2025年6月5日
労務・人事ニュース
死亡災害181人に減少、建設業と製造業で顕著な安全対策効果(令和7年5月速報値)
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最終更新: 2025年6月9日 22:31
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令和7年における労働災害発生状況について(5月速報値)(厚労省)
令和7年5月23日付で発表された厚生労働省の速報値によると、2025年1月から4月末までに報告された労働災害の発生状況は、前年同期と比較して全体的に減少傾向が見られたことが明らかになりました。特に死亡災害については、全国で合計181人が命を落としており、これは前年同時期より6人少なく、3.2%の減少となりました。この結果は、安全管理の意識向上や現場でのリスク回避措置の徹底が進んだことを示唆するものと考えられますが、依然として多くの職場で重大な危険が潜んでいることも否定できません。
業種別に見ると、建設業は最も多くの死亡者を出しており、合計で59人が亡くなっています。しかしこれは前年と比べて5人少なく、7.8%の減少となっており、長年課題となっていた建設現場での安全対策が一定の成果を上げていることがうかがえます。一方で、製造業では32人が死亡しており、前年より9人の減少、割合にして22.0%の減少という顕著な改善が確認されました。重機の導入や自動化の進展、そして現場での教育訓練の強化が背景にあると考えられます。
一方で、第三次産業、いわゆるサービス業や小売業、福祉などを含む業種では45人の死亡者が報告されており、前年より7人増加して18.4%の増加率となっています。この領域では、現場作業が多様で、また労働者の年齢層や作業内容も幅広いため、リスクの特定と対策の実行にばらつきが生じている可能性があります。特に高齢労働者の増加や、非正規雇用者が多い現場では、安全管理体制の徹底が一層求められます。
また事故の発生原因としては、「墜落・転落」が46人と最も多く、前年から9人減少し16.4%の改善が見られました。これは高所作業に対する安全帯の着用義務化や、作業台の設置など物理的な対策が功を奏している可能性があります。一方で、「交通事故(道路)」による死亡者は32人で、これは前年より9人の増加、実に39.1%の増加率を記録しており、特に陸上貨物運送業などの移動を伴う業務における安全確保が今後の大きな課題となっています。また、「はさまれ・巻き込まれ」による死亡は31人で、こちらも7人の減少となり、機械設備の安全装置や作業手順の見直しが功を奏していると推察されます。
死亡災害とは別に、4日以上の休業を要する死傷者数も公表されており、全国で31,300人が該当しました。前年同期比で549人減少しており、1.7%の減となっています。この数字もまた、全体としての安全意識の高まりを示している一方で、依然として多くの現場で労働災害が発生している実態を反映しています。
業種別に見ると、第三次産業における休業4日以上の死傷者数は15,694人と全体の約半数を占め、前年同期よりも18人増加しています。特に高齢者や女性労働者が多く従事するこの分野では、ちょっとした段差や床の滑りなどが転倒事故に直結するケースも多く、安全衛生管理の継続的な改善が求められます。転倒による死傷者は全体で10,101人に達し、前年から653人、6.9%の増加という顕著な伸びを見せており、日常的な注意喚起だけでは不十分であることが分かります。
製造業では6,391人、建設業では3,145人が4日以上の休業を余儀なくされており、それぞれ前年よりも279人(4.2%減)、234人(6.9%減)と減少傾向にあります。これは、設備更新や作業標準の徹底に加え、現場でのKY(危険予知)活動の実施など、地道な取り組みの成果が反映されたものとみられます。陸上貨物運送業では4,015人が該当し、前年より134人の減少となっているものの、依然として厳しい労働環境と長時間運転による疲労蓄積が事故の要因となっている現実があります。
事故の型別で注目すべきは、「動作の反動・無理な動作」による死傷者が4,073人に達している点です。前年より331人減少していますが、腰痛や筋肉系の障害を引き起こす作業姿勢や重い物の持ち上げといった、日々の作業に潜むリスクが依然として存在しています。また、「墜落・転落」は4,949人、「はさまれ・巻き込まれ」はそれに続く事故要因として記録されており、それぞれのリスクに対する対策の継続が不可欠です。
このような統計データは、企業の人事部門や採用担当者にとって、職場の安全性やリスクマネジメント体制を見直す重要な指標となります。特に人材獲得競争が激化する中、応募者が職場の安全性を重視する傾向が強まっており、労働災害発生率の低さや安全教育の充実度が、企業の評価に直結する場面も増えています。また、採用後の定着率向上の観点からも、安全な職場環境の整備は企業価値の向上に不可欠です。さらに、こうしたデータは産業別・事故の型別に詳細に把握できるため、業界ごとの人材戦略や研修プログラムの設計にも応用可能です。
このたびの速報値は、令和7年1月1日から4月30日までに発生し、5月7日までに報告された労働災害を対象としています。なお、新型コロナウイルス感染症に起因する労働災害は含まれておらず、純粋に作業中の事故による数値として分析されています。
企業が今後の採用活動や職場環境の改善を進めるうえで、こうした詳細な統計は極めて有益です。単に数字の増減を見るのではなく、その背景にある要因を深く理解し、職場のリスクを最小限に抑える努力を重ねることが、企業の持続可能な成長と社会的信頼の獲得につながるのです。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ