2025年6月6日
労務・人事ニュース
全国の総実労働時間は月136.7時間、所定外10.1時間の現状と採用戦略の関係(令和6年12月分結果概要)
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看護師/西鉄香椎駅/福岡市東区/福岡県
最終更新: 2025年7月10日 02:35
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看護師/他/山隈駅/朝倉郡筑前町/福岡県
最終更新: 2025年7月10日 02:35
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看護師/福岡市城南区/福岡県/福大前駅
最終更新: 2025年7月10日 02:35
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看護師/福岡市早良区/野芥駅/福岡県
最終更新: 2025年7月10日 02:35
毎月勤労統計調査地方調査 令和6年12月分結果概要 事業所規模5人以上 調査産業計(厚労省)
厚生労働省が取りまとめた令和6年12月分の毎月勤労統計調査によると、事業所規模が5人以上の全国における調査産業計の労働状況は、多角的な指標から雇用環境や賃金の傾向が浮き彫りとなっています。全国ベースで見ると、常用労働者数は5,126万5千人であり、労働時間に関しては、1か月あたりの総実労働時間が136.7時間となっており、そのうち所定内労働時間が126.6時間、所定外労働時間が10.1時間という内訳になっています。また、出勤日数の平均は17.6日でした。これらの数字は、労働市場が概ね安定した水準で推移していることを示唆する一方で、働き方改革の成果や課題も垣間見える内容となっています。
賃金面に目を向けると、現金給与総額の全国平均は617,375円であり、うち「きまって支給する給与」が285,298円、「所定内給与」が265,046円、ボーナスや一時金などの「特別給与」が332,077円となっています。この構成から、支給額全体の半分以上を賞与が占めており、季節要因の影響を強く受けていることがわかります。とりわけ年末である12月は、年間を通じて賞与支給が最も多い月の一つであるため、こうした傾向が顕著に反映されています。
地域別に見ていくと、北海道における常用労働者数は181万2,300人で、全国平均より若干高めの138.6時間の総実労働時間を記録しています。このうち所定内労働時間は129.3時間で、所定外は9.3時間となっており、全国平均とほぼ同水準の働き方が伺えます。給与水準では、現金給与総額が532,102円で、うち特別給与が274,640円とやはり大きな割合を占めており、地域経済における賞与依存の傾向も見て取れます。
青森県では、常用労働者数が40万5千人と比較的少ない一方で、総実労働時間が148.1時間と全国平均よりも長く、地域によっては労働時間のばらつきがあることが分かります。また、現金給与総額は470,147円で、全国平均よりも約15万円ほど低くなっており、労働時間が長いにもかかわらず給与が抑えられている構造が見られます。所定内給与は226,118円、特別給与は229,864円と、比較的均等な構成ではあるものの、全国水準に比べて全体的に低い傾向にあります。
岩手県においても、労働者数は42万4,800人で、総実労働時間は143.3時間と比較的長くなっています。所定内労働時間は134.2時間、所定外は9.1時間と安定しているものの、給与水準では559,736円の現金給与総額で、特別給与が305,158円に上る点が特徴的です。所定内給与は238,052円であり、他県と比べても比較的バランスの取れた給与構成といえます。
このような地域別のデータを精査することで、企業の採用担当者は地域における雇用環境の実態や、候補者が期待する給与水準の背景を理解しやすくなります。特に、全国的に見ると常用労働者数が5,000万人を超える規模の中で、地域ごとの労働時間や給与の差が浮き彫りになっており、転職希望者や新卒者が勤務地を選ぶ際の判断材料にもなるでしょう。企業としては、勤務地によって給与水準や勤務時間に差を設ける場合、その理由を明確に説明し、候補者の納得感を得る対応が求められます。
また、給与構成における特別給与の割合が高い地域が多く、特に年末にかけての一時金の支給が労働者の所得に大きな影響を与えている実態があります。このことは、季節変動に依存した家計管理が必要になるため、企業側が継続的な雇用安定策や年間を通じた賃金の平準化に取り組むことが、長期的な人材定着につながる要素となります。
さらに、出勤日数が全国平均で17.6日という結果は、標準的な月間勤務日数よりもやや少ない印象を受けるかもしれませんが、祝日や年末休暇の影響が色濃く出る12月という季節性を考慮する必要があります。このような背景を理解することで、労働時間の増減や出勤日数の推移を単純比較することの危険性も把握できます。採用担当者にとっては、これらのデータを読み解き、応募者や経営層に対して適切な説明ができる力が求められます。
企業が人材戦略を構築するうえで、このような詳細な統計情報は、非常に貴重な判断材料となります。たとえば、総実労働時間の全国平均が136.7時間であるという事実は、過重労働が問題視される現代において、働き方改革の進捗を評価するうえでも重要な指標です。また、所定外労働時間が10.1時間に留まっているというデータは、時間外労働の抑制がある程度進んでいることを示しており、企業が求職者に対してアピールできる要素にもなり得ます。
一方で、特別給与が総額の半分以上を占めている実態を踏まえると、基本給与の見直しや評価制度の改善も検討すべき課題となります。給与の安定性を重視する労働者に対しては、特別給与に依存しない給与体系を整備することで、より魅力的な労働条件の提供が可能となります。
このように、今回の統計データから見えてくるのは、単なる数値の羅列ではなく、それぞれの数字の背後にある労働実態や地域特性、そして働き方に対する社会の要請です。企業がこれを適切に読み解き、自社の人材施策に反映させることが、持続可能な経営と人材確保の鍵を握ると言えるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ