2025年8月1日
労務・人事ニュース
2030年に向けて日本人クルーズ人口を5倍の100万人へ、採用ニーズ拡大に備える業界の動き
エラー内容: Bad Request - この条件での求人検索結果表示数が上限に達しました
2030年までに日本人クルーズ人口を100万人とする新たな目標を定めます!~「日本のクルーズ市場の持続的発展に向けた有識者検討会」とりまとめを公表します。~(国交省)
令和7年7月17日、国土交通省は、日本のクルーズ市場の持続的発展を目指して策定した「とりまとめ」を公表しました。このとりまとめは、同年2月から開催された「日本のクルーズ市場の持続的発展に向けた有識者検討会」において、産官学の関係者が連携し、多様化する市場ニーズや国際的な動向を踏まえて議論を重ねた結果としてまとめられたものです。国はこの報告書を基に、2030年までに日本人クルーズ人口を100万人に増加させるという新たな目標を掲げ、これを実現するための具体的な政策や取り組みを進めていくとしています。
クルーズ産業はこれまで、「引退後のシニア層の楽しみ」としてラグジュアリー船を中心に発展してきました。日本でも同様の傾向があり、国内では高齢層をターゲットとした長期のクルーズ旅行が主流でした。しかし、世界的にはプレミアムやカジュアルな船も普及し、若年層やファミリー層などを巻き込んだ全世代型の海洋レジャーとして成長を遂げています。世界のクルーズ人口はすでに3,400万人を突破しており、国際的には日常的な旅行の選択肢としてクルーズが根付いています。こうした中、日本でも2019年にはクルーズ人口が35万人にまで拡大し、世界全体の1%を占めるまでになりました。
しかし、新型コロナウイルスの世界的流行により、日本のクルーズ人口は一時大きく落ち込みました。その後、徐々に回復が見られ、2024年時点では22.4万人にまで戻しています。これを踏まえ、2030年までにクルーズ人口を5倍近くにまで拡大させるという目標は、非常に野心的ではありますが、確実な成長の見通しがあるからこそ掲げられたものです。2023年12月には三井オーシャンフジの就航があり、2024年7月には飛鳥IIIが登場するなど、新たな日本籍船の投入も追い風となっています。さらに、2028年にはディズニークルーズラインの新造船が日本籍船として加わることが決定しており、ラグジュアリーからファミリー向けまで幅広いニーズに対応するラインナップが整いつつあります。
これにより、日本のクルーズ市場は「多様化のフェーズ」に突入したと言えます。今後はシニア層だけでなく、ヤングアダルト層やファミリー層、さらにはインバウンド旅行者もターゲットとしたサービスの充実が求められるようになります。実際、検討会では新規クルーズ旅客の着実な増加と、日本発着クルーズにおける外国人旅客の増加という2つの指標を重視すべきとされており、国内市場の拡大と並行してインバウンド需要の取り込みも大きなテーマとなっています。
企業の採用担当者にとって、このような業界動向は新たな人材需要の創出につながる重要なサインとなります。クルーズ関連の観光業、旅行業、船会社、造船業、港湾事業など、いわゆる海事クラスター全体にわたる人材の裾野が広がることが想定されます。たとえば、新しい船の運航には船員や整備技術者の確保が欠かせませんし、外国人観光客対応においては語学力を備えた接客スタッフや多文化対応ができるプランナーなども必要になります。また、ITを活用した予約システムの開発や、クルーズの魅力を発信する広報・マーケティング担当の人材にも注目が集まるでしょう。
さらに、今回のとりまとめは、クルーズ体験を通じて日本人の海に対する理解と愛情を深めることにも言及しています。こうした「海事思想」の普及は、教育や観光、地域振興の分野にも波及し、企業のCSR活動ともリンクする可能性を秘めています。たとえば、地方自治体と連携して寄港地での観光プログラムを充実させる取り組みや、クルーズ旅客と地域住民との交流を促進するプロジェクトなども、新たなビジネスチャンスとして浮上しています。
一方で、これほど大規模なクルーズ人口の拡大を実現するためには、業界全体が連携し、創意工夫を重ねていく必要があります。たとえば、短期間で気軽に楽しめるカジュアルなクルーズ商品の開発や、LGBTQ+やペット同伴など多様なニーズに対応した商品造成が求められます。また、SNSなどのデジタルメディアを活用した情報発信力の強化も、今後のマーケティング戦略において重要な要素となるでしょう。
国土交通省の主導によるこのビジョンは、単なる観光政策の一環ではなく、日本全体の海事産業の魅力度を高め、持続可能な成長を実現するための国家的なプロジェクトと言えます。2030年までに日本人クルーズ人口を100万人にするという目標の実現は、簡単ではありませんが、多くのステークホルダーが連携し、業界を超えた協力体制を構築することで、十分に達成可能なものです。企業にとっては、この潮流にどう乗り、どのような人材を育て、どんな価値を市場に提供するのかが問われる時代となるでしょう。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ