2025年4月6日
労務・人事ニュース
1人1泊につき最大300円課税、宮城県が宿泊税導入で年間12.5億円の安定財源を確保 令和7年秋以降施工予定
宮城県「宿泊税」の新設(総務省)
令和7年秋以降、宮城県において新たに宿泊税が導入される見通しとなりました。この宿泊税は法定外目的税として位置づけられており、観光振興を目的とした持続可能な財源を確保するために制度化されるものです。近年、観光客の回復や地域活性化の機運が高まるなかで、宮城県が取り組む観光政策の一環として注目されています。宮城県には、松島や鳴子温泉、蔵王連峰など、自然と文化が融合した観光資源が豊富に存在し、これらを有効に活用するための体制強化が求められています。宿泊税の導入は、そうした地域資源の活性化を後押しし、将来にわたって観光の魅力を持続的に発信していくための戦略的な施策の一つです。
課税の対象となるのは、宮城県内に所在する旅館業法に基づく旅館、ホテル、簡易宿所、国家戦略特別区域法に基づく特区民泊、住宅宿泊事業法に基づく民泊施設です。これにより、一般的な宿泊施設から近年増加傾向にある民泊までを包括的にカバーすることが可能となっており、制度としての公平性と実効性が重視されています。納税義務者は宿泊者本人であり、宿泊税は宿泊料金とは別に課される形となります。
徴収は特別徴収方式が採られ、宿泊施設が代理で宿泊税を徴収し、宮城県に納付する流れとなっています。宿泊税の額は地域によって異なり、仙台市内においては1人1泊につき100円、仙台市以外の地域では1人1泊につき300円に設定されています。地域間での税率の差は、観光需要や宿泊価格帯の実情を反映し、バランスの取れた制度設計がなされていることがうかがえます。
この宿泊税の導入により、宮城県が平年度で見込む税収は約12.5億円に上るとされており、観光政策を支える財源としては非常に大きなインパクトを持つ金額です。これだけの額が毎年安定して見込まれることで、これまで財源の確保に苦慮していた観光施策や地域振興策に対して、計画的かつ継続的な投資が可能となります。また、徴税にかかるコストとしては約1.0億円が見込まれており、運用コストとのバランスから見ても十分に効率的な制度となっています。
宿泊税の使途は、宮城県の観光資源の魅力増進、旅行者の受け入れ体制の整備、観光プロモーションの強化など多岐にわたります。具体的には、多言語対応による案内サインの充実、観光施設のバリアフリー化、地域イベントの開催支援、交通アクセスの改善などが検討されており、来訪者がより快適に過ごせる環境づくりが進められる予定です。また、感染症対策や災害対応といった安全・安心の観点も含めた施策も重視されており、観光地の競争力を高めるうえで欠かせない取り組みとなります。さらに、観光関連事業者の人材育成やICT活用によるデジタル観光の推進といった、将来を見据えた戦略にも宿泊税の税収が充てられることが想定されています。
課税においては一定の免除規定も設けられており、宿泊料金が1人1泊6,000円未満の宿泊、修学旅行などの教育的な目的で宿泊する児童・生徒およびその引率者、認定こども園や保育所等の行事参加者には宿泊税が課されない仕組みとなっています。これにより、地域の教育や福祉活動への配慮がなされ、観光税が地域住民にとって過度な負担とならないよう制度設計が工夫されています。こうした免除措置の導入は、観光振興と地域共生の両立を図るために極めて重要な要素といえるでしょう。
また、この宿泊税制度には見直し規定が設けられており、初回の導入から3年後、その後は5年ごとを目途に制度の検証と改善が行われる予定です。これにより、社会情勢や観光動向の変化に柔軟に対応し、必要に応じて税率や制度内容を見直すことが可能となります。導入初期においては観光業界や地域事業者との連携を深めながら、課題を早期に把握し、制度の定着と信頼性の向上を図っていくことが求められます。
令和6年10月17日に宮城県議会で宿泊税条例案が可決され、10月25日には総務大臣との協議が行われ、最終的に令和7年3月21日には正式な同意が得られました。条例の施行は令和7年秋以降とされていますが、それに先立って宿泊施設への説明会や広報活動、宿泊税の徴収に関する業務マニュアルの配布などが順次行われる見通しです。制度の導入が円滑に行われるためには、宿泊事業者へのサポート体制が極めて重要となるため、宮城県としてもきめ細やかな対応を進めていく方針です。
このような大規模な観光施策において、企業の採用担当者や人材育成担当者が注目すべき点は、観光業およびその周辺産業への波及効果です。宿泊税導入により、観光客が増加すれば、その分人材ニーズも高まり、各企業における採用戦略の見直しが必要になる可能性があります。また、宿泊税の使途として観光関連人材の育成や職業訓練が想定されていることから、人材確保だけでなく人材育成に関する外部資源との連携も視野に入れるべきです。地域のブランド価値が高まれば、求職者にとっても「この地域で働くこと」の意味や魅力がより具体的に伝わるようになり、企業の採用活動においても好影響が期待されます。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ