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2025年4月8日

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令和7年度の年金額が1.9%引き上げ、満額基礎年金は69,308円に上昇

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厚生労働省関係の主な制度変更(令和7年4月)について 年金額の改定(厚労省)

令和7年度の年金額が、物価や賃金の変動を反映した結果、前年度から1.9%の引き上げとなることが発表されました。この改定により、老齢基礎年金(満額)の月額は、昭和31年4月1日以前に生まれた方については69,108円、同年4月2日以降に生まれた方については69,308円に引き上げられ、令和6年度の68,000円からそれぞれ1,108円または1,308円の増額となります。さらに、厚生年金についても、標準的な年金受給者(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)の月額は232,784円に改定され、前年度の228,372円から4,412円の増額となります。

年金額の改定は、物価や賃金の変動を反映する制度上のルールに基づいて毎年行われており、現役世代の負担と受給世代の生活保障のバランスを保つための重要な調整措置です。今回の改定は、令和6年の全国消費者物価指数が前年比2.7%上昇したこと、また名目手取り賃金変動率が2.3%、実質賃金変動率がマイナス0.4%だったことを踏まえて行われました。加えて、平成16年の年金制度改革により導入された「マクロ経済スライド」制度のもと、令和7年度の調整率はマイナス0.4%とされ、物価や賃金の上昇分からその分を差し引いて年金額の改定率を最終的に1.9%に設定する仕組みです。

マクロ経済スライドとは、公的年金制度の持続可能性を確保するため、被保険者数の減少や平均余命の伸びに応じて、年金額の実質的な増加を一定程度抑制する制度であり、今回の改定でもこれが発動された結果、物価や賃金の上昇に比して年金の増額幅がやや抑制される形となりました。なお、マクロ経済スライドの適用は平成27年度以降、令和元年、令和2年、令和5年、令和6年に続き、今回で6回目の実施となります。

年金の改定額は一律ではなく、加入実績や経歴に応じた金額が個別に算出されます。たとえば、厚生年金期間が20年以上ある男性で、平均収入が50.9万円(賞与を含む月額換算)の場合、令和6年度の月額年金が170,223円だったのに対し、令和7年度には173,457円と、月額3,234円の増額が見込まれます。また、同様の条件を満たす女性の場合、月額129,654円から132,117円へと2,463円の増額となります。一方で、国民年金を中心に加入していた場合の年金額は相対的に低く、たとえば第1号被保険者期間が20年以上ある男性の月額は62,344円、女性では60,636円程度にとどまり、改定後も生活に余裕を持つには難しい水準であることが明らかです。

これらの数字は、企業にとっても決して他人事ではありません。現役世代が将来受け取る年金額の水準が把握されていれば、退職金制度や確定拠出年金(DC)、企業型年金制度などをどう設計・運用していくかの判断材料になります。また、厚生年金の支給停止に関連する「在職老齢年金制度」の調整額も、令和7年度から50万円から51万円に引き上げられ、現役で働く高齢者の賃金と年金のバランスにも影響を及ぼすことになります。

企業の人事戦略としては、退職後の生活支援として年金制度の理解を深める取り組みが重要になります。近年は定年後も働き続けるシニア人材が増加しており、年金額の水準が労働意欲や就業選択に直接影響するケースが多く見られます。そのため、社内でのライフプランセミナーや、在職老齢年金制度の仕組みを踏まえた柔軟な働き方の設計、あるいは企業独自の上乗せ年金制度の導入など、退職後も視野に入れた包括的な福利厚生の設計が求められる時代です。

また、採用活動の現場でも「年金への不安」が若い世代の就業意欲に影を落としていることが指摘されており、将来的な備えとしての制度理解を促す取り組みは、企業の信頼性や安心感の醸成に寄与します。とりわけ中小企業や非正規雇用が多い企業では、社会保険加入の有無が採用の決定要因となることも多く、年金制度に対する正しい知識を持ち、丁寧に説明できる体制を整えることが、企業の採用力強化につながるのです。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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