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2025年4月15日

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東京圏のミドル層は満足度が全国最下位、生活の楽しさ5.2ポイントに停滞

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Economic & Social Research

内閣府が発行した2025年冬号の政策研究報告『ESR No.47』では、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)のさらなる推進を中心に、地域社会の幸福度向上や高齢者・女性の就業と満足度に関する詳細な分析が掲載されている。これらの取り組みは、日本が抱える少子高齢化や東京一極集中などの構造的な課題に対応するための重要な政策的基盤となっており、データに裏打ちされた施策立案の重要性が改めて浮き彫りとなっている。

EBPMとは、科学的根拠に基づき政策の効果を検証し、その結果を踏まえて施策の改善につなげる手法であり、医療分野の「エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)」に起源を持つ。現在では教育、社会保障、地域振興など幅広い分野に応用が進んでいる。近年、日本でもその有効性が広く認識されるようになり、政府は2024年末に「EBPMアクションプラン2024」を策定。これは10の重要政策領域を対象に、具体的な分析方法や評価指標を明示し、より精緻な政策判断を可能とするものである。

このような政策形成の一環として注目されているのが、「生活満足度調査」を活用した地域別のWell-beingの分析である。調査によれば、都市規模が大きくなるほど生活満足度は高まる傾向があるものの、一定の規模を超えるとその上昇は鈍化し、特に東京圏においては最も満足度が高い地域とはなっていないことが明らかになった。また、分野別に見ると「家計と資産」や「生活の楽しさ・面白さ」などでは大都市ほど満足度が高い傾向にある一方、「自然環境」や「身の回りの安全」に関しては中小都市に軍配が上がっている。これは、都市の規模が一定以上になると、混雑や騒音、住環境の悪化といった「都市の副作用」が満足度に悪影響を及ぼすことを示唆している。

さらに年齢階層別の分析からは、東京圏ではミドル層、特に40代から50代前半にかけての生活満足度の低下が顕著であることが確認されている。例えば、「生活の楽しさ・面白さ」に関しては、同じ年代の地方在住者と比べても明確な格差が見られた。この背景には、子育てや介護といった家庭内の責任の増加や、雇用の不安定さが影響していると考えられる。特に女性については、「子どもが小中高生であること」や「子育てを頼れる人がいないこと」、「介護が必要な家族がいること」が生活満足度に大きく影響することが、重回帰分析により明らかにされた。

このような結果は、単に所得を上げることや雇用を増やすだけでは人々の幸福度を高めることができないという現実を物語っている。たとえば、東京圏では年収や金融資産の平均が全国で最も高い水準にあるにも関わらず、それが生活満足度に直結していない。所得が高くても育児や介護の負担が大きければ、生活に対する充足感は得られないという点に、政策の新たな焦点が必要とされている。

また、高齢者の就業に関する調査結果も非常に興味深い。60歳未満の回答者の約7割が、60歳以降も働きたいと希望しており、実際に60歳以上でも就業を希望する人は多い。特に男性では70歳から74歳の層でも48%が就業を希望していることが分かった。一方で、希望はあるものの、実際には年齢とともに無業者の割合が増加しているという実態も浮かび上がっており、就業希望が実現できていない現状が存在している。

さらに、就業している高齢者でも「やりがい」を感じているかどうかが生活満足度に大きな影響を与えていることが明らかになった。仕事にやりがいを感じている高齢者は、無業者はもちろん、やりがいを感じていない就業者と比べても満足度が高い傾向がある。これは、単に働けるかどうかではなく、働く内容や環境が高齢者の心身の健康や日々の充実感に直結することを示している。

女性に関しても同様であり、特に若年層や子育て中の女性においては、雇用形態による満足度の差が顕著である。正規雇用の女性は子どもの有無にかかわらず一定の満足度を維持しているが、非正規雇用の場合、子どもがいる女性の満足度は著しく低下する傾向が見られた。さらに、同じ非正規雇用であっても、やりがいを感じているか否かで満足度には明確な差が生まれている。

このように、生活満足度やWell-beingは、所得や就業の有無といった単純な指標では測れない、複雑で多様な要素によって成り立っている。したがって、政策の立案においては、これらの多次元的な要素を組み合わせた包括的な分析が求められる。EBPMはそのための有効なアプローチであり、今後さらに重要性が増すことは間違いない。

また、地域創生の観点からは、生活満足度の高い地方中核都市への移住や転職を後押しする政策も必要である。現在の東京圏への人口集中は、若年層の移動が中心であるが、今後この層が子育て世代へと移行する中で、満足度の低下や少子化の加速という負の連鎖を断ち切るためにも、地域間の幸福度の差を是正する取り組みが不可欠である。中小都市においては、自然環境や安全性といった強みを活かし、子育て世代を迎え入れる体制の整備が望まれる。

結局のところ、社会の中長期的な発展を支えるには、経済成長だけではなく、人々の暮らしの質を高める施策の充実が必要である。そのためには、単なる数字の集計ではなく、人々のリアルな声を数値として捉えることができる生活満足度調査のような調査の活用が今後ますます求められていくであろう。

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

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