2025年6月19日
労務・人事ニュース
全国5467万人の雇用実態を可視化:令和6年経済センサス速報から読み解く産業構造の変化
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「夜勤なし」/准看護師/デイサービス/オンコールなし
最終更新: 2025年6月26日 22:39
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「駅チカ」/准看護師・正看護師/クリニック/車で通えます
最終更新: 2025年6月26日 22:39
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「夜勤なし」/准看護師・正看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年6月26日 22:39
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「夜勤なし」/准看護師/オンコールなし
最終更新: 2025年6月26日 22:39
令和6年経済センサス‐基礎調査(民営事業所)速報集計結果(総務省)
令和6年に実施された経済センサス‐基礎調査(民営事業所)の速報結果が発表され、日本の産業構造や雇用状況に関する最新の実態が明らかになった。今回の調査は、我が国の事業所及び企業の活動実態を正確に把握することを目的とし、全国の民間事業所を対象に広範なデータを収集しており、今後の政策立案や民間企業の戦略立案に資する重要な資料となる。特に採用や人材戦略を担当する企業の人事部門にとって、こうした数値は労働市場の動向を把握する上で極めて貴重な情報となる。
調査によれば、全国の民営事業所数はおよそ372万6874にのぼり、従業者数は5467万6396人とされている。産業別に見ると、「卸売業・小売業」が88万4151事業所で全体の23.7%を占め、最も多くの事業所数を有している。続いて「医療・福祉」が41万4580事業所(11.1%)、「建設業」が35万7652事業所(9.6%)となっており、これら上位3産業で全体の44.4%を構成する。これは、日本経済が依然として内需主導型の構造を維持していることを物語っている。
従業者数についても「卸売業・小売業」がトップで1046万8777人、全体の19.1%を占める。次いで「医療・福祉」が831万1416人(15.2%)、「製造業」が822万539人(15.0%)となっており、この3産業だけで全体の49.4%を占めている。このことからも、流通、福祉、製造という基幹産業が日本の雇用を大きく支えている実態が確認できる。
また、1事業所あたりの従業者数を見てみると、「製造業」が27.9人と最も多く、次いで「運輸業・郵便業」が26.6人、「情報通信業」が25.6人と続いている。逆に、最も少ないのは「不動産業・物品賃貸業」で5.3人となっており、業種による事業所規模の差が顕著に表れている。
常用雇用者比率という観点から見ると、「複合サービス事業」が96.8%と最も高く、ついで「金融業・保険業」が95.4%、「製造業」が93.9%と続いており、これらの業種では安定的な雇用形態が主流であることがわかる。一方で「宿泊業・飲食サービス業」では77.7%にとどまり、「農林漁業(個人経営を除く)」では70.5%と低い傾向にあり、非正規や臨時雇用が多い業種であることが示唆される。
従業者規模別に事業所数を分析すると、「1~4人」の小規模事業所が171万9771と全体の46.1%を占めており、いかに日本経済が中小零細企業によって支えられているかが明確になる。一方で、「300人以上」の大規模事業所は全体の0.4%でしかないが、そこで働く従業者数は978万4493人と、全体の17.9%を占めており、少数の大規模事業所が多くの雇用を生み出している構造が浮かび上がる。
都道府県別に見ると、東京都が事業所数77万7797、従業者数952万3270人といずれも全国最多である。続く大阪府は41万7995事業所、437万7096人、愛知県が29万8186事業所、364万9670人となっており、都市圏に経済活動が集中している現状が反映されている。1事業所あたりの従業者数においても、東京都が18.5人と最も多く、続いて愛知県の16.3人、神奈川県と茨城県の15.6人と続く。これは、都市部において規模の大きな企業や本社機能が集中していることを意味し、特に東京においては人材需要が依然として極めて高い水準にあることがうかがえる。
この調査結果は、採用戦略を担う企業の担当者にとって極めて実用的な示唆を与える。特に、自社の属する業種における常用雇用比率や平均従業者数を参考にすることで、業界の標準的な雇用形態や事業規模を把握しやすくなる。また、地域別に人材市場の供給量や労働密度を知ることで、採用活動を行う地域の選定や、リモートワークや拠点移転の判断にも活用できるだろう。
さらに、事業所の規模と雇用者数の分布から、人材育成やスキルマッチングの課題も読み取れる。たとえば、5人未満の事業所が全体の約半数を占める現状では、多くの企業が限られた人員で事業を回しており、多能工や即戦力の人材が重宝される傾向にある。また、大規模事業所では専門分化された職種が多くなるため、特定スキルに特化した人材のニーズが高いと推測される。
今後の採用計画や人材投資戦略を検討するうえで、こうした統計データを正確に読み解く力が求められている。経済センサスという公的統計は、短期的な景況感ではなく、構造的な労働市場や産業構成の変化を見極めるための信頼できる指標であり、企業にとっては客観的な戦略の基盤として活用すべきである。
国と地方の事業所数が12万9787に減少、公的部門の再編が人材戦略に与える影響
令和6年に総務省が実施した「経済センサス-基礎調査(乙調査)」は、国および地方公共団体が設置する事業所の実態を明らかにするためのものであり、全国の行政機関がどのような形で経済活動を行っているのかを把握するための極めて重要な統計調査である。この調査は、民間事業所を対象とする「甲調査」とは異なり、主に官公庁関連の組織が対象となっており、公的部門の業務分布や人員配置、事業所の新設・廃止といった動態を詳細に分析するための資料を提供している。企業の採用担当者や人材戦略を立案する部門にとっても、行政サービスの供給状況や地方自治体の雇用動向を把握する上で、この調査結果は無視できない情報源となる。
調査の結果、2024年6月1日現在における国および地方公共団体の事業所数は12万9787であり、これは前年の13万0929事業所から0.9%の減少となった。全国的に見ると、47都道府県中45の地域で事業所数が減少しており、唯一増加を示したのは静岡県のみで、その増加率はわずか0.2%にとどまっている。最も減少率が高かったのは滋賀県で、前年比3.1%の減少となっている。これらの数字から、公的部門においても機能の集約や再編、あるいは人員削減などが進められている可能性が示唆される。
都道府県別で見ると、北海道が8203事業所と最も多く、次いで東京都が7756事業所、愛知県が5609事業所となっている。地方では事業所数が減少傾向にある中で、都市部では一定の規模を維持していることが確認できる。この傾向は、都市部における行政需要の高さや人口集中による業務量の増加などと関係していると考えられる。
事業所の活動状態に関しては、総数のうち存続事業所が12万8514で全体の99.0%を占めており、新たに把握された事業所、すなわち新規事業所は1273で1.0%、一方で廃業した事業所は2415にのぼっている。都道府県別の廃業事業所比率を見ると、滋賀県が4.7%と最も高く、次いで宮崎県が3.5%、愛媛県が3.4%となっており、特に地方においては行政機関の再編や効率化が一層進んでいることが読み取れる。
新規に把握された事業所に関しては、その内訳も明らかにされている。産業分類別では、「教育、学習支援業」が323事業所で全体の25.4%を占めており、最も多くなっている。次いで「医療、福祉」が309事業所(24.3%)、「公務(他に分類されるものを除く)」が261事業所(20.5%)と続いている。この結果からも、教育・福祉分野での行政需要が依然として高く、これに応じた新設事業所が多く見られることが分かる。逆に、製造業や卸売業など民間企業に近い業種では新規設置が極めて少なく、たとえば製造業はわずか1事業所、卸売・小売業に至っては3事業所しか新設されていない。
新規把握事業所に所属する従業者数は2万6075人であり、このうち「公務」に分類される事業所で働く人数が1万202人と最も多く、全体の39.1%を占めている。次に多いのが「教育、学習支援業」の7197人(27.6%)、その次が「医療、福祉」の6003人(23.0%)で、これら3分野だけで新規雇用者数全体の9割近くを占める。この点からも、公共部門の新規雇用が特定の分野に集中していることが明白であり、今後の採用活動においてもこうした傾向を反映した人材需要の変化に注視する必要がある。
また、経営組織別の内訳を見ると、「市町村」に属する新規事業所が1038と全体の81.5%を占めており、次いで「都道府県」が103事業所、「一部事務組合等」が74事業所となっている。新規事業所の大多数が市町村単位で設置されており、地域レベルでの公共サービスの拡充や見直しが進んでいる実態を示している。従業者数についても「市町村」所属の従業者が1万8437人と最も多く、「都道府県」は3100人、「国」は2488人となっており、地域レベルでの雇用吸収力の高さがうかがえる。
このように、令和6年経済センサスの乙調査からは、国および地方公共団体における事業所の実態と変動、特に新規事業所の設置や廃止といった動向を明確に読み取ることができる。企業の採用担当者や人事部門にとっては、公的部門の雇用動向を把握することで、民間企業との人材獲得競争や地域別の人材供給状況に対する洞察を深めることが可能となる。特に教育、福祉、公務といった分野における人材の需要が依然として高いことは、これらの分野に対応可能な人材の採用や育成に重点を置く企業にとって、戦略的な意義があるといえる。さらに、地域別の行政事業所数の減少や新設傾向を読み解くことで、地方自治体との連携や地域展開の方向性を検討する際の参考資料にもなりうる。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ