2025年4月14日
労務・人事ニュース
船舶にもドライブレコーダー義務化の流れ、録画映像で年間100件超のヒヤリハットを可視化
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「船舶におけるドライブレコーダーの映像を活用した教育訓練ガイドライン」を策定しました
令和7年3月28日、国土交通省海事局安全政策課は、船舶運航事業における安全性向上と人材教育の質的向上を目的として、「船舶におけるドライブレコーダーの映像を活用した教育訓練ガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、令和4年に発生した知床遊覧船の事故を契機に取りまとめられた「旅客船の総合的な安全・安心対策」の一環であり、日常の運航業務における「ヒヤリ・ハット」や事故、さらには苦情対応といった実際の運航上の課題を、映像データを通じて教育資源へと昇華させることを目的としています。
ガイドラインは、ドライブレコーダーの映像を教育訓練に活用するための技術要件から実施フローまでを包括的に整理しており、具体的には導入の目的と機器要件、映像データの収集・分析方法、教育訓練への活用手順、さらに実際の設置事例と教育効果まで、多角的にまとめられています。船舶における教育訓練は、従来、紙ベースのマニュアルや口頭指導が中心でしたが、実際の運航中の映像を用いることで、操船技術や判断力、注意義務の履行状況といった要素を視覚的に評価・指導できるようになります。
今回のガイドラインでは、ドライブレコーダーの基本的要件として、前方用カメラは水平画角が120度以上、垂直画角は水面上及び水平線の物標を捉えることができるもので、解像度は1280×720ドット以上、記録頻度は毎秒10コマ(10fps)以上とされています。操船者用カメラについては、操船行動や見張り行動を明確に記録できる性能が求められ、こちらは毎秒5コマ(5fps)以上での録画が基準とされます。さらに、映像には録音機能、日付・時刻表示機能、GPSなどの位置情報記録機能、改ざん防止措置、記録媒体の装着確認機能なども盛り込むことが望ましく、信頼性と耐久性に配慮した設計が重要視されています。
映像データの運用フローは、事故やヒヤリ・ハット、操船に関する苦情があった際に該当映像を確認・保存するところから始まります。その後、保存映像の中から操船上の問題点を分析し、個別の操船者に対する指導、あるいは集団指導を実施します。指導後には再度操船映像を確認して改善状況を評価し、必要に応じて再指導を行うという、いわばPDCAサイクルを繰り返す形式が提案されています。この手法により、個々の技量向上だけでなく、組織全体の運航安全水準の底上げが期待されます。
ガイドラインの策定にあたっては、ドライブレコーダーが持つ機能が単なる「記録」にとどまらず、「育成・改善・抑止」の3つの効果を発揮することに着目されています。第一に、操船者自身が自らの行動を映像で振り返ることで客観的な自己評価が可能となり、自己修正能力の向上につながります。第二に、ベテランと若手の行動比較や、過去の成功・失敗事例の可視化により、組織内で知見が共有され、教育の質が均質化・高度化される効果が見込まれます。第三に、常時録画されているという意識が操船者の注意喚起につながり、ルール遵守や安全運航の抑止力として機能する点も見逃せません。
実際の導入事例では、前方カメラを船首部に、操船者用カメラを操舵室内に設置し、乗客席や屋外デッキの状況も記録できるような構成が紹介されています。録画データは定期的に点検・バックアップされ、クラウドや専用サーバーに保存することで、複数の拠点からの同時アクセスや、外部研修用としての活用も可能になります。また、音声記録により乗客とのやりとり、指示・応答の適切性も確認できるため、安全運航だけでなくサービス品質の向上にも寄与する仕組みです。
国土交通省では、このガイドラインを単なる推奨事項にとどめず、今後一部の船舶においては導入を義務化する方向で検討を進めており、これにより運航事業者に求められる安全管理の責務はますます高度化していくと予想されます。また、同省はガイドラインの普及啓発活動として、事業者向けの説明会や研修会の実施、導入事例集の公開、さらには導入費用の一部補助制度の検討も進めているとされ、全国の運航事業者にとっても今後避けては通れない対応となることが見込まれます。
企業の採用担当者にとっても、このような制度改革は大きなインパクトを持ちます。なぜなら、教育体制の整備は採用戦略の重要な柱であり、「現場で育てる」「安全を守る」ための環境がどれだけ整っているかは、求職者の企業選びにも大きな影響を与えるからです。映像教育が常態化すれば、未経験者や若年層に対する技術習得のスピードが加速し、即戦力化までのリードタイムが大幅に短縮されます。加えて、教育内容の可視化は、OJTの質的保証にもつながり、指導者のばらつきや指導負荷の偏りといった問題も改善される可能性があります。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ