2025年4月27日
労務・人事ニュース
実質賃金が前年同月比マイナス1.2%、物価上昇に給与増が追いつかず企業は戦略見直しを(毎月勤労統計調査 令和7年2月分結果速報等)
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最終更新: 2025年5月1日 22:32
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毎月勤労統計調査 令和7年2月分結果速報等(厚労省)
令和7年2月における毎月勤労統計調査(速報値)から、日本の労働市場における現状と動向が鮮明になりました。特に今回の調査では、現金給与総額が前年同月比で3.1%増加し、289,562円となりましたが、消費者物価の上昇により、実質賃金は依然としてマイナス1.2%という結果にとどまり、実態としては賃金の上昇が生活水準の改善に結びついていないことが明らかになりました。企業の採用担当者にとっては、賃金動向や労働時間、パート比率の変化といった指標が採用戦略や人件費の再構築に直結する重要な判断材料となります。
まず、雇用形態別の給与動向に注目すると、一般労働者の現金給与総額は373,099円で前年同月比3.7%の増加、パートタイム労働者は107,572円で2.4%の増加となっています。さらに、パートの時間当たり給与は1,384円で前年から4.5%も上昇しており、特に最低賃金の改定が強く反映されています。しかしながら、実質賃金で見ると、一般労働者はマイナス0.5%、パートタイム労働者はマイナス1.8%と、物価上昇の影響を受けて実質的な生活水準は依然として低下傾向にあります。これにより、企業がどれだけ賃上げを行っても、従業員の生活満足度が向上しないというジレンマが続いている状況です。
実労働時間に関しては、全体で131.2時間と前年比で2.5%の減少となり、所定内労働時間は121.5時間(2.4%減)、所定外労働時間、いわゆる残業時間は9.7時間(4.0%減)という結果になっています。これは働き方改革の影響や、業務効率化の進展、さらには生産調整による労働抑制などが背景にあると見られます。特にパートタイム労働者の所定外労働時間が前年比4.8%増となっており、短時間勤務者にも追加労働が求められる状況が確認されました。これは人手不足が深刻な業界において、パート労働者の労働負担が増していることを示しています。
また、雇用人数については、常用雇用全体で5,104.3万人となり、前年比1.6%の増加となりました。そのうち一般労働者は3,499万人(0.8%増)、パートタイム労働者は1,605.3万人(3.3%増)で、パートタイム労働者の比率は31.45%と、前年より0.53ポイント上昇しています。このように、企業における雇用形態の多様化が進行しており、特に非正規雇用に頼る傾向が強まっていることが浮き彫りになっています。
産業別に見ると、最も高い現金給与総額を記録したのは電気・ガス業で547,319円、次いで金融業・保険業で507,091円となっており、それぞれ前年同月比で16.8%、25.8%という大幅な伸びを見せました。情報通信業も427,340円で5.3%増加しています。これらの産業では、高度なスキルや専門知識を要する業務が多く、企業間での人材獲得競争が激化しているため、待遇面での改善が進められているものと考えられます。一方、飲食サービス業では127,472円と低水準でありながらも、前年比では0.1%の微増にとどまっており、最低賃金上昇の影響はあるものの、依然として賃金水準の格差が大きい状況です。
企業の採用担当者にとって注目すべきは、生活関連サービス業など一部業種でのパート比率の増加傾向です。たとえば飲食サービス業ではパート比率が79.0%、生活関連サービス業では50.69%と、従業員の半数以上がパート勤務で構成されている業種が多く見られます。このような業界では、採用活動の成功が企業の事業継続に直結するため、待遇改善や労働環境の整備が急務とされています。また、教育や学習支援業でもパート比率が33.52%と高く、非正規労働者の占める比率が大きくなっています。
さらに、所定外労働時間の増減からも、産業ごとに労働負荷の偏りが見て取れます。たとえば、運輸・郵便業では所定外労働時間が19.6時間と全産業中で最も長く、前年比でも10.1%減少していますが依然として長時間労働が常態化しています。逆に飲食業では所定外労働時間が4.8時間にとどまり、パートの所定外労働も2.1時間と、短時間労働が徹底されている一方で人手不足による現場の過重労働が懸念されます。
以上の結果を踏まえると、企業の採用活動においては、名目賃金の上昇だけでは人材確保や定着率の向上にはつながらず、労働時間の管理や柔軟な勤務制度、キャリアアップ支援など総合的な人材マネジメント戦略が必要であることが分かります。今後は、パートタイム労働者の処遇改善が企業競争力を左右する大きな要素となりつつあり、非正規労働者も含めた人材戦略の再設計が不可欠です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ