2025年6月17日
労務・人事ニュース
令和7年4月に山梨県で記録された有効求人倍率1.32倍が示す採用現場の深刻な人材不足とは
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 「夜勤なし」/准看護師/クリニック/オンコールなし
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 「夜勤なし」/正看護師/オンコールなし
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 「駅チカ」/准看護師・正看護師/クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年6月16日 22:31
令和7年4月の山梨県、卸売・小売業が直面する求人倍率上昇と採用難の実態
令和7年4月の山梨県における有効求人倍率は、季節調整値で1.32倍と、前月からわずかに0.01ポイント上昇しました。この数字は全国平均の1.26倍を上回っており、求人数が求職者数を継続して上回る状態が続いています。企業の採用担当者にとって、こうした状況は必ずしも歓迎すべきものではありません。なぜなら、求人を出しても応募が少ない、あるいは希望する人材像とマッチしないといった課題が、より顕在化するからです。
この有効求人倍率1.32倍という数値が示す意味は、求職者1人に対して約1.3件の求人があることを意味します。これは一見するとバランスが取れているように思えますが、現場では人材確保の困難さが顕著になっています。実際に、山梨県内の有効求人数は16,585人と、前月に比べて0.1%の減少となりました。一方、有効求職者数は12,592人で、こちらも前月比0.6%の減少です。このように、労働市場全体が縮小傾向にあるなかで、いかに質の高い人材を獲得するかが企業にとっての大きな課題となっています。
新規求人倍率にも注目すべきポイントがあります。令和7年4月の新規求人倍率は2.24倍で、前月比0.01ポイントの低下が見られました。新規求人数は6,088人で、前年同月比で2.2%(136人)の減少となっています。この背景には、企業の採用活動がやや慎重になっていること、あるいは既存の労働力を維持する方向へと舵を切っている傾向があることがうかがえます。
産業別に見ると、製造業や情報通信業、建設業といった分野で求人の増加が目立ちました。特に製造業では前年同月比で26.1%(232人)の増加が確認されており、山梨県の主力産業である食料品製造業は77.2%増、金属製品製造業は137.0%増、さらには業務用機械器具製造業に至っては144.8%増という大幅な伸びを示しました。これは、地域経済の回復基調に伴って生産ラインを強化しようとする企業の動きが背景にあると考えられます。
一方で、医療・福祉分野では12.7%(153人)の減少、宿泊業・飲食サービス業では12.8%(64人)の減少が報告されており、これらの業界では慢性的な人手不足がさらに深刻化している可能性があります。求職者側からすると、業務内容の負担や労働条件に対する懸念が影響している可能性があり、企業としては、単に求人を出すだけではなく、求職者の不安やニーズに対応する姿勢が求められています。
さらに、離職者の傾向にも注目が必要です。令和7年4月の離職者数は減少傾向にあり、事業主都合による離職は前月比2.5%減の626人、自己都合による離職も1.6%減の1,392人となっています。これは一見すると良い傾向に思えるかもしれませんが、裏を返せば、転職市場に出てくる人材が少なくなっていることを意味します。採用のターゲットとなる層が減少している中で、いかに転職意欲を高めるかが企業の戦略として重要になります。
求職者の年齢層にも変化が見られ、中高年層の比率が高まっていることが報告されています。企業としては、経験豊富な人材を活用する一方で、柔軟な就業形態や職場環境の整備を進めることで、この層を取り込む工夫が求められます。特に、週3日勤務や短時間正社員制度、定年後再雇用制度など、働き方の多様化に対応する取り組みは、今後ますます重要になっていくでしょう。
さらに、正社員有効求人倍率は1.02倍と、前年同月から0.08ポイント上昇しています。これは、企業側が正規雇用を重視し始めていることを意味し、安定的な人材確保を目指す姿勢が反映されています。ただし、正社員志向の強い求職者が減少するなかで、労働条件や待遇、キャリア形成支援などの側面で他社と差別化を図らなければ、応募に結びつけることは困難です。
こうした状況を踏まえ、企業の採用担当者に求められるのは、単なる人材の「確保」ではなく、求職者にとっての「選ばれる存在」としての企業価値をいかに構築するかという視点です。たとえば、求人票の作成においても、業務内容だけでなく、職場の雰囲気、上司との距離感、キャリアアップの支援体制、福利厚生の具体的な内容を記載することで、求職者の安心感を高めることができます。また、職場見学や企業説明会の開催、SNSを活用した職場紹介など、情報発信の工夫も重要です。
加えて、山梨県の求人市場では、事業所規模別に見ても29人以下の小規模事業所が全体の56.7%を占めており、中小企業が地域経済と雇用の中核を担っていることが明らかです。中小企業は大手企業と比較してネームバリューで劣ることが多いため、採用活動においては「人とのつながり」や「地域との関係性」を前面に出すことが有効です。たとえば、「地元密着で家族のような職場」「地域貢献に取り組む会社」といったメッセージが、地元志向の強い求職者に響く可能性があります。
現在の労働市場では、単に求人を出すだけでは採用に結びつかない時代です。求職者が働きたいと感じる職場づくりと、その魅力をしっかりと伝える努力が必要です。特に、有効求人倍率が高い地域では、他社との差別化が採用成功のカギを握っています。企業の採用担当者は、求人データをただの数字として見るのではなく、そこから市場の変化や求職者の心理を読み取り、戦略的に採用活動を進めていくべきです。
⇒ 詳しくは山梨労働局のWEBサイトへ