2025年6月17日
労務・人事ニュース
令和7年4月の群馬県雇用情勢、求人倍率1.32倍で企業に求められる判断とは
- 診療放射線技師/福岡県/黒崎駅/八幡西区/クリニック
最終更新: 2025年6月17日 08:11
- 認定こども園の保育士
最終更新: 2025年6月17日 02:05
- 看護師/他/福岡県/糟屋郡宇美町
最終更新: 2025年6月17日 08:12
- 准看護師/病院 病棟勤務/非常勤・夜勤あり/残業少なめ
最終更新: 2025年6月17日 00:31
医療・福祉分野で12.6%求人増、群馬県で進めるべき人材確保戦略
令和7年4月における群馬県の有効求人倍率は1.32倍という結果となり、全国平均の1.26倍を上回る状況が継続しています。この数値は、求職者1人あたり1.32件の求人が存在していることを示しており、労働市場においては明確に「売り手市場」と呼べる状態が続いていることがわかります。特に企業の採用担当者にとっては、希望する人材の確保が一層困難になってきている現実を直視する必要があります。人手不足が慢性化する中で、他社と競合しながら自社の魅力をいかにアピールし、選ばれる存在になれるかが、採用成功の分岐点となっています。
新規求人数の動向を見ると、令和7年4月時点での群馬県内の新規求人数は17,369人で、前年同月比で11.7%の増加という顕著な伸びを示しています。とりわけ製造業の求人は前年同月比13.9%増、医療・福祉分野では12.6%増と、県内の主要産業で人材需要が引き続き高い水準にあります。これらの分野では、慢性的な人手不足と採用競争の激化が続いており、企業側には待遇の改善や労働環境の整備のみならず、働く意義ややりがいといった非金銭的な要素をどのように訴求していくかが問われています。
また、正社員の有効求人倍率は1.05倍と前年同月よりも0.01ポイント上昇しており、求職者が安定した雇用を求めていることが明確に現れています。特に若年層や子育て世代においては、非正規雇用ではなく、長期的に安定して働ける環境を重視する傾向が強くなっており、企業が将来的な人材確保を見据えるのであれば、最初から正社員としての採用枠を設けることが一つの選択肢となります。これにより、応募者の信頼を得やすくなり、採用後の定着率向上にもつながります。
企業の採用担当者が今こそ着目すべきポイントは、求人票の見直しにあります。単に給与や就業時間を羅列するだけでは、求職者の目には留まりにくくなっており、職場環境や社員同士の関係性、キャリアアップの機会、企業理念など、より深い情報を提供することが求められています。求職者が「自分に合っているかどうか」を判断するためには、求人票の中にリアルな現場のイメージが伝わるような記載が不可欠です。また、採用面接においても、形式的な質問だけでなく、応募者の価値観や人生観を理解し、それにマッチした職務設計を提案できる企業が選ばれる傾向にあります。
地域別にみると、群馬県内でも有効求人倍率には差があり、高崎市では1.43倍、前橋市で1.41倍、太田市では1.35倍と、比較的人口の多いエリアでは高倍率が続いています。一方で、吾妻郡や利根郡などの地域では1.1倍前後と比較的落ち着いた倍率となっており、企業は採用活動のエリアを拡大することで、新たな人材獲得の可能性を見出すことができます。たとえば、交通費の補助や通勤手段の整備、リモートワークの活用など、勤務地に縛られない柔軟な働き方を提供することで、広域からの応募者を取り込むことが可能となります。
加えて、高齢者の求職意欲が年々高まっている点にも注目が必要です。65歳以上の新規求職者は増加傾向にあり、経験豊富なシニア人材の活用は、企業にとって極めて有効な戦略となり得ます。この世代は労働習慣や責任感に優れた人が多く、定年後の再雇用や軽作業への再配置などによって、現場の安定感を維持することができます。ただし、年齢に応じた業務設計や労働時間の柔軟性、安全面の配慮が重要であり、単なる労働力としてではなく、「知識と経験の伝承者」としての位置づけを明確にすることで、職場全体のモチベーション向上にもつながります。
さらに、離職理由に目を向けると、自己都合による離職が依然として多く、職場とのミスマッチが解消されていない現状があります。これは採用段階での情報不足、あるいは企業側の期待と求職者側の現実に乖離があることが原因です。解決策としては、採用後の定着支援が鍵となり、入社初期のフォローアップ体制、先輩社員とのペア制度、定期的な面談の実施など、心理的な安全性を高める施策が求められます。職場に安心して馴染める環境を整えることで、離職率は大きく改善されるでしょう。
デジタル時代の採用活動においては、情報発信の手段にも工夫が必要です。求人票だけでなく、自社のウェブサイトやSNSなどを活用して、働く人々の姿や社内イベント、福利厚生制度などの情報を積極的に発信することが、求職者との距離を縮める鍵となります。特にZ世代と呼ばれる若年層は、企業の「中の雰囲気」や「働く意味」に強い関心を抱いており、形式的な情報よりも、リアルで誠実な発信に心を動かされる傾向があります。こうした感性に応えるためには、動画や写真を活用した情報発信も効果的であり、企業の魅力を視覚的にも伝えることが必要です。
最終的に、採用活動の成果は「人材の確保」だけでなく、「人材の定着と活躍」によって評価されるべきです。求人倍率という数値はあくまで労働市場の一側面を表すに過ぎませんが、その背景にある地域経済の動向や、求職者の志向性の変化を読み解く力が、これからの採用担当者には求められています。令和7年4月の群馬県の雇用情勢をひとつの材料として、今こそ企業は採用戦略を再構築し、持続的な人材力の確保と育成を目指すべき段階にあります。
⇒ 詳しくは群馬労働局のWEBサイトへ