が求められており、柔軟な勤務体制の導入や賃金水準の見直しが今後の鍵となります。

企業の採用担当者にとって、こうしたデータは戦略的な採用計画を立案するうえで重要な材料となります。自社が属する業界での入職率や離職率を他社と比較し、自社の魅力度や課題を把握することで、採用活動の精度を高めることができます。また、パートタイム労働者の比率を把握することで、柔軟な働き方の提供や雇用形態の多様化にも対応しやすくなります。労働者の定着率を高めるためには、単に待遇を良くするだけでなく、職場の環境整備やキャリア支援など、包括的な支援策が必要です。

特に中途採用が活発化している現在、離職率の低下は大きなアピールポイントとなります。企業が長期的に人材を育成し、定着させる文化を持っていることは、求職者にとって安心材料となり、エンゲージメントの高い人材を惹きつける要因になります。一方で入職率が高い業種は、活気ある職場環境をアピールする材料になりますが、離職率とのバランスを見て、定着率の低さがないかも併せて確認する必要があります。

労働市場は常に変動しており、景気や政策、社会的要請の影響を受けてダイナミックに変化しています。そのため、企業が人材戦略を練る際には、最新の統計データをもとにした現状分析が不可欠です。採用力を高めるには、データに裏打ちされた判断と行動が求められ、感覚に頼らない客観的な視点こそが差別化のポイントとなるのです。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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