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2025年5月8日

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配車アプリ利用率23.4%の都市も!公正取引委員会が示したタクシー市場の最新課題とは

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(令和7年4月23日)タクシー等配車アプリに関する実態調査について(公正取引委員会)

近年、タクシーの供給不足により移動の利便性が損なわれる事例が全国で増加していることを受け、政府は様々な対策を講じてきました。特に、デジタル技術を活用したタクシー等の配車アプリは、需要者である旅客と供給者であるタクシーとの効率的なマッチングを可能にし、移動の利便性向上に大きな役割を果たしています。この背景のもと、公正取引委員会は、配車アプリ市場における競争環境の現状を把握し、独占禁止法や競争政策上の考え方を示すために実態調査を実施しました。本調査では、配車アプリ市場が特定の事業者に集中することで競争制限が生じるリスクがあること、ならびに、駅や空港といったタクシー需要が集中する場所での公正な競争確保の必要性が指摘されました。

今回の調査では、配車アプリ事業者5社、タクシー事業者やその協同組合17者、消費者団体2団体、タクシーメーター製造販売事業者2社、鉄道事業者及び空港管理者5社、地方公共団体1741団体(うち1072団体が回答)を対象にヒアリング及びアンケート調査を実施しました。調査期間は令和6年10月から令和7年3月までの約半年間にわたり実施されています。

配車アプリは、スマートフォンを用いて旅客が自身の位置情報をもとに配車依頼を行い、近くにいる空車タクシーとのマッチングを行うものであり、従来の無線配車や街中での流しに代わる新たな手段として定着しつつあります。特に東京都特別区、武蔵野市、三鷹市においては、アプリ配車の利用割合が23.4%に達しており、都市部における配車アプリの浸透が顕著です。一方、地方都市では依然として利用率が低く、秋田市では5%にとどまっているなど、地域格差も明らかとなっています。

また、配車アプリ事業者は旅客とタクシー事業者の双方にサービスを提供しており、旅客に対しては配車依頼の受け付け、タクシー車両情報の提供、決済機能などを、タクシー事業者には配車依頼の照会やマッチングサービスを提供しています。これにより、旅客は迅速にタクシーを利用でき、タクシー事業者にとっては売上機会の増加が期待される仕組みとなっています。

ただし、配車アプリ市場においては、間接ネットワーク効果が強く働くため、利用者が特定のアプリに集中しやすく、競争の停滞や新規参入の困難化が懸念されています。さらに、一部の配車アプリ事業者による取引先タクシー事業者に対する優遇措置や、他アプリの利用制限といった取引慣行が独占禁止法上問題となる可能性も指摘されました。

具体的には、ある配車アプリ事業者が、比較的単価の高い配車依頼について、自社アプリのみを利用するタクシー事業者に限定して配車を行う旨を通知した事例が確認されています。このような行為は、排他条件付取引または拘束条件付取引に該当し、競争を阻害するおそれがあるとされます。

また、タクシーメーター市場において有力な地位を有する事業者が、自社の配車アプリとソフトメーターとの接続を独占的に運用することにより、他の配車アプリ事業者の市場参入を妨げる可能性も浮上しています。令和7年1月から新たに導入されたソフトメーター制度により、タクシー車両のデジタル化が進む中、配車アプリ事業者による囲い込みが懸念されています。

さらに、駅や空港といったタクシー乗り場における入構や乗車に関しても、特定の事業者に対して有利な条件を設けることは、競争制限につながる可能性があると指摘されました。公正な競争環境を確保するためには、乗り場の管理主体が中立的な立場を維持し、すべてのタクシー事業者に対して公平な基準を適用する必要があるとしています。

公正取引委員会は、今後も配車アプリ市場の動向を注視するとともに、違法行為が認められた場合には、独占禁止法に基づき厳正に対処する方針を示しています。また、配車アプリ事業者に対しては、配車マッチングの基準を明確にし、取引先であるタクシー事業者への十分な説明と通知期間の確保を求めるとともに、競争環境を損なわない運営を促していく考えです。

本調査から明らかになった課題に対応することで、タクシー利用者にとって利便性が高く、かつ公正な市場環境が維持されることが期待されます。デジタル化が進む中で、健全な競争環境を支えるためのルール作りが今後ますます重要になっていくでしょう。

⇒ 詳しくは公正取引委員会のWEBサイトへ

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